部長で終わる人、役員に上る人、係長にすらなれない人【1】
■出世できる男とできない男、違いは?
【八巻里美(仮)】うちの会社で専務まで上った人と部長どまりだった人を比較すると、ある女性社員を辞めさせるときの対応に違いが出ました。専務は「あなたが悪いんじゃない」というメッセージを婉曲に上手に伝えた。部長はこともあろうに「あなたの顔が悪いんじゃないよ」と言ってしまいました。他人の気持ちをくんで話せるか否かは出世に大きく影響すると思います。
【坂田 彩(仮)】気配りは最重要ですよね。ある会社の常務とお会いしたとき「さすがだな」と思ったことがありました。当時、私は平社員だったのですが、その方は弊社の歴代社長や役員のことを事前に頭に叩き込んでいたのです。私も楽しくていろいろ話してしまいました。たとえ若手社員からの情報であっても何かの役に立つかもしれません。
【八巻】若い人からもいろんなことを吸収できます。でも、うちの会社には「オレは部長だぞ。気安く話しかけるな」という雰囲気を出す人が多いですね。そんなふうに急にオレ様君になっちゃう人はそれ以上は上にいきませんね。
【近藤幸子(仮)】好奇心と謙虚さが大事。かつて私が仕えた外国人上司は日本の顧客向けに日本語でプレゼンして、終わった後に部下の私たちにフィードバックを求めた。しかも、「おべんちゃらは要らない。改善点を言ってくれ」とね。素晴らしい姿勢だなと思いましたよ。
■20代で出世するかどうかわかりますか
【近藤】入社してすぐわかりますね。挨拶とか基本のキができているかどうかがまず重要。
【八巻】それから主体性。最近は指示待ちの人が非常に多い。親に靴下まではかせてもらって育てられたのか、と聞きたくなるぐらい。すべて指示をしなければならないなら部下なんて要りません。
さらに時間管理ね。何が緊急かつ重要なのかを判断できない人は厳しいですね。忙しくなると、なぜか無関係なことを始めちゃったり。机周りの片づけなんて普段からやっておけって(笑)。
【坂田】優先順位がわからないならば、私たち上司に「これは何日までにやるべきか」と聞けばいい。それができずに仕事をため込んで、期限ギリギリになってできない言い訳を始める人はダメですね。
【近藤】時間にルーズな人は最悪だよね。相手の時間を奪っているんだから。これは年齢を重ねても直らない人が多い。
【八巻】会議は長ければいいと思っている人がいる。どうでもいいことをベラベラ話し続けて、結局何も決まらない。
【坂田】ちょっと気が利く人ならば、事前に書類をつくって根回ししておいて、会議中にうまく決定権がある人に決めさせるように進めますよね。すると重宝がられていろんな裏方を頼まれるようになり、いつしか「重要案件を握る男」になっていく。一方ダメな人たちというのは、何も準備せずに集まって「やった感」をかもし出すんです。
【近藤】仕事ができない人に限って、会議に大仰な名前をつけたがるよね(笑)。「重要方針戦略会議」みたいな。
【八巻】上にいくためには、会社の「内外上下」に人脈を築けているかどうかが大きいと思っています。忘れがちなのが内と下。内とは自分の部署以外の社内人脈です。気軽に連絡して相談できるような人が各部署にいれば仕事が大きく膨らみますよ。下も大事。
【近藤】とくに最近は、女性社員から好かれるかどうかは大きいね。男性は社会的な訓練ができているので、自分よりポジションが上の人にはとりあえず従うけれど、女性は本能的に好き嫌いの部分とか、言っていることが納得できるかどうかで判断するから、女性のほうが厳しい。
【坂田】そうそう。例えば、雑談のなかで奥さんのことをなにげなく褒められる人は女性の共感を呼ぶ。逆に母親の話を始めてしまう人はダメね。マザコンはダメです。
【近藤】下心があって奥さんのことを悪く言ったり、生活感を出さなかったりする人がいるけれど、モテる人は、奥さんのことを褒めてもモテるし、変な意味ではなくて女性の支持を集めるわね。
【八巻】今は部下からの評価が人事評価に大きく影響します。部下を引き上げられない上司は出世できない時代です。
【近藤】下の成長は自分の手柄になるのに、「部下をどうやって育てていくか」を考えない男性が多すぎますね。
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八巻里美さん(45歳・仮名)弁護士事務所に勤務後、大手メーカーにてマネジャーに就任。
坂田 彩さん(40歳・仮名)同族経営の老舗メーカーに勤務するマネジャー。
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(大宮冬洋=構成)