近年のプレミアリーグでは、選手が審判の目を欺くシミュレーション行為が問題視されている。しかし、様々な物議を醸してきたこの問題について、「勝手にやらせればいい」と、選手の“ダイブ”を容認する考えを持つ監督が現われた。ウィガンのポール・ジュエル監督だ。

 先週末の試合では、マンチェスター・ユナイテッドのMFクリスチアーノ・ロナウドが故意に倒れてPKを獲得したとして、ミドルスブラのガレス・サウスゲイト監督が辛辣な批判を展開したばかり。しかし、厳しい罰則など、取締りの強化を求める声が相次ぐと同時に、白熱する議論から、選手個人に対する中傷合戦につながるケースも少なくない。そういった現状を現場で知るジュエルは、過剰な反応こそが、問題の撲滅を妨げていると語る。

「こんなことを言うのは、世界で私ひとりだけかもしれんが、別に好きにやらせればいいじゃないか? 例えば、パブの問題も同じだ。いまでは24時間営業が許されるようになったが、当初は『街に酔っ払いが増える』と心配されていた。でも、ふたを開けてみれば、3時で閉店していた頃よりも、街中から酔っ払いは減っているだろう? ダイブの問題でも同じなんだ。みんなが話題にしなければいい。見逃されるケースもあるだろうが、その翌週にはカードを受ける可能性だってある。その繰り返しで、いずれなくなっていくのさ」

 さらにジュエルは、サッカーの本質に触れながら、「無視」の有効性を語る。

「不正行為だと騒ぐ連中も多い。しかし、サポーターに聞いてみればいい。残留や優勝のために、どうしてもPKが必要な場合、エリア内で選手が故意に倒れることを許すかどうかを。どのチームのファンでも、『PKをもらえ!』と声を揃えて答えるよ。非難を受けるかもしれないが、これが真実だ。テレビでダイブのシーンを繰り返し取り上げると、翌週の試合では、主審が『先週ダイブしていた選手』という先入観を持って、ファウルを見逃すかもしれない。シミュレーションは許せない行為だ。でも、過剰に反応しなければ、そのうち消える。そして、誰も話題にしなくなるはずだ」

 批判覚悟で独自の見解を語ったジュエル。ウィガンというマイナークラブをプレミアの常連にまで引き上げた熱血漢の言葉には、現場で働く監督の真実が含まれている。選手に対する誹謗中傷が目立つイングランド・サッカー界にとっては、耳を貸すべき貴重な意見であるはずだ。