7割が入社5年目までに「見極めがつく」

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声の大きさ、妻との関係、持ち物で男の将来がわかるものなのか。年間100人を超えるエグゼクティブの目利きをするカリスマヘッドハンターが解説する。

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調査概要/楽天リサーチの協力を得て、インターネットを通じて調査を実施。調査期間は2012年10月12〜15日。課長職以上の女性300人より回答を得た。

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■見極め時期――30代にはだいたい勝負がつく

私は年収2000万〜5000万円レベルの経営人材を日常的に目利きしている。彼らのキャリアを振り返ってみると、30代で勝負の大方はついているように感じる。もちろん、大逆転もありうるが、インプットの時期はこの年齢までに終わり、40代になると、もうポテンシャルでは評価してもらえなくなる。

調査で、もっと若いうちに勝負がつくとの回答を寄せた女性管理職の気持ちもわからないではない。ただし、若手のうちは圧倒的に経験が足りない。成長できる環境を与えずに「最近の若者はダメだ」と指摘する論調には違和感を覚える。

私はポジションと経験が人を育てると確信している。多くのグローバル企業が、入社数年以内に社員を海外に派遣する制度を始めたのはよい傾向だ。このほか、経営の傾いた子会社に出向して立て直しや清算など「しびれるような」体験をした場合、30代後半以降で大化けする可能性もある。退路を断ち、リストラ遂行などの厳しい局面を責任ある立場で経験し、他人の気持ちがわかるリーダーへと成長する人を私は何人も見てきた。修羅場を乗り越えることで一皮むけるのだ。

体当たりの経験を積んで大化けする人がいる一方、「伸びない人」は「自分が何に向いているかわからない」と、いつまでも足踏みしてしまう「キャリア迷子」に陥りがちだ。経験の場を失うことになりもったいない。つべこべいわずに目の前の仕事に真剣に取り組むべきだと思うが、「つべこべタイプ」が意外に多い。そのような人に限って目的意識の薄い資格取得などに走り、「いつか抜擢されるだろう」と白馬の王子様を待ち続ける。OJTに勝る学習はないのだから、まずは目の前の仕事に打ち込みたいものだ。

■行動――メモのとり方、うなずくタイミングでわかること

調査結果では、出世を見極めるポイントで「仕事の進め方」が圧倒的な1位を占めた。企業が生き残るためには個人の仕事の能力そのものにフォーカスせざるをえない時代を反映しているのだろう。

昔の日本的大企業では、社内の空気を鋭敏に読み、男性社員間の暗黙の掟を厳守し、失敗を最小限に抑える、といった戦術が出世競争には有効だった。10年後の組織図を推測し、「次の次の社長」に結婚式の仲人を依頼するといったことを、そつなくできる人が偉くなっていた。しかし現在は、優良企業ほどそのような戦術は通用しなくなっている。前例を忠実に踏襲するのではなく、環境変化に適応する能力こそが求められているからだ。

また、異動のパターンで出世の見込みが予想できた時代もあったが、今は本流と思われていたビジネスが縮小し、亜流だったビジネスが稼ぎ頭になることも多い。このような状況下では、環境変化に適応する課題設定力と柔軟性、どんな環境でも稼ぐことのできるビジネススキルを持っているかどうかが重要になる。

例えば、キャリアの相談に来る方の中でも、希望するキャリアに対してセールスポイントとなる実績を資料にまとめてくる(課題設定力)方や、日頃考えていないような領域の議論についても、こちらの質問を的確に読み取って対応できる(柔軟性)方には可能性を感じる。また、客観的に自己評価できるか否かも将来の成長に大きく関わる。一般的に、男性は自分を過大評価し、女性は過小評価する傾向がある。あるポジションが空いたときに、能力が足りないのに意気揚々と手を挙げる男性、ポテンシャルがあるのに「私なんかとても」と成長機会を失う女性。どちらも自己認識に欠けているので、仕事を任せる側からすると困った存在だ。

投げかけに対する「反応」も重要な判断ポイントだ。例えば、300人を対象に講演をした場合、目線や、メモをとったりうなずいたりするタイミング、姿勢などから、仕事ができるだろう人10人くらいはすぐ見当がつく。講演後の質疑応答でも、そんな人の質問は質が高い。明確な仮説があり、周囲にとっても関心が高いと思われる質問を選ぶのだ。

■話し方――口数は少なくてもいいが、声は大きく

部下は上司に「声が小さくて聞き取れませんでした」とは聞き返しにくい。だから上の立場になるほど、わかりやすく話す必要が高まる。相手が理解しやすいワーディングを選ぶセンスも必要だ。アンケートで、女性管理職が「声の大きい人」を評価しているのはそのためだろう。

話した内容が相手に理解される歩留まりは、3割程度だと思ったほうがいい。つまり、7割は聞き手の頭から抜け落ちてしまう。歩留まり率を上げることを考えると、聞き取りにくい声は論外なのだ。声の大きさに加えて、滑舌のよさ、明瞭な論理構成なども重要になってくる。

あるいは、声の大きさをバイタリティのバロメーターととらえているのかもしれない。声の小さい人でエネルギーレベルの高い元気な人はあまりいないからだ。

女性管理職が口数の少ない男性を評価している調査結果は面白い。饒舌に話せばいい、というわけではないのだ。例えば、オバマ大統領は絞り込まれた言葉でゆっくりとスピーチをしている。

論理構成が完璧でも聞き手の記憶に残らずに、話の内容が頭から流れてしまうこともある。改善するには小泉元首相の話し方も参考になる。論理に飛躍があっても、「感動した」「頑張った」などと共感を得られる短いフレーズで話すうえに、絶妙な間があって聞き手が考える猶予があるため、記憶に定着しやすいのだ。

もう一つ。調査結果のように、仕事ができる人ほど聞き上手なのは確かだ。加えて彼らは質問をするのもうまい。一問一答になることなく、的確な質問で会話の内容を掘り下げていくことができるのだ。女性たちが、「話を聞かないうえにビッグマウス」という昭和の肉食男子を否定した結果になったのは興味深い。

(プロノバ社長 岡島悦子 構成=大宮冬洋)