「セックスレス夫婦の絆はモロい」 夫婦問題のプロが語る、結婚生活を左右するセックスの重要性
“セックスレス”という語を一度頭に思い浮かべてください。「私はセックス好きだし彼とも相性がいいし、絶対に無縁!」といい切れる女性はどのくらいいるでしょう? 自分はそのつもりでも、何らかのきっかけが訪れパートナーがセックスへの意欲を失うかもしれません。逆に、「もともと性欲がそんなにないから、そうなっても私はぜんぜん平気」という女性。パートナーも同じ気持ちでしょうか? 彼はもっとセックスしたいと思っているのではないでしょうか?
「セックスレス夫婦の救世主」の異名を持つ二松まゆみさんは、「恋人・夫婦仲相談所」の所長を務め、これまで数多くの男女の悩みに耳を傾けてきました。二松さんの監修による新刊『キョウイクSEX』(主婦の友社)のオビには、ドキッとする惹句が踊ります。「SEXし続ける女とそうでない女 40歳でその後の人生は二極化する」――セックスひとつで人生まで変わっちゃうの!? しない女はどうなっちゃうんだろう……という疑問を、二松さんに直接ぶつけてきました。
セックスのない夫婦が壁にぶつかると脆い
――セックスレスというのは、やはりよくない状態なのでしょうか?
二松まゆみさん(以下、二松):ふたりとも性欲がなくて、セックスしなくてもお互いの関係に満足しているのなら特に問題はないでしょうね。でもそうした夫婦・カップルは少ないです。カップルの相談を受けるとき、私はまずどちらのほうが性のポテンシャルが高いのかを観察します。
妻が性的に開発されていなくて夫の求めに応じてくれなかったり、妻はワーキングマザーで育児と仕事を両立していながらなお、性欲がありあまっていてセックスする気満々なのに、夫は「疲れた」といってすぐに寝てしまったり……。どちらかがセックスを望んでいるのにレス、という状態は解決すべきです。
――この問題を放置しておくとどうなってしまうのでしょうか?
二松:セックスレスというのは、ボタンのかけ違いなんですよ。いまはよくても、時間が経つほど問題が大きくなります。夫婦を続けていると、いろんな問題がでてきますよね。お姑さんの問題、家のローンの問題、子供の教育方針……。私はセックスレスの夫婦を観察していて、ふたりで話しあって乗り越えるべき問題を前にしたときの結びつきが弱いと気づきました。反対に、その都度ふたりで意見交換して問題解決できる夫婦というのは、性生活でもちゃんとすり合わせができている例が多いのです。
結婚相手の条件に「一緒に性と向きあえるか」
――人生に関わる問題を一緒に解決できるか否かに関わってくるとなると、同書にある「セックスで人生が二極化」というのもうなずけます。
二松:だから、未婚の女性も結婚を考えるにあたって、彼の性に対するポテンシャルやお互いの相性をもっと重視したほうがいいですよ。職業や年収、家族構成をチェックするのも大事ですが、「ふたり一緒に性と向き合える」というのは絶対に外せません。
この人と抱き合えるか、セックスを長い年月にわたって維持できるか……。もちろん、セックスの定義は「挿入と発射」だけではありません。やさしく触れ合う、抱き合うなども愛の行為です。これがどれほど大事なポイントかということを、母から娘に教えてあげてほしいぐらいです。
――いまは結婚前からセックスレスに陥るカップルの話もよく聞きます。
二松:未婚の女性からの相談もよく受けますよ。彼氏とは仲よしで、一緒にいて楽しい。でも週イチのお泊りで、手をつないでキスもするけど、セックスはなし。「彼と結婚しても大丈夫ですか? 結婚したらセックスするようになりますよね?」と訊かれるのですが、私からの回答は「も〜う何言ってるの! セックスのない結婚は考え直した方がいいわよ」です。
――厳しいですね!
二松:未婚でも既婚でも、一度なくなってしまったセックスを復活させるのはとてもむずかしいですからね。結婚したからといって、セックスは復活しませんよ。
「産後」はセックスレスの分岐点
――セックスレスになった理由を訊ねるアンケートはいろんなところで行われていますが、だいたい「面倒」「疲れている」「産後」が三大原因となっています。
二松:いまは働いている女性が多く、ただでさえ仕事で疲れるうえに、家事と育児の負担も大きくのしかかってきます。平日はそれでいっぱいいっぱいだから、じゃあ土日にセックスしよう! と思っても、子どもが小さいうちは休日も子ども中心。そしてセックス自体がだんだんと面倒になり、セックスレスのスパイラルにはまっていく……。日本ではこの傾向が非常に強いです。
――同書では、産後にセックスから遠ざかる過程についても、実際の夫婦の例をあげながら具体的につづられていますね。
二松:男性は「妻がお母さんになってしまった」といい、子育て共同体になった女性に対してエロスを感じなくなる。女性はホルモンの影響もありますが、会陰切開が痛かったり出産時の痛さのトラウマが残っていたりして、「とてもセックスする気になれない」という人も多いです。これも母子密着が強い、または無痛分娩が普及してない、など日本独自の文化による影響が大きいといえますね。
忙しい現代女性こそ積極的に「エロ活」を
――うかがっていると、日本社会では何もしなければセックスレスになるほうが、むしろ自然のように思えてきます。
二松:そうなんです。よほど性欲が強いふたりでないかぎり、努力がないとごくごく自然にセックスレスになります。私は産前産後の女性たちに「風俗ごっこ」をオススメしていますが、これもセックスを途切れさせないための努力のひとつ。
本書でも伝説のAV女優・小室友里さん監修の元、妊娠中のセックス体位や、手や口で夫を愛撫する方法を詳しく紹介しています。そして忘れてはならないのが、女性自身がエロチックになること。そうすればセックスを主体的に楽しめるようになります。マスターベーションをしたり官能的なものに触れて感度をみがく「エロ活」を、今日から始めてほしいぐらいです。
――それによって「SEXし続ける女」でいられるわけですね。
二松:女性の性の悩みって、年齢とともに変わるものではないんです。20代の女子も60代のご婦人も、セックスしたいのにできない人たちは同じように悩んでいます。根底に「女性として承認されたい」という欲求があるんですね。
レディファーストの習慣がある国では、女性として尊重されていると実感できる場面が日常的にあります。でも日本にはその習慣がないので、セックスのときぐらい女性としての自分を認めて、尊重してほしいのです。その願いはいくつになっても変わらないし、実現のために女性が努力しつづければならないのも同じ。女性って大変ですよね。でもセックスも結婚生活も、維持するためには女性のほうからオトナになってあげたほうが早いんですよ。
(三浦ゆえ)