鈴木涼美氏の書く文章が好きだ。子どもの頃の思い出を書いていても、母親の死に触れていても、大人の男たちを相手に汚れた下着を売ったことを書いていても、湿り気があまりなくてどこかさらっと乾いている。それでいて、読んでいると他人の思い出のはずなのに、時折どうしようもなく懐かしさや愛しさが込み上げてくるような時がある。記憶がはっきりしないほど幼い頃から、20代前半までの日々が断片的に描かれたエッセイである。