終わらぬ「2強時代」に奮起を求める声「対抗者不在の支配は後続にとっての恥」

 男子テニス世界ランク15位の錦織圭(日清食品)は右手首の腱損傷のため、8月から今季残りのツアーを欠場。世界ランク1位のラファエル・ナダル(スペイン)、 同2位のロジャー・フェデラー(スイス)というレジェンドが完全復活を果たした一方で、英メディアは世代交代できない錦織らテニス次世代の不甲斐なさに苦言を呈している。

 フェデラーは上海マスターズ決勝でナダルを6-4、6-3で撃破。今季、グランドスラムを2勝ずつ分け合ったレジェンド対決は大会を盛り上げた。昨季まで故障に苦しんでいた2人の復活はテニス界に明るい話題を提供しているが、他のライバルの不甲斐なさを嘆く声も出ている。

「ロジャー・フェデラーとラファエル・ナダルの対抗者不在の支配は後続にとっての恥だ」と特集したのは、英地元紙「デイリー・テレグラフ」電子版だった。

 両雄の復活を「衝撃以外のなにものでもない」と称賛する一方で、「しかし、自分たちを騙してはいけない。他の選手たちは2017年にまとめてゾッとするようなものだった」と2強以外のタレントに苦言を呈している。

 故障で離脱を余儀なくされたアンディ・マレー(英国)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)という「BIG4」については「2人とも故障と燃え尽き症候群で低調だった」、「BIG5のメンバー」という大舞台に強いスタン・ワウリンカ(スイス)についても「膝の怪我で離脱し続けている」と指摘している。

錦織ら次世代の“甘さ”はドイツ代表MFの緩慢なプレッシングと同じ?

 実力者トリオのみならず、錦織ら次世代も対象に挙がっている。「フェデラー&ナダル時代」に幕を引けないもどかしさはサッカー界のある天才司令塔に重ねられている。

「ミロシュ・ラオニッチ、ケイ・ニシコリ、トマーシュ・ベルディハはメスト・エジルが相手MFを追いかける程度の自信の中で迎えたチャンスしか掴んでいない。ラオニッチとニシコリは(またもや)故障の問題を抱えている。ベルディハ、マリン・チリッチ、グリゴール・ディミトロフはある程度のいい成果や、完全に無残な結果を出すという状況だ」

 ドイツ代表MFエジルはドイツのブレーメン、スペインのレアル・マドリード、そして、イングランドのアーセナルでアシスト王に輝いた才能の持ち主だが、守備時の緩慢なプレーで英メディア、サポーターの批判の対象にされている。サッカーの母国らしい例えだが、錦織ら次世代の王座への“詰めの甘さ”はエジルのプレッシングと同様のもどかしさがあるという。

 一方、特集では新世代の若手の現状にも触れている。世界ランク5位に躍進した20歳の新星、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)はグランドスラムでは16強どまり。同20位のニック・キリオス(オーストラリア)は才能を評価されながら、上海マスターズ1回戦で途中棄権。“悪童ぶり”について「ニック・キリオスは依然としてニック・キリオスであり続けている」と報じている。

 こうした論調になるのも、フェデラー、ナダルが年を重ねてもいかに図抜けた存在であるかの裏返しでもあるだろう。2人の輝かしい栄光の影で、次代のテニス界を担う錦織らの奮起を求める声も上がっている。