アイドルグループ欅坂46の楽曲『月曜日の朝、スカートを切られた』の歌詞に対し、過去、スカートの切り裂き被害に遭った人が異を唱えている。署名活動サイト「change.org」では、同曲で傷つく人が増えないようにしたいとの思いを持った女性が、署名活動を始めた。

「欅坂が好きだった私ですが、この曲が気持ち悪くてファンをやめました」

この曲は7月19日発売のアルバム「真っ白なものは汚したくなる」に収録されている。MVは同グループのYouTubeチャンネルでのみ公開されている。暗めの曲調で、学校や社会への違和感と、それに対する自分の無力さを気だるげに歌っており、歌詞は「大人になるため嘘に慣れろ!」「残りの人生目立たないように息を止めろ!」など、周囲の抑圧に対抗せず、無難にやり過ごすことを良しとする内容だ。プロデューサーの秋元康氏が作詞した。

「【欅坂46】月曜日の朝、スカートを切られた の曲で傷つく人が増えないようにしたい」とする署名活動を始めた女性が特に問題を感じたのは、サビに出てくる

「月曜日の朝、スカートを切られた 通学電車の誰かにやられたんだろう どこかの暗闇でストレス溜め込んで 憂さ晴らしか 私は悲鳴なんか上げない」

のフレーズだと見られる。女性は2年前、入学したての学校の制服を着て電車に乗っていたところ、スカート切り裂きの被害に遭った。その一件以来、その路線に乗るのが憂鬱だと話す。

後日犯人は逮捕されたそうだが、「この曲をテレビで紹介しているときに嫌な思い出が蘇り電車に乗るのがまた怖くなりました。いまは落ち着いてますがとても怖いです」と、心境を吐露する。

「たくさん傷ついている人がいる中でこんな曲を出すのは不謹慎だと思いますしこの曲のせいでこのような犯罪が増えてはとても困ります。電車に乗れない人だってもっとたくさん出てきたっておかしくない状況になることも考えられます」

と綴る。7月31日13時時点で1700人以上の署名が集まっており、

「欅坂が好きだった私ですが、この曲が気持ち悪くてファンをやめました」
「被害者感情を軽視しているだけでなく、犯罪被害をまるで大したことではないかの様に扱い、被害を訴え辛くさせかねない」

と、賛同の声も多数寄せられている。

「私は悲鳴なんか上げない」と「盗んだバイクで走り出す」の違い

一方ネットでは、この署名活動が「言論統制と同じ」という意見も出ている。スカートの切り裂きは尾崎豊の『15の夜』内の一節「盗んだバイクで走り出す」と同じ犯罪行為だが、署名活動をするほど目くじらを立てなくても良いのでは、という見方だ。

『月曜日の朝、スカートを切られた』は、同グループのデビューシングル『サイレントマジョリティー』の前日譚の設定であると、キャプテンの菅井友香さんがブログで明かしている。『サイレント〜』で、自己主張の重要性を歌っている点を踏まえると、「悲鳴なんか上げない」という一節は、あくまでも学校や社会への諦観、無力感を表現しただけであり、犯罪に対して何らかの意図があるわけではない、とも取れる。

しかし、尾崎が抑圧への抵抗、自由を手にするために行動することの解放感を歌うのに対し、『月曜日の〜』は、「目立たないように息を止め」ることで抑圧を受け入れよとの文脈を持つ。その文脈で、切り裂き被害に遭った曲中の主人公が「私は悲鳴なんか上げない」と言う。これは、犯罪被害者側に沈黙を強いていると受け止められても仕方がないのではないだろうか。

署名活動への応援として、冒頭で紹介した女性の活動を補足する形で、別の方が「秋元康氏は差別と暴力に関する声明を出すべきだ」との新たな署名活動も始めた。集まった署名は、秋元康氏の事務所に提出されるという。

※記事の一部に誤りがありました。

誤:別の女性 正:別の方
誤:「差別と犯罪に関する署名」 正:「差別と暴力に関する声明」

8月2日17時24分に修正いたしました。お詫び申し上げます。