【オフィシャル誌編集長のミラン便り2014〜2015(15)】

 2014年最後の試合を、ミランは引き分けで締めくくった。しかし今回はまあ、引き分けでも良しとしよう。なにせ相手は現在第2位のローマ、それも彼らの本拠地オリンピコでの試合だったのだから。ただ、これで首位ユベントスがまた一つ抜きん出たことに関しては多少複雑な気がしないでもない......。

 3位のナポリを破ったあと、2位ローマにも負けなかったことで、ミランは現在上位に位置するチームにも決して引けをとならない力を持っていることが証明された。これはミラニスタにとっては喜ばしいニュースである。

 ミランの選手たちはよく戦い、まさに体当たりでローマにぶつかっていった。特に後半などはミランがほぼゲームを支配していたように思う。ただ後半25分にDFアルメロが2枚目のイエローで退場。10人になったため、ドローを守ることに専念しなければならなくなってしまった。調子が良かっただけに、かえすがえすも残念だ。

 もう一つ特筆すべきは、先週に引き続き今週もミランが無失点で試合を終えたということである。これはまず何よりもGKディエゴ・ロペスの功績だ。この夏、レアル・マドリードからミランに来たディエゴ・ロペスは、イタリアサッカーに慣れるのに苦労し、おまけに2節のパルマ戦で負傷。なかなか活躍できなかったが、ここにきてついにその実力を見せ始めた。この試合でも、絶対モノのシュートからミランゴールを守ったシーンが少なくとも3回は見られた。

 ロペスだけではない。DF陣も明らかに成長をとげているし、FWメネスの躍進もすばらしい。開幕当初は出番もなかったのが、今ではミランの攻撃になくてはならない存在だ。また中盤にモントリーボが戻ったことで、攻守の連係がよりスムーズになり、チームにバランスと安定が生まれてきている。

 インザーギのオフェンスに関する構想はすでに固まっている。メネスがセンター、ボナベントゥーラが左、本田圭佑が右だ。本田の守備への貢献度は毎度素晴らしいが、攻撃において、最近はメネスのサポートに回ってしまうことがしばしば見られる。だからこそ本田は今年最後の試合でゴールを決めたかっただろうが、残念ながらそれは叶わなかった。

 とにかく2014年は本田にとって特別な年であったろう。ミランへの移籍はチームの混乱期と重なり、イタリアサッカーの洗礼はなかなかにハードだっただろうが、年の後半はその実力が花開いた。陰日なたのない努力とプレイで、新監督インザーギの信頼を勝ち取り、不動のレギュラーにもなった。

 しかし、次にリーグ戦が再開する時、本田はいない。アジアカップのため1ヵ月ほどミランから離れるのだ。本田が抜けたあとの穴を冬のカルチョメルカートでどのように埋めるか――それが現在のミランの緊急の課題である。

 クリスマスのあと、チームは12月27日にドバイに集合、この地で2015年にむけての冬期キャンプを行なう。このキャンプ中には、もしかしたら本田の代わりとなる選手の名前が明らかになってくるかもしれない。だがガッリアーニ副会長の言うとおり、今シーズン前半に本田がみせたような持続力とチームへの貢献度を持った選手を見つけるのは至難の業であろう。

 ロッソネロのユニホームを着た本田を次に見ることができるのは2月。しかし、本田不在の間のミランの様子もぜひみなさんに知っておいてもらいたいと思う。ミランの次のリーグ戦は1月6日のサッスォーロ戦になるが、その前のドバイキャンプ中には、世界王者となったレアル・マドリードとの親善試合も組まれている。インザーギにとっては、かつての監督で、自ら目標ともしているカルロ・アンチェロッティとの師弟対決である。休みの間もミランからは目が離せない。

 さて、ミランの試合同様、私のコラムも今年はこれで最後になる。次にお会いする2015年はミランと本田にとって、そしてもちろんみなさんにとっても飛躍の年でありますように! ミラノから愛をこめてBuon Natale(メリークリスマス)! そしてもちろん、Forza Milan!

ステーファノ・メレガリ(『Forza Milan!』編集長)●文 text by Stefano Melegari
利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko