JR四国が2016年度上期における各線区の利用状況を発表。路線の存廃が取り沙汰されているJR北海道の、「輸送に直接必要な経費が賄えない」という“基準”をJR四国の路線に当てはめると、どの線区が該当するでしょうか。

将来にわたり人口が減っていく四国

 2016年11月7日(月)、JR四国が今年度上期における各線区の利用状況を発表しました。

 それによると、予讃線の高松〜松山間や本四備讃線などは利用が比較的多く、営業キロ1kmあたりの1日平均旅客輸送人員である「輸送密度」がもっとも高い高松〜多度津間で2万5014人/日などとなっていますが、一方で低い線区もみられます。特に牟岐線や予讃線の一部区間と予土線などは利用が少ない状況です。


2016年度4〜9月期におけるJR四国の線区別利用状況。黒い点線は特に利用が少ない(画像出典:JR四国)。

 JR四国の半井真司社長は11月7日(月)の記者会見で、「(不採算路線を)維持するのが厳しい状況がくるのではないか」とコメント。具体的な路線名や時期は示されませんでしたが、将来的に一部線区を廃線する可能性を示唆しました。

 2015年の国勢調査によると、四国4県の人口は397万6000人で、5年前の2010年と比較して2.7%減少しました。国立社会保障・人口問題研究所がまとめた『日本の地域別将来推計人口(平成25(2013)年3月推計)』によると、四国4県は将来も人口減少が続きます。団塊の世代が75歳(後期高齢者)を迎える2025年は351万人、2040年は300万人を下回る295万5000人という推計です。

JR北海道の「基準」をJR四国に当てはめると…

 JR北海道は今年7月、「単独維持困難な線区」を公表したうえで「持続可能な交通体系のあり方」について沿線自治体などと協議を開始したいとする考えを発表しました。同社によると、輸送密度が500人級(収入3億円規模)の線区では、燃料費や乗務員経費など輸送に直接必要な経費が賄えないとのこと。輸送密度が500人未満である線区は、JR北海道では次のとおりです。

●輸送密度が500人/日未満の線区(2015年度、JR北海道)
・留萌本線・留萌〜増毛:67 ※12月5日廃止予定。
・札沼線・北海道医療大学〜新十津川:79
・石勝線・新夕張〜夕張:118 ※夕張市が廃止に合意。
・根室本線・富良野〜新得:152
・留萌本線・深川〜留萌:183
・宗谷本線・名寄〜稚内:403
・根室本線・釧路〜根室:449
・根室本線・滝川〜富良野:488

 この“基準”をJR四国に当てはめた場合、どうなるでしょうか。輸送密度が500人未満であるJR四国の線区は次のとおりです。

●輸送密度が500人/日未満の線区(2016年度上期、JR四国)
・牟岐線・牟岐〜海部:261
・予土線・北宇和島〜若井:342
・予讃線(海線)・向井原〜伊予大洲:491

 もっとも輸送密度が低い牟岐線の牟岐〜海部間は徳島県南部の海沿いを走っている路線。終点の海部駅は第三セクターの阿佐海岸鉄道に接続しています。予土線は愛媛県と高知県にまたがった路線で、その一部区間は四万十川沿いを走行。普通列車のほか、観光列車「しまんトロッコ」なども運行されています。

 気候や人口密度などが北海道と異なることに留意が必要ですが、採算が取れない路線が存在する以上、将来、JR四国でもその存廃をめぐる議論が起こるかもしれません。

【写真】四万十川沿いの予土線を走る「0系新幹線」


四万十川沿いの予土線を走る新幹線0系を模した「鉄道ホビートレイン」(画像出典:photolibrary)。