ユーベを苦しめた本田圭佑。敗戦にもミランに朗報
【オフィシャル誌編集長のミラン便り2014〜2015(19)】
ユベントススタジアムで対戦相手のチームが結果を出すのは非常に難しい。スーペルピッポ(インザーギ監督の愛称)もそれはよくわかっているし、ミランの選手たちも重々承知だ。この土曜日(2月7日)に行なわれたユベントス対ミラン戦。試合には、やはり――"やはり"などという言葉は、本当は使いたくはないのだが――負けてしまった(結果は3−1)。ただ、それでもシーズン終盤に向けての明るい兆しを感じられた一戦でもあった。
キックオフ直後から、今シーズン前半にユベントスと当たった時のミランとは明らかに異なっていた。ユベントスが攻撃してくるのをただ待って防戦するのではなく、自分たちから積極的に攻めに出ていた。またミランの突然の戦術変更にユベントスは最初明らかに戸惑っていた。それはまさに本田圭佑のポジショニングに関してだ。
本田はこの試合、彼が自分本来のポジションというトップ下で先発。しかしディフェンスの場面では、いつでもユベントスの司令塔アンドレア・ピルロに襲いかかる準備が出来ていた。ご存知だろうがピルロはかつてのミランの選手であり、今でも彼の放出を嘆くミラニスタは多い。本田の柔軟な対応と自己犠牲の精神、チームの前向きな姿勢でミランは最後の最後まであきらめず、ユベントスを苦しめ続けた。
しかし気持ちだけでは守備の脆さをカバーすることはできなかった。今シーズン9度目のCKからのゴールを決められてしまったのだ。これは非常にネガティブな記録である。また同点に追いついたあと、たった3分でまたユベントスに追加点を許してしまったのはあまりにも早すぎる。
今のユベントスを破るのはやはり至難の業であった。しかしこの先、ミランにとってはラッキーなカードが続く。2試合連続のホームゲームで、それも対戦相手はエンポリとチェゼーナ。どちらも現在ミランより下位のチームであり、一気に順位をあげるチャンスである。
良いメンタリティーの他に、冬のメルカートでの補強がうまくいったことをインザーギはこの試合で確認した。彼らがこの調子で活躍してくれれば、ミランが今シーズンの最低目標であるヨーロッパリーグ出場権(5位以内)を手に入れる力となってくれるだろう。
DFのルーカ・アントネッリは左サイドに安定を与えてくれた。彼はジェノアのキャプテンだったが、9シーズン前にはミランの選手でもあった。だからミランに慣れるのも他の新加入の選手より人一倍早かったのだろうか、ミランでの第二のサッカー人生を彼はゴールという形で飾った。
センターバックのガブリエル・パロッタは、他の守備陣とともにこの日3点をユベントスに許してしまったが、W杯前にはセリエA最強のDFの一人と言われていた選手だ。まだフルスロットルではないが、その力を垣間見せていた。
トップには、新しく入った選手ではないが、以前の好調なパッツィーニが戻ってきた。前半37分にメネスと交代して入ったパッツォは、同点に追いつく大チャンスのシュートを放った。これを防げるのは世界でもトップクラスのGKしかいないだろうというシュートだったが、残念ながらこの日相手ゴールを守っていたのはブッフォンだった。
来週にはこの攻撃陣の中にマッティア・デストロの姿もみることができるだろう。1月に獲得した選手の中でミランが攻撃の要として大いに期待している選手である。ひと足早くミランに加入していたアレッシオ・チェルチも確実に調子を上げてきている。
その他にも良いニュースはいくつかある。シーズン前半、本田とメネスと共に活躍をしていたMFボナヴェントゥーラがこの試合でケガから復帰。来週にはやはり欠場していたMFデ・ヨング、MFモントリーヴォ、DFアバーテも次々に戻ってくるだろう。
今度の日曜日の試合はミランにとって"真昼の決闘"となるだろう。(試合は12時30分キックオフ)。先ほどエンポリ相手で順位を上げるチャンスと書いたが、だからこそ失敗も許されない。上位に向かう最終列車といってもいい。これに乗り遅れたらもう後はない。必ず勝利して3ポイントを手に入れ、上位へ食い込む足がかりとしてほしい。そうでなければミランの今シーズンは本当に破滅だ。我々は毎度のごとく叫ぶしかない。本田にボールを、ミランに勝利を! 来週は明るい気持ちでみなさんと再会したいものだ。
ステーファノ・メレガリ(『Forza Milan!』編集長)●文 text by Stefano Melegari
利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko