ふさわしい赤になるように納めている昔ながらのたたずまいの工房にお邪魔すると、60年近くこの場を担う熟練の染師と6代当主の吉岡更紗氏が仕事をしていた。更紗氏は紅花で作った赤の泥を薄めたものを刷毛に含ませ、和紙の上をすーっと上下に動かして染めていた。「工房は歳時記のように進み、常に慌ただしく1年が過ぎます」と語る。年が明けると、奈良の東大寺二月堂で行われる修二会(お水取り)秘仏十一面観音に捧げる椿の造花の