横浜vs桐蔭学園

イレギュラーバウンドで試合の流れが一転

桐蔭学園　小川隼平

　保土ヶ谷球場の4回戦、第1試合は注目の好カード、横浜vs桐蔭学園。名将、渡辺監督が勇退し、秋から平田監督が率いる新生横浜が、いよいよ強豪校との対戦を迎えた。両校は春に対戦しており、この時は桐蔭学園が横浜を延長戦の末、2対1で下している。気温25.1度、湿度83％で天気は曇り、球場に沢山の観客が訪れた中、試合開始のサイレンが鳴った。

　先制は桐蔭学園。先発、右スリークォーターの小川 隼平が初回の横浜の攻撃を無難に無得点に抑えると、その裏の攻撃で二死から3番南木がストレートの四球で一塁に歩き、バッターは4番小川 航平。カウント1ボール2ストライクから横浜の先発、藤平の直球に鋭くバットを振り抜くと、打球は左中間に伸びる大きなフライ。センターが背走し、捕球体制に入ったかと思われたが、ボールはグラブをすり抜けて、記録は3塁打。この時間帯は、寒冷前線が横浜市を通過する前で、バッターにとって追い風となる5.2m/hの南西の風が吹いており、桐蔭学園が風を味方に1点を先制。なおも5番の中がストレートの四球でランナー一、三塁とチャンスが続いたが、続く6番内田の放ったショート後方のフライを渡辺が好捕し、横浜は失点を1に留めた。

　しかし、続く2回、桐蔭学園は先頭の8番小川隼がレフト前ヒットで出塁すると、9番土田がバントでランナーを送り、打順はトップに返って柿崎。ここで柿崎は一塁線を鋭く破るタイムリー二塁打を放ち、2点目を追加。序盤は桐蔭学園のペースで試合が進む。

　3回までノーヒットの横浜は、ようやく4回に先頭の3番公家が3遊間を破るレフト前ヒットで出塁すると、4番藤平にバントでランナー送らせ、１点を取りに行く。そして二死二塁となったところで6番村田がセカンドに強烈なゴロを放ち、抜けたと思われたが、桐蔭学園のセカンド冨永が体を張って好捕。4回まで横浜のスコア欄にゼロが並ぶ。

勝負強い打撃を見せた公家（横浜）

　しかし、次の5回が横浜のビッグイニングとなる。2つの四球で二死二塁の場面、2番遠藤の打球はセカンドゴロ。スリーアウトチェンジと思われたが、打球は野手の手前で大きくイレギュラーバウンドしてライト前へ転がる。球場内に、どよめきが起こり、横浜にラッキーな1点が入る。そして、こういうツキを逃さないのが横浜。続く3番、勝負強い公家がセンターへタイムリーヒットを放つと、センターが打球を後逸する間に3塁に進み、2人のランナーが生還して、ついに3対2と逆転。4番藤平も3遊間を抜くタイムリーヒットで続き、この回、一挙に4点を取って、試合の流れを引き寄せる。

　その裏、桐蔭学園も反撃。二死から2番冨永がセンター前に落ちるヒットで出塁し、ワイルドピッチで二塁に進むと、3番南木が左中間に大きなフライを放つ。初回と同じような打球に、今度はレフトが背走し、落下点に入ったかと思われたが、ボールはまたもグラブを掠める。この記録はエラーとなり、桐蔭学園が1点を返して4対3と、横浜が1点リードで5回を終了し、グラウンド整備に入る。

　このインターバルの後も、試合の流れは横浜だった。6回に2番手投手の徳永を攻め、7番戸堀のセンター前ヒットと8番福永の四球でランナー一、二塁とすると、9番増田のレフト前ヒットで5点目。そして7回にまたビッグイニングが来る。先頭の4番藤平がレフト前で出塁すると、続く5番石川がサードゴロ。完全に併殺コースだったが、サードがまさかのトンネル。これで残った二人のランナーを確実にバンドで二、三塁に進め、スクイズで6点目。さらに桐蔭学園の3番手投手、杉原の連続死球と4番手小諸の押し出し四球で7点目、さらに2番遠藤のライト前ヒットで返球が逸れる間に満塁のランナーが生還。桐蔭学園は5番手投手に谷繁を送り、何とか後続を断ったが、横浜はこの回、一挙に5点を入れて勝負を決定づけた。

　桐蔭学園も6回、5番の中がライト前ヒットで出塁し、四球を交えて二死一、三塁とチャンスを作る。ここで9番土田が横浜の2番手左腕、石川の初球を3遊間に打ち返し、抜けたと思われたが、サード遠藤が横っ飛びで好捕。堅守で追加点を許さなかった。7回は石川が桐蔭打線を3者凡退に仕留め、コールドゲームが成立。横浜が桐蔭学園を10対3で下した。

　前半は桐蔭学園のペースで試合が進んだが、5回のイレギュラーバウンドで試合の流れが一転。その後は桐蔭学園の内外野のまずい守備もあって、結果は大差となったが、こういうツキを逃さず、たたみかけるのが横浜の強さと言えるだろう。勝った横浜はベスト8進出。次の準々決勝で、いよいよ東海大相模と対戦する。

（文＝松田 祥二郎）