ロンドン五輪壮行試合
キリンンチャレンジカップ2012
女子 日本 3−0 オーストラリア
(7月11日 国立競技場 第1試合)

★攻めの組み立ては的確
 「メダル獲得へのカギは、やっぱり澤穂希だな」
 ロンドン・オリンピックへの壮行試合。なでしこJAPANの試合ぶりを見ながら、そう思った。
 日本が圧倒的に攻め続ける。オーストラリアが若手主力ということもあって、澤は、ボランチとしての守りは阪口夢穂にまかせ、攻撃の第2線に出て攻めにからんだ。
 「なでしこ」は、いろいろな形の攻めを試みていたが、そのなかでも、澤が出すパスは的確だった。相手の守りに囲まれていても、もっともいい位置にいる味方にワンタッチで繋ぐ。そういう場面が何度もあった。
 最前線に出てのヘディングシュートも前半に2本あった。
 守りでも、相手のパスのコースを読んで先回りする予測のいいプレーを何度も見せた。

★澤の完全復調が不可欠
 「なでしこ」は前半、2対0とリード。圧倒的に攻め、15本のシュートを放ちながらPKを含む2点はもの足りないが、本番へ向け仕上がり途上だと考えればまずまずである。
 後半13分に3点目。これは澤のゴールだった。コーナーキック後の混戦から出たボールをワンタッチで蹴り込んだ。一瞬のうちにすばやく反応できたのがよかった。
 澤は、3ヵ月半前のアルガルベカップ(ポルトガル)で倒れてから体調を崩していたが、確実に復活しつつあるようだ。
 このゴールの直後に澤は交代した。澤がいなくなったあと、ゴール前へ通すパスが合わない場面が多くなり、追加点は生まれなかった。
 壮行試合のこういう試合ぶりを見て「なでしこ」がオリンピックのメダルを獲得するためには澤の完全復調が欠かせないだろうと思った。

★佐々木監督の気になる発言
 澤は復活しはじめているが、この試合では動きの速さと量は不十分だった。本番まで2週間、専門のトレーナーの協力を得て、オリンピックの第1戦までにフィジカルとメンタルの状態を完全に仕上げてほしいものだと考えた。
 ところが試合後の記者会見で佐々木則夫監督が気になる話をした。
 「ピッチの中だけでなく、外でも宮間(あや)が中心になりつつあるのですよ」
 宮間を中心に若手がまとまってきているという。聞きようによっては、33歳の澤は「チームのなかで浮いている」と取られかねない発言である。
 アルガルベカップのときから、キャプテンの腕章は宮間が付けている。
 佐々木監督は、澤が体調を崩す前から、宮間を中心に新しい「なでしこ」で金メダルを狙おうと考えていたのかもしれない。