不注意だったり衝動的な行動をとったりという特徴がある行動障害の注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、発達障害の一種として否定的な面ばかりを取り上げられがちです。しかし、ADHDの特性を解説するムービー「Is ADHD An Advantage?」を見ればADHDには問題点だけでなく利点もあることがよく分かります。

Is ADHD An Advantage? - YouTube

注意散漫で多動性という特徴を持つADHDは一般的には行動障害に分類され、子どもや10代の若者の間で増加傾向にあると言われています。行動障害のADHDの人の体内ではどんなことが起こっていて。アドバンテージ(利点)になり得るのでしょうか?



ADHDは脳の発達に関係があると考えられており、妊娠中の喫煙や飲酒が原因ではないかと言われていますが、遺伝子に関係性があるとみられています。



そしてこのADHDに関係する遺伝子は、報酬系に直接結びつきがあります。



ADHDの人は良い気分を作り出す「ドーパミン」の受容体が少ないことが分かっています。



ドーパミン受容体が少ないということは極端に言えば、何にでも退屈を覚えやすいということで、楽しいと感じることに鈍感ということです。



fMRIで脳の中をスキャンすると一般の人とADHDの人との間には際だった特徴があります。一般の人の脳は通常モードから……



課題が与えられたときに活性化する「Task-positive network(TPN)」へとスムーズに切り替えられます。



これに対してADHDの人は切り替えが下手。



通常モードを終了させることなくTPNモードに突入するので、結果として集中することが苦手になります。



研究によるとADHDの人は集中したり感情をコントロールしたりするのに関係がある大脳皮質が薄いことが分かっています。



このような症状を緩和するためにADHD患者にはシナプスのドーパミン受容性を活性化させる「リタリン」という薬が処方されています。



しかし、リタリンには長期間にわたって生じる副作用の問題が指摘されており、ADHDではない人が集中力を高める目的でリタリンを服用するという問題もあるとのこと。



アメリカでは毎年5%の割合でADHD患者が増えているという調査報告があり、それを裏付けるかのようにリタリンの販売量は2008年から2012年の間に35%も増加したというデータもあります。



しかし、進化の過程ではADHDの特徴が有利だったことも判明しています。狩猟・遊牧生活では多動性であることは狩りの成功率を高め、警戒心が高いことは家族を敵から守るのに有効で、生存競争上有利であったと指摘されています。



ケニアの定住民族と遊牧民族を比較した研究では、ADHDに関わる遺伝的特徴をもつ人ほど獲物を多くゲットしていることが確認されています。



そして、何にも増してADHDにはクリエイティビティ(創造性)の面で優れているという報告があります。



一般的な教育方法ではADHDの創造性は埋もれてしまいがち。ADHDの特長が最大限発揮できるようなこれまでとは違った教育の必要性がありそうです。