AI時代に、なぜデロイト トーマツは「人が集う学びの場」へ投資するのかーDeloitte Universityが描く、プロフェッショナル育成の新しいかたち

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デロイト トーマツ グループ


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AIが知識整理や資料作成を担う時代、プロフェッショナルに残る価値は何か。

デロイト トーマツがその問いへの答えとして投資するのが、Deloitte Universityである。 

それは、知識を教える研修施設ではない。人が集い、対話し、失敗し、内省することで、AIには代替しにくい力を磨く場である。 


デロイト はなぜ今、人が集う学びの場に投資するのか。有限責任監査法人トーマツ パートナーの大谷博史と、Deloitte University Asia Pacific North East Asia設立プロジェクトでPMOリードを担う鈴木清香に聞いた。 

Deloitte Universityとは何か 

 

Deloitte Universityは、デロイトが世界各地で展開する人材育成拠点である。 

2011年に米国テキサス州ダラスから約50km北西に位置するウェストレイク町で開校したのを皮切りに、各地へ展開してきた。NEA(North East Asia。日本、台湾、韓国などを含む北東アジア地域)では現在、千葉県木更津市のかずさアカデミアパーク内( https://www.deloitte.com/jp/ja/about/press-room/nr20250730.html )

で2029年頃の開校を目指して整備が進められている。 


特徴は、大きく三つある。 

第一に、参加者は日常業務を離れ、一定の時間を共に過ごすこと。第二に、学びの中心が講義ではなく、内省*と対話に置かれていること。第三に、事業領域、職位、世代、国籍を超えて参加者が意図的に混ぜられることだ。 


こうした設計を通じて育てようとしているのは、専門知識そのものではなく、専門性を生かし続けるための本質的な力である。リーダーシップ、共感力、問いを立てる力、異なる専門性をつなぐ力。Deloitte Universityは、それらを実践的に磨くための場である。 


では、なぜ今、デロイト トーマツはこの種の投資に踏み出すのか。 


*自分自身を振り返り思考や行動の傾向、どのようにコミュニケーションするかを自ら考えること

AIが進化するほど、人間にしか担えない力が問われる


生成AIをはじめとするテクノロジーの進化は、プロフェッショナルの仕事のあり方を大きく変えつつある。情報収集、資料作成、定型的な確認作業、一定の分析。かつては人の経験や処理能力に依存していた仕事の多くが、AIによって支援されるようになっている。 


では、その先に人が担うべき価値は何か。 


日本で欧米企業を相手にしたグローバル案件を数多く経験し、アメリカでの生活を経て、現在はシンガポールを拠点に活動する鈴木は、AI時代における人材育成の意味をこう語る。 


「作業そのものはAIが担える領域が広がっていきます。ただ、それだけでは新しい発想にはつながりません。それぞれの関係者の状況や感情を読み取りながら人と人とをつなぎ、より大きな仕組みやイノベーションを創発していく。そうした人間らしい力の重要性は、むしろ高まっていると感じています」 



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 Deloitte University Asia Pacific  Senior Manager 鈴木清香


多国籍のメンバーと協働するとき、求められるのは単に英語で説明する力ではない、と鈴木は強調する。相手が置かれている状況を理解し、言葉になっていない意図を汲み取り、異なる価値観の間に橋を架ける力である。 


一方の大谷は、有限責任監査法人トーマツでパートナーを務める。Deloitte Universityのプロジェクトを社内で推進してきた立場でもある。 


「監査人の存在意義は、書類を見ることだけではないんですよ」 


監査業務のうち、証憑確認や資料確認などの定型的な作業は、テクノロジーの活用が進みやすい領域である。だが大谷は、監査の価値はそこにとどまらないと語る。 


「監査は、会社のガバナンスを支える機能でもあります。資料だけでは見えない組織の状態、経営層の空気、会社の中にある違和感を読み取り、その会社がより良くなるために何が必要かを考える。そこには、人間にしか担えない役割があります」 



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有限責任監査法人トーマツ パートナー 大谷 博史


AIが作業を担うようになることで、人は本来向き合うべき問いにより深く向き合えるようになる。クライアントの意思決定をどう支えるのか。企業の持続的な成長にどう貢献するのか。社会の中で、プロフェッショナルはどのような価値を出すのか。 


Deloitte Universityが育てようとしているのは、そうした問いに向き合える人材である。 

知識を教える場所ではない、その本当の意味 


Deloitte Universityの本質は「研修施設をつくること」ではない、と大谷は念を押す。「私たちの内部の人材を育てること。それが中心です」。ネットワーキングやクライアントとの関係構築もDeloitte Universityが担う重要な要素だが、軸足は「人をどう育てるか」にある。 


これまでデロイト トーマツの研修は、専門知識やハードスキルの習得が中心になりやすかった。領域ごとの専門知識を学び、現場では先輩の背中を見ながら経験を積む。「リーダーシップとか、共感力とか、コミュニケーション力みたいなものは、本人の資質や、それまでの経験に依存していた面があったと思います」と大谷は振り返る。

 

鈴木も、日本の教育のあり方そのものに課題意識を持つ。 


「日本では、知識を覚えて、正解を見つける教育を受けてきた人が多いと思います。一方で、私が経験してきた海外での生活や職場環境では、若い頃からリーダーシップやディスカッション、答えのない問いに向き合う機会が多いと感じました。もちろん日本の教育が間違っているということではありません。ただ、プロフェッショナルとして世界で力を発揮していくためには、そこに別の学びを重ねていく必要があると感じています」 


Deloitte Universityは、その「別の学び」を体系的に提供するための場である。 


参加者は、まず自分自身を振り返るところから始める。自分はどのような思考や行動の傾向を持っているのか。相手はどのようなタイプなのか。その違いを前提に、どのようにコミュニケーションすべきなのか。答えを教わるのではなく、自ら考える。「最近流行りの診断じゃなくて、自分で考える。そこに意味があるんです」と大谷は付け加えた。 

海外Deloitte Universityで見えた、デロイトカルチャーの原点 


Deloitte Universityでの学びは、内省にとどまらない。参加者が国や地域を超えて交わることで、デロイトのカルチャーそのものを体験する場にもなる。鈴木が欧州のDeloitte Universityを訪れた際に感じたのは、地域や国を超えて共有されるデロイトカルチャーだった。 


「初めて行く場所なのに、初めての感覚がしないんです」 

 

そこにいる人たちは皆デロイトのメンバーである。地域や国が違っても、共通するカルチャーがある。東アジアから訪れた自分たちにも自然に声がかかり、カジュアルな交流の中で関係性が生まれていく。 


「全員がデロイトの人なので、どこか家族のような感覚がありました。バーやイベントのような場で楽しい時間を共有することで、すぐにつながることができる。Deloitte Universityは、デロイトカルチャーのベースになる場所なのだと感じました」 


大谷も、組織が大きくなるほど、部門を超えた偶然の出会いは生まれにくくなると語る。Deloitte Universityは、そうした出会いを意図的につくり、組織への愛着や帰属意識を育む場にもなる。



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日本・NEAでつくる「失敗できる練習の場」


日本を含むNEAでDeloitte Universityを展開するうえで重要になるのは、挑戦と安心のバランスである。英語で挑戦する機会は重要だが、深い内省や率直な対話には、母語で考える時間も必要になる。同時に、監査、税務、法務、コンサルティング、アドバイザリー、テクノロジーなど異なる専門性を持つ人材を意図的に混ぜることで、日常業務では触れにくい仕事観や思考様式に出会うことができる。 


そうした場では、戸惑いや失敗も起きる。だが、鈴木はそれこそが学びだと考えている。 

「100%の自信が持てていない状態であっても、やりきらなければならない瞬間があります。Deloitte Universityは、そのための練習の場になると思っています」 

人材育成を、キャンセル可能な費用にしない 


Deloitte Universityの立ち上げは、簡単なプロジェクトではなかった。 


Deloitte Universityの立ち上げで大きな論点となったのは、プロフェッショナルファームが自ら学びの場を持つことの意味だった。必要なときに外部施設を借りるのではなく、固定的な場を持つ。その判断には、投資や運営に関する慎重な議論が伴った。

 

大谷は、社内で理解を得るために「なぜ今ある研修ではだめなのか」「リモートではいけないのか」「必要なときだけ借りればよいのではないか」という問いに向き合ってきた。議論の核心は、人材育成をキャンセル可能な費用として見るのか、継続的な投資として見るのかにあった。 


変動費として人材育成を捉えれば、状況が悪くなったときに削減できる。しかし、本当に必要な人材育成であれば、キャンセル可能なものとして扱うべきではない。「人材育成をキャンセル可能なものにするのではなく、デロイト トーマツとしてコミットする。その姿勢を見せる必要があるんです」。大谷の言葉には、社内対話を重ねてきた人間の確信がある。 


「人がすべてだということに尽きると思います。これからの時代、その重要性はより高まります。だからこそ、ここでコミットしないわけにはいかないのです」 


鈴木も同じ想いを別の角度から語る。人材育成は、短期的な成果だけで判断するものではない。将来どのような形で力を発揮するかを完全に予測することはできなくても、組織が人に投資し続けることには意味がある。Deloitte Universityは、その姿勢を具体的に示す場でもある。 


そしてそれは、デロイト トーマツに残る人材だけのためではない。 


「この人がいつか辞めるかもしれないから教育しない、という考え方ではありません。むしろ逆で、どこで働くことになっても価値を発揮できる人材に育てる。それくらいの覚悟が必要だと思っています」 


Deloitte Universityは、人材を囲い込むための場ではない。デロイト トーマツにいる間に、その人の可能性を最大限に広げる。将来どこで活躍することになっても、デロイトで育った人材として誇れる存在にする。その考え方は、プロフェッショナルファームとしての人材観そのものを示している。 

日本から、世界を引っ張るリーダーを生み出す 


鈴木がDeloitte Universityに強く期待しているのは、日本から世界を引っ張るリーダーが生まれることだ。日本の人材に対する海外からの期待と、その期待に応えきれていない現実の両方を見てきたからである。 


「日本には優秀な人がたくさんいるんです。でも、グローバルの場に出た瞬間に萎縮してしまうことがある。本当は能力があるのに、それが十分に外に出ていない」

 

 鈴木は、海外で仕事をする中で、日本の市場規模や品質、技術力への期待を感じてきた。それでも、ビジネスの世界でグローバルなリーダーシップを発揮する人材は、まだ十分とは言えない。 


「世界では、日本にもっとリーダーシップを取ってほしいという期待があります。その期待に応えられる人材を増やしていきたい。日本の優秀さを、もっと世界に出していきたいんです」 


鈴木は「日本はルールを守ることにとても強いんです」と続ける。「でも、世界ではルールをつくる側に立つことが大きな力になる。日本の人材がそこに関与していけるようになれば、日本のプレゼンスはもっと高まるはずです」。 


大谷も、日本企業の未来に同じ問題意識を寄せる。 


「これまで優秀だった人が、これからも同じ力だけで優秀であり続けられるとは限りません。例えばリーダーシップや共感力を含めた人間力を鍛えていくこと。それが、日本企業を底上げするうえで重要なフェーズになっていると思います」 

デロイト トーマツの人材観を象徴する場所へ 


千葉県木更津市のかずさアカデミアパーク内で整備が進むDeloitte Universityは、段階的に展開されていく予定だ。

 

ただし、重要なのは建物そのものではない。 


そこで誰と出会うのか。どのような問いに向き合うのか。どのような失敗をし、どのような気づきを得るのか。そして、それを日常の仕事にどう持ち帰るのか。 


Deloitte Universityが目指すのは、参加者が「ここに来てよかった」と感じる体験をつくることだ。その体験が、デロイト トーマツへの愛着を深め、専門性を超えたつながりを生み、クライアントや社会への価値提供につながっていく。 


大谷は、最後にこう締めくくった。 


「デロイト トーマツは、人がすべてです。その人材にコミットしていることを、Deloitte Universityを通じて伝えたいんです」 


鈴木は、Deloitte Universityの先にある未来をこう見据える。 


「Deloitte Universityを起点に、日本から世界を引っ張るリーダーが生まれてほしい。その実現に自分も関わっていきたいと思っています」 


AIが進化し、知識や作業の価値が変わっていく時代。だからこそ、人が集い、対話し、失敗し、内省し、互いから学ぶ場の意味は大きくなる。 


Deloitte Universityは、デロイト トーマツが人材をどう捉え、未来のプロフェッショナルをどう育てようとしているのかを示す、人材投資の象徴である。 



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