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 5-2という派手なスコアで、決勝戦らしくない幕切れとなったドイツのカップ戦。なお、コパ・イタリアは今週末、国王杯は来週末に予定されているので、欧州のシーズンが終わったという人はもうちょっとお付き合いを。もちろん、CLの決勝もまだ終わっていない。

 リーグ戦、カップ戦ともに結果を残したドルトムントに対して、国内では絶対的な立ち位置にいると自負するバイエルン。管理人のうっすらな記憶では、ずっとドルトムントに勝てていない。しかも、試合内容もそれなりに差がある印象。まるで、スペインで行われているクラシコのような雰囲気さえ漂ってきている。さて、何ででしょうというのが今日のお題である。

 結論から言うと、両チームの差は戦術の幅である。

 ドルトムントはボールを大切にするサッカーをしている。シャヒンを失ったせいで、序盤はボールを保持するサッカーの完成度、強度が著しく低下したが、それらを取り返してからは、昨年の強さを取り戻したといっていいだろう。

 ドルトムントのビルドアップの優れているところは、個々の質も言うまでもないが、相手の状況によって、自分たちの形を変えられるところにある。3バックに変化したり、SBの位置取りは状況に応じて高低が使い分けられているし、いざとなったら香川が登場する。サッカーは相手のあるスポーツなので、このようにしたら絶対にOKという形は存在しない。

 で、そんなドルトムントだが、実は相手にボールを持たせるサッカーもできる。もともとボールを大事にするチームに必須のボールを失った瞬間の素早い攻守の切り替えや、相手からボールを奪ってボール保持を高めるための攻撃的な守備も装備しているが、相手にボールを持たせてカウンターを狙うこともできる。ただし、主にバイエルン戦でしか目撃したことはない。

 この試合のドルトムントの得点はボールを保持してからの攻撃よりも、相手陣地でボールを奪ってからの速攻や自陣でボールを奪ってからのロングカウンターが炸裂が中心であった。つまり、どっちもできるというのがドルトムントの最大の強みである。もちろん、なんでもできるとうのは、全てが高レベルという意味ではないが。

 バイエルンを眺めると、こちらもボールを大事にするサッカーをしている。ロッベンとリベリが何度も仕掛ければ、そのうちに相手も瓦解するだろうという計算は確かに成り立つだろう。なので、彼らに仕掛ける機会を何度も与えるために、ボールを保持する道を選ぶわけだ。

 ボールを彼らに届けることはできる。この試合ではボールを持たされた感が満載であったが、何とか前線にボールを届ける仕事はできている。問題はそこかたで、肝心のロッベンとリベリがチャンスメイクできないと、一気に凋むのがバイエルンの特徴である。

 ロッベンとリベリは独力で状況を打破しようという判断が多い。なので、相手も複数で対応してくる。ドルトムントはSHとSBでしっかり対応していた。そうなると、SBの攻撃参加でマークを剥がしたいのだが、いかんせん独力で状況打破を狙ってしまう判断が多いと、SBの攻撃参加のメリットを享受することはできない。

 そうなると、ロッベンとリベリがポジションを移動して攻撃を仕掛けるようになる。彼らが同サイドに固まってコンビネーションを見せたり、片方がトップ下の位置で相手のバイタルの攻略を狙ったりである。

 以上である。なので、チェルシーはロッベンとリベリの位置が近づいた時にどのように対応するかをしっかりと準備すれば、恐らくどうにでもなる。シュート場面以外では存在感を発揮しないマリオ・ゴメスとロッベンとリベリに気を使いすぎて、自分を見失っているミュラーは怖くないだろう。逆に、ミュラーが好き勝手に暴れるようになれば、ちょっと怖くなるかもしれない。

 つまり、この試合はバイエルンがボールを保持して、ドルトムントがしっかり守備をする展開で基本的に試合は推移していった。もちろん、ドルトムントがボールを保持する場面も目立ったが、先制してからのドルトムントは、放り込む場面が目立ち、いわゆる決勝戦らしい試合運びを行なっていた。

 で、話をバイエルンに戻すと、このチームは守備ができない。構造はレアルと一緒である。いわゆる試合を壊せる選手が守備で自分たちの組織を壊してしまう。ロッベンとリベリも守備で頑張る場面が見られるのだが、いかんせん守り切れないし続かない。それは、不安定なDFラインと一緒である。個の守備能力が劣るだけでなく、チーム全体で守備をするという完成度がない。

 つまり、ドルトムントに比べると、守備で差がある。相手のボールを奪ってカウンターの機会を増やせるドルトムントとは異なり、バイエルンはそういう機会を意図的に増やすことはできない。

 つまり、バイエルンは守備が全体的に微妙。攻撃では強さがあるが、ロッベンとリベリが抑えられると厳しい。ただし、ボールを保持することはできるので、延々と攻撃を仕掛けていれば、守備の問題も隠せるし、個人技が爆発するかもしれない。
 
 ここで話はCLの決勝にうつる。チェルシーがボールを保持できたら話は簡単になるが、その可能性はないだろう。バイエルンがホームで試合をするわけだし。また、チェルシーも自分たちらしい守備で対抗する可能性しか考えられない。

 となると、両者が自分たちのサッカーを披露することになりそうである。チェルシーはハードワークで耐え、バイエルンはボールを保持してひらめきで対抗する。チェルシーはロッベンとリベリにしっかりと対策を打てるか。そして、ロッベンとリベリが抑えられたときに、バイエルンは誰がどのような動きを見せるか。

 この誰かが登場するかどうかでバイエルンの命運は決まりそうである。サッカーとは、現状に対して、何らかのアクションを起こす競技である。特にチームがうまくいっていない時に、自分の役割を超えられる判断をできるかどうか。あっさりと個人技で勝負が決まる可能性もあるけれどね。

 ■独り言

 ドルトムントを追いかけていればよかったかもしれない。シャヒンの抜けた穴をどのように埋めていったかの推移をもうちょっと我慢して見守ればよかった。個人的に、香川はもう一年残って、このチームでCLに臨んでほしい。ただ、契約延長しちゃうと、ここで骨を埋めるみたいな展開になるので、移籍するなら今しかないんだろう。

 マンチェスター・ユナイテッドでも試合に出られると思うけどね。