現在、イラク代表監督を務めるジーコ。W杯最終予選では日本と同じB組に入り、オーストラリアとともに2つの枠を争うことに。“神様”が見た現在の日本代表は?

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 2014年ブラジルW杯のアジア最終予選の組み合わせが決定。対戦相手はどこも手強く、最後までシビれる展開になりそうだが、なかでも不気味なのがあのジーコ率いるイラクだ。因縁深い日本との対戦に燃える“神様”をブラジルで直撃した。

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■ウズベキスタンに負けたんだろ?

――まずはイラク代表の最終予選進出、おめでとうございます。

【ジーコ】(日本語で)アリガトウ。

――その最終予選では日本と同じB組に入りました。決まった瞬間、どう思いました?

【ジーコ】特にないよ。そういうことが起こることは予想できていたから。

――最近の日本代表の試合は見ていますか?

【ジーコ】(昨年1月の)アジア杯の決勝は見たよ。あと、W杯3次予選の試合もいくつか見たかな。

――日本に友人の多いあなたならば、見る気になればいくらでも見ることができるはず。なのに、あまり見ていないのはなぜ?

【ジーコ】常に(イラクの)次の対戦相手の分析で精いっぱいなんだ。特に3次予選で同じ組だった中国、ヨルダンの試合ばかり見ていた。今は再び(6月の最終予選初戦で対戦する)ヨルダンだ。ヨルダン戦が終われば、(次に対戦する)オマーンを。その次は当然、(9月に対戦する)日本の試合を集中的に見ることになるだろう。

――なるほど。

【ジーコ】そういえば、この間のウズベキスタン戦(2月29日の3次予選最終戦)はベストメンバーで戦ったの? 負けたんだろ?

――はい。一応、現時点でのベストメンバーのはずです。

【ジーコ】そうか……。今の日本代表で私が知っているのは遠藤、本田、香川、長友、長谷部、今野、駒野……。あと、イングランドに「リオ」という選手がいるな。

――「RYO」(宮市亮)ですね。

【ジーコ】そうだ。背中にそう書いてあった。1試合しか見ていないけど、守備に追われていたな。

――日本で注意する選手は?

【ジーコ】(キッパリと)本田と香川。ふたりの存在は特別だ。チームに“違い”を与えられる選手だ。

――ザッケローニ監督についてはどんな印象を持っていますか?

【ジーコ】ウディネーゼのイベントで顔を合わせたことがある(ジーコは現役時代にウディネーゼでのプレー経験があり、ザッケローニは監督経験がある)。彼のサッカーは攻撃的なので好感を持っているよ。経験ある、いい監督だ。

■“ドーハの悲劇”は覚えているよね?

――それにしても、あなたほどの人が、なぜわざわざイラク代表の監督になったのですか? 多くの日本人が疑問に思っています。

【ジーコ】うん。実は昨年、中国、サウジアラビア、そしてイラクの3ヵ国から代表監督の打診があった。普通に考えれば中国を選ぶだろう。ところが、中国からのオファーというのが、中国サッカー協会から直接届いたものではなく、代理人経由だったんだ。委任状はあると言うのだけど、信じていいのかわからない。そこでサウジと話を進めて、ほぼ決まりかけたと思ったら、新聞にライカールト(元バルセロナ監督)が監督に就任したという記事が(苦笑)。

――それでイラクになった。

【ジーコ】イラクは最初、(兄の)エドゥーを監督に誘ったんだ。

――あなたではなく?

【ジーコ】そう。エドゥーは、イラクをW杯本大会に連れていった唯一の監督だからね(ジーコの兄で、元日本代表テクニカルディレクターのエドゥーは、ブラジルサッカー連盟の推薦により、1985年にイラク代表監督に就任。アジア予選を勝ち抜き、86年メキシコW杯出場を決めた。ところが、大会前にサダム・フセインが別の監督を招聘。コーチ降格処分を拒否して辞任)。ちなみに、僕はフラメンゴにいた頃、エドゥーが監督だった頃のイラク代表とバグダッドで親善試合をしたことがある。きれいで風情(ふぜい)のある街だったよ。