【インタビュー】藤原竜也 「ポケモン映画に、本当に俺でいいの?!と何度も確認しました」
 夏休み恒例の人気アニメポケモン映画シリーズの18作目「光輪(リング)の超魔神 フーパ」同時上映「ピカチュウとポケモンおんがくたい」に藤原竜也さんが登場。シリーズおなじみの声優陣、山寺宏一さんや中川翔子さんを始め、柔道家篠原信一さんや女優の山本美月さんら豪華声優陣の中で、お芝居とは異なる声優の難しさ、面白さを藤原さんにじっくりと伺いました。


『国民的アニメ映画に出演させてもらえることへの戸惑い』


――「借りぐらしのアリエッティ」から5年ぶりにアニメ映画の声優に挑戦です。しかも今回小学生を中心に人気の「ポケモン」シリーズということで、オファーが来た時はどんな心境でしたか?



藤原:18年も続いている国民的アニメ映画に出演させてもらえることへの戸惑いは正直ありました。「本当に俺でいいのか確認してくれ」とお願いしたくらい(笑)。何度か確認してもらって、本当に僕でいいんだと実感してからはすごく嬉しかったです。

――何度も確認したのはどうしてですか?

藤原:これだけ冠の大きな作品は、ちょっと躊躇してしまうというか…。やっぱり役者業とは違いますからね、声優は。
中途半場な想いではできないから、「大丈夫かな」という不安を払拭するためにも何度も確認しました。

――共演者の方もそうそうたるメンバーでしたね。

藤原:個人的に僕はしょこたん(中川翔子さん)の多才ぶりをテレビなどで見させてもらって好感をもっていたんです。山寺(宏一)さんの声優界の神として君臨している姿も拝見していましたから…。あ、忘れちゃいけない、篠原(信一)さんも(笑)。個人的にスポーツを観るのが大好きで、篠原さんがシドニー五輪で銀メダルを取った姿も見てたので、みなさんと一緒にやれたのはとても嬉しく楽しかったです。


『山寺宏一さんの“自分を消す技術”に声優の奥深さを感じた』


――今回、藤原さんは幻のポケモン“フーパ”と共に育った青年「バルザ」というキャラクターを担当されましたが、「役作り」というか「声作り」のようなことは意識されましたか?

藤原:台本をいただくまでバルザという「人間の役」だとは思っていなかったんです。僕はピカチュウと対峙するポケモン役かと思ってたんですよね。「悪そうなポケモンなのかな〜」と(笑)。そしたらすごい好青年だった(笑)。



――中川さんとも兄弟役でしたね。声優の現場はどんな感じだったのですか?

藤原:声優の仕事を何度もしたことがあるわけじゃないので、監督の意見に忠実にやっていましたね。ワンシーンずつ細かく指示を出してもらって、ワンカットごとに音響監督が部屋に入ってきてくれて。「もう少しこういうテンションで」「こういうニュアンスで」と話し合いながら声を入れていきました。「単調に言ったらハマるかな」とかは考えたりすることもありましたけど、僕はそこまで声に関する引き出しを持ってるようなレベルじゃないから。
「(ロボットのような声を出しながら)この声でやりたいんですけど」って言っても「バカヤロウ!」って言われるだけですしね(笑)。

――山寺さんは18年、中川さんは9年間ポケモンシリーズに携わっていますが、
今回一緒の舞台に立って何か感じられたことはありましたか?


藤原:山寺さんは今回「フーパ(ときはなたれしすがた)」の声優をしていますけど、「山寺宏一」を全く感じさせないくらい自分を消してるんですよね。山寺さんだと思わせない技術はすごいなと思ったし、声優業の奥深さを感じました。
昔好きだったアニメも大人になって観ると、声優さんの顔がよぎったり雑念を入れて見ちゃったりして入り込めなかったりするじゃないですか。だけど山寺さんもしょこたんも、そういうことを感じさせずに魅せてくれるから、こういったアニメの世界で走り続けている人にはちゃんと理由があるんだなと再確認しました。

――ちなみに、みなさん一緒に音撮りをされたんですか?

藤原:いや、一人でした。でも一人でよかったです。
一緒だったら絶対緊張しちゃってましたね(笑)。



『アニメの口の動きに合わせた上に「感情を込める」難しさ』


――ほとんど監督と2人で声を作っていたということで、監督との面白いエピソードなどはありましたか?



藤原:それが面白いことなんてひとつもなかったんです(笑)。
時間的には4,5時間くらいだったんですけど、休む時間もなくただただ一生懸命やらせてもらっていました。アニメの口の動きに自分の声を入れていくのが、「もっとスローで言ったほうがいいのかな」とか悩んでしまって難しかったですね。口の動きに合わせた上に「感情を込めて」という指示が難しかったですけど、そこが面白い所でもあり新鮮でした。


――では、注目して欲しいシーンを教えてください。

藤原:篠原さんも言っていましたけど、(篠原さんが演じた)ヒポポタスって本当重要なんで、是非注目してみてあげてください(笑)。

――いや、バルザの注目シーンを(笑)

藤原:僕は、しょこたんと兄弟役をやらせてもらっているのでその掛け合いを観て楽しんでもらえたらと思いますね。


『ピカチュウかわいいなって思っちゃいますよね』




――藤原さんはポケモンで一番好きなキャラクターってありますか?

藤原:ポケモンって言ったら「ピカチュウ」でしょう?
最初、ピカチュウってただピカピカ言っているだけかと思ってたんだけど(笑)、
台本には、「ピカ(=わかった)」、「ピカピカ(=僕もそう思う)」とか感情が書いてあるんですよ。面白いなと思いましたね。それを知ったら「ピカチュウかわいいな」って思っちゃいますよね。


――子供の頃に夢中になっていたアニメなどはありましたか?

藤原:僕は子供の時からスポーツバカだったから。それもドストレートの(笑)。
「釣りキチ三平」「キャプテン翼」とか野球、サッカー、釣りといったスポーツアニメに夢中でしたね。


――今回のポケモンもそうですが、過去の作品などがあれば資料とか作品とかを観て役に入るものですか?

藤原:「観なくていい」と思う時もあります。その基準は自分でも分からないんですけど、歴史物や実在した人物を演じる時なんかは原作を観ますね。仕事をする上で過去の物を観るかは物によって違います。監督に「これを観といて」と言われた物は必ず観ます。ポケモンに関しては世界観を掴みたいと思って過去作を観ました。セリフひとつとっても何か動かされるものがあるんですよね。面白かったです。



ポケモン映画の魅力…”幅広い世代の人に温かみが伝わる作品”』


――声優を経験したことがお芝居にも活かされたり反映できたりしましたか?



藤原:「内から出る物」ということで言えば、近いものはあると思います。でも、声優界には声優界のやりかたがありますよね。カメラの前で、セットの中で表現する僕らの芝居とは違いがあるなとは感じました。演者同士が面と向かって「言葉を大事に言いあい、そこから生まれるものを大切にして芝居が始まる」、ということと、アニメがあって、見ている人に「言葉を的確に伝える」というのは、似ているようで違いがあるなと思ったんです。僕らがやるお芝居に対して声優の経験が影響を与えるかどうかはわからないですけど、今後また声のお仕事をやらせてもらえる機会があるとしたら、いい勉強になった現場でしたね。


――今回の作品を通してメッセージをお願いします。

藤原:しょこたんも言ってましたけど、「子供の頃ポケモンを観ていた人が出産を経て、自分の子供を連れてまた劇場に観に来る」という、そこまで強い映画って他にないですよね。大人の心をも揺さぶるような、幅広い世代の人に温かみが伝わる作品だと思うんです。観た方が何かを感じとってくれる作品だからこそ18年も続いている訳ですから、今回の作品でも皆様に何かが伝わればいいなと思います。



『休日は競馬に行くのが”義務化”しちゃってる(笑)』




――最後に「Peachy」とは“ごきげん“HAPPY”という意味のスラングなのですが、藤原さんのHAPPYの源を教えてください。

藤原:特にハマってるものってないんですけど…。
運動は趣味に近いくらいハマってる、というか日常化しています。時間があれば週5日くらいジムに行って体を鍛えてますね。もうライフワーク。今日とか(取材日は日曜日)休日だったら、中央競馬に行ったりもしますね。もうハマるというより「行かなければいけない」って自分の中で義務化しちゃってる(笑)。
仕事がない時は、とことん体を動かして帰ってきてテレビを見ながらダラダラして、夕方くらいから「お寿司でも食べに行こうかな」と出かける、“オヤジのような生活”にハマってますね(笑)。

――そういう時間があるからこそ、演技に……。

藤原:活きない活きない。全然活きないです(笑)。
でもリフレッシュにはなりますけどね。



「光輪(リング)の超魔神 フーパ」同時上映「ピカチュウとポケモンおんがくたい」は7月18日(土)よりロードショー。
映画公式サイト:http://www.pokemon-movie.jp/


スタイリスト/Arata Kobayashi(takahashi office)
メイク/赤塚修二(メーキャップルーム)

撮影:金子真紀
取材・文:木村友美
制作・編集:iD inc.