「選手が日本に数人しかいなくて何が代表だ」
 お笑いコンビ、南海キャンディーズのしずちゃんこと山崎静代(33)がアマボクシングの全日本女子選手権のミドル級で優勝。ロンドンオリンピック出場に王手をかけた。だが、自身、ボクシングの経験もあるノンフィクションライターの織田淳太郎氏は「ボクシングはそれほど甘くはない」と手厳しい。



 ボクシングは倒すか、倒されるかの命をかけた格闘技です。アマの世界でもオリンピックに出場するため、強豪がひしめき合う中を闘い抜き、修羅場をくぐり抜けてきたツワモノぞろいですよ。

 これまでメダルを獲得した選手は圧倒的にアメリカが多い。しかし、プロはともかく、ミドル級の選手は男女とも選手が少ないです。

 女子ボクシング世界選手権大会が初めて開催されたのは01年で、ロンドンオリンピック以降の採用が決まっている。それはそれで喜ばしいかぎりですが、本来は食うか、食われるかのギリギリの格闘技で、遊び半分でできるスポーツではないことを忘れてもらっては困る。

 ところが、お笑い芸人がオリンピックに出場できるかもしれないとあって、マスコミは大騒ぎです。ボクシング協会も人気を高めるため、彼女の名前を利用したいのかもしれません。でも、そうとは知らずに、本人がすっかりその気になって舞い上がっているので、びっくりしました。

 実際、彼女がこれまで公式試合でリングに立ったのはたった2回です。国内の試合では先の全日本選手権が初めてでした。しかも、ミドル級にエントリーしたのはわずか3人。彼女は1回勝っただけで、世界選手権の代表に選ばれた。それほど日本の女子ミドル級は選手層が薄く、レベルも低いのが現状です。

 ロンドンオリンピックで正式種目に採用された女子ボクシングだが、階級はフライ級( 48〜51キロ)、ライト級(57〜60キロ)、ミドル級(69〜75キロ)のみ。出場できるのは各階級12人ずつの36人で、5月の世界選手権でベスト8に入れば、出場権を得られる。

 東南アジアには体の大きな女性が少ない。しずちゃんはパンチが重く、衝撃がある反面、スピードがないのが欠点です。東南アジアで彼女の前に立ちはだかる強力なライバルが存在しない中、もしかすると1回勝っただけでオリンピックのキップを手にするかもしれません。そうなると、マスコミはさらに大騒ぎするでしょう。

 私が心配するのは、体が大きくて俊敏な黒人系の選手の存在です。もし、オリンピック本番で彼女たちと闘うことになったら、おもちゃにされるのではないでしょうか。勝敗のポイントは手数で、細かいパンチを繰り出せばいい。レフェリーはすぐに止めに入るので生死に関わるようなことはないにせよ、このバカ騒ぎはちょっと心配ですね。