〈じっと考える材料〉むかし、甚太郎(じんたろう)という十歳になる少年がいた。甚太郎は近所のお寺でよく一人で遊んだ。ある日、お寺の和尚(おしょう)さんが甚太郎を呼び、こう言った。「本堂の裏に蔵(くら)があるじゃろ。実はあの蔵の中に代々保管されている宝物がある。その宝物がなにか、蔵に入って見てくるがいい」。甚太郎は興味津々(きょうみしんしん)で蔵に入っていった。蔵には窓が一つもなく、なかは昼間でも真っ