「元少年A」手記は「匿名」でいいのか 小倉智昭「実名出版するぐらいの責任はあってしかるべき」
出版の是非が問われている、神戸連続児童殺傷事件を起こした「元少年A」(32)の手記「絶歌」(太田出版)について、キャスターの小倉智昭氏が、
「実名で書けばいいじゃないですか」
と出演番組で問題提起した。
手記をめぐっては遺族が出版中止を訴える中、実名出版をするべきだったのか、新たな議論を呼びそうだ。
紀藤弁護士「もう匿名は許されないのではないか?」
小倉氏は2015年6月12日に出演した「とくダネ!」(フジテレビ系)で、元少年Aについて、
「いま30歳過ぎている訳でしょ?自分の責任で本を書くのであれば、実名で書けばいいじゃないですか。そのぐらいの責任はあってしかるべきじゃないですか」
と指摘した。
同様の指摘は弁護士の紀藤正樹氏もしている。「もう匿名は許されないのではないか?」と題した6月11日のブログで、
「自ら本を出す以上、少年時代の犯罪という点で、将来の更生のために与えられてきた『少年A』という『匿名』特権も許されることはないでしょう」
と書いた。元少年Aの実名は、読者である国民にとって「知る権利」の対象になりうるとして、「それが『表現の自由』の『自己責任』の帰結」と述べた。さらに、
「自ら匿名で『更生』の機会を得る権利を放棄したのも同様というほかありません」
と主張した。
こうした意見はツイッターなどネット上にも広がっていて、
「少年法では保護されてない年齢なんだから、今更匿名で何言ってんだ」
「『どのようなご批判も甘んじて受ける覚悟です』というのが本心なら元少年Aではなく実名で書くべきだったのでは」
「ノンフィクションというなら少年Aではなく実名で出してこいと思う」
といった書き込みがあった。
元少年Aに損害賠償の請求の可能性も
元少年Aは「絶歌」の中で遺族への謝罪を書いてはいる。しかし自身を「あまりにも身勝手すぎると思います」と断り、
「本を書けば、皆様をさらに傷つけ苦しめることになってしまう。それをわかっていながら、どうしても、どうしても、書かずにいられませんでした」
とつづっている。
遺族に対し、元少年Aや太田出版から出版前の事前連絡はなかった。殺害された土師淳君(当時11)の父、守さんは、
「以前から彼がメディアに出すようなことはしてほしくないと伝えていましたが、私たちの思いは完全に無視されてしまいました。何故、このような更に私たちを苦しめることをしようとするのか全く理解できません」
とするコメントを発表。直ちに出版を中止するよう求めている。
6月12日の「とくダネ!」でコメントを寄せた山田秀雄弁護士によると、事件を思い出させることで遺族に精神的苦痛を与えるとし、元少年Aへの損害賠償請求が起こり得る場合があると指摘している。