堅実女子のお悩みに、弁護士・柳原桑子先生が答える本連載。今回の相談者は三上真優さん(仮名・35歳・メーカー勤務)です。

「結婚した夫が、私の収入を当てにして“会社をやめて起業する、同時に専業主夫として君を支える”と宣言して、会社をやめててしまいました。これを理由に、離婚したいのです。

私は20代半ばから本当に苦しい婚活を10年して、今の夫(40歳・中堅メーカー会社員)と3か月付き合い、先日入籍しました。お互いに貯金をとっておきたかったので、式もハネムーンも行なわない予定だったのですが、私の親が挙式の費用とタヒチへの新婚旅行費を払ってくれました。総額300万円です。結婚式では親がとても喜んでくれました。

しかし、私の実家にお金があり、私自身が一人娘だとわかってから、彼は会社を自主退職してしまいました。現在無職で失業保険を受けています。

起業するどころか毎日スマホゲームばかりして、再就職する気配も見えません。専業主夫宣言をしたくせに、家事は一切しません。私は一応会社員ですが、年収300万円の一般職で、これから彼を食べさせていくのは嫌だし、そもそも無理です。

私が結婚したかったのは、子供をつくり、安定した生活を送ることが目的だったので、無職の夫ではムリです。きちんとした会社に勤務している男性だったから、結婚したんですよ!それで、先日離婚したいことを夫に伝えたら、応じる気配もありません。強硬に離婚をする場合、どうすればいいですか?」

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは……!?

夫にあなたの考えを話して離婚を求めたのに、夫は応じる気配もないということであれば、協議離婚は容易ではないようです。

例えば、夫の親等に話して説得してもらうとか、協議離婚が成立する可能性があれば、それを試みてはいかがでしょうか。

その可能性も低く、手を尽くしたのにだめだった場合は、離婚の手続としては調停を申し立てることが考えられます。しかし、調停でも離婚合意ができない場合には、調停は不成立で終了するので、次の手続としては、訴訟を提起することになります。

「強硬に離婚する」ということは、すなわち夫が承諾しなくても、判決で離婚を判断してもらうということになるでしょう。

訴訟には、弁護士を依頼して臨む必要があると思うので、それなりに経費も考えておく必要があります。それに訴訟を提起すれば必ず離婚が認められると決まったものではないので、具体的な事実をもとに、弁護士とよく相談していく必要があります。

また、強硬という趣旨とは異なりますが、事実上影響を及ぼすであろうこととして、今住んでいる家が夫名義で契約したものならば、あなたは家を出て別居をすることもありえます。

この件の場合だと、あなたは同居している限り、あなたが一方的に面倒を見るという状態に陥る可能性が高いです。その状態が彼にとって心地よければ、彼はますます離婚する気が起きなくなるかもしれません。あなたの環境が別居できる状態ならば、別居が彼の気持ちに何か働きかける可能性があります。

協議離婚をスムーズに進めるには、上に挙げた別居するというのはある程度の効果がある方法だと思います。お互いが距離的に離れることで、気持ちも離れやすくなることはあります。ただし、別居すれば離婚できるというわけではなく、別居したとしても裁判まで手順を踏まなければ離婚にならなかったケースもあります。

夫婦は恋愛的要素よりも、パートナー的な側面が強くなる。夫の失業から、離婚を考える妻は少なくない。



■賢人のまとめ
訴訟は弁護士を依頼して臨む必要があると思うので、それなりの経費も必要です。別居してみるのもひとつの解決策かもしれません。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/