赤嶺家の家計簿

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●赤嶺家の家計
――高収入エリート社員のお嬢妻は節約が苦手

結婚以来、妻は専業主婦。私立出身の妻は娘にも私立受験をさせたい意向があり、すでに塾代がかさんでいる。今後の教育費は妻の親からの援助をアテにしている。

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【年収(税込)】[夫]720万円【貯蓄額】300万円
【家族構成】[夫]42歳 大手グループ会社勤務[妻]39歳 専業主婦[長女]11歳 公立小学6年

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●黒田家の家計
――「収入低め×2人」家計にムダ遣いの死角なし

結婚以来ずっと夫婦共働きで、妻は時短勤務中。家族一緒に過ごす時間を大切にしている。2年前に妻の実家近くにマンションを購入し、何かあれば親のサポートを活用。

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【年収(税込)】[夫]400万円[妻]300万円【貯蓄額】800万円
【家族構成】[夫]38歳 中小企業社員[妻]39歳 中小企業社員[長女]11歳 公立小学6年
[長男]7歳 公立小学2年

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■年収700万は危険な水準

男性サラリーマンで年収700万円を超える人は18%弱(2011年、国税庁)。年収700万円は“勝ち組”の証といっていいだろう。だが、「わが家はリッチ」とカン違いして贅沢を始めると、家計はとたんに苦しくなる。年収700万円はある意味、危険な水準といえるかもしれない。

たとえば、年収720万円あるのに貯金ができない、と嘆く赤嶺さん。妻は自分が私立に通っていたことから、娘にも私立中学を受験をさせたいと考えている。塾代を含めて教育費はすでに毎月8万円。受験を控え、母娘の洋服代も膨らみがちだ。

住まいは都内に新築マンションを購入。妻の実家が頭金を出してくれたので、毎月のローン返済額は約7万5000円と比較的少ない。料理の得意な妻が食費を月5万円に抑えてはいるが、それでも毎月の収支は約4万円の赤字だ。ボーナスは毎月の赤字補てんと住宅ローンで大半が消え、貯金は年間で約37万円しかできていない。

娘が受験に成功すれば教育費はさらに増え、年間収支が赤字になる可能性もある。妻は「親に援助してもらえばいい」と考えているが、両親はすでに70代。介護が必要になる可能性もあるはずだ。年金暮らしの親の金をいつまでもアテにしてはいけない。

赤嶺家では、毎月の赤字を解消するのが急務だ。生命保険を見直して掛け捨て型に変えれば月1万8000円が節約できる。そのうえで、被服費、趣味・娯楽費を各1万円減らし、その他の支出などを3000円削減して毎月の赤字をなくせば、ボーナスの赤字補てんをすべて貯金に回せる。だが、これだけだと毎月の収支はギリギリ。今後、教育費がさらに増えることを考えれば、妻もパートに出て収入を増やすことを検討したい。

■厳しさを知る共働き家庭

一方、共働きで年収700万円を得ている黒田家はまったく状況が違う。

黒田家は夫婦ともに中小企業で働き、収入を得る厳しさをよく知っている。周囲もみな同じような環境で、贅沢とは無縁の生活だ。

2年前に妻の実家の近くにマンションを購入。2人とも仕事で帰りが遅くなる日は、子どもの世話を両親に頼む。孫と過ごす時間を両親も楽しんでいるようだ。

休日は家族だけで楽しむ時間を大切にしている。お金はかけずに弁当持参で少し離れた公園までサイクリングしたり、家族が3000〜4000円で1日遊べるスーパー銭湯に行ったりするのが定番だ。子どもを私立に進学させる意向はなく、のびのび育ってくれればいいと思っている。

年間に約100万円を貯め、現在の貯蓄額はすでに800万円。住宅ローンも65歳完済を目指して最初から30年ローンとし、すでに何度か繰り上げ返済を行っている。

さて、共働きの黒田家の年収は、額面700万円に対して手取り額は約556万円。一方、働き手が1人の赤嶺家では額面720万円に対して手取り額は552万円と黒田家より低くなっている。一般的な収入の家庭なら、税金と社会保険の負担は共働き家庭のほうが少なくなることを頭に入れておきたい。

●黒田家はここが優秀!

・夫婦共働きなのに、どんぶり勘定ではない
・繰り上げ返済の意識が高い
・親の援助など、頼れるものにはしっかり頼る

●赤嶺家はここを改善!

・私立に進学させるなら妻が働きに出る
・付き合いで入った生命保険を見直す
・被服費、趣味・娯楽費などを見直す

(ファイナンシャル・プランナー 八ツ井慶子 編集・構成=有山典子)