金利交渉 vs 借り換え おトク度比較

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あまり知られていない住宅ローンの見直し方の一つに「金利交渉」がある。金利交渉とは、現在借りている住宅ローンの金利について、銀行に金利をまけてほしいと交渉すること。最初にこういう条件で借りると契約しているのだから、それを変えてほしいと頼むのは、今までは禁じ手だった。しかし、ここ数年、金利交渉が成立するケースが出てきたのは、「銀行間の競争」が激化したためである。住宅ローン市場の競争が激しくなり、新規ローンの割引幅が大きくなってきたことで、新たなローンのほうが金利が低くなり、次々と別の銀行へ借り換えをする顧客が増えたのだ。

銀行にとって住宅ローンを借りてくれる個人顧客は、おおむね真面目に返済してくれる優良顧客である。よその銀行に借り換えられるよりも、金利を下げても残ってほしいと考える銀行が出てきたということだ。銀行にとってみれば、新規ローンの獲得と同様、借り換えローンの獲得、他行への借り換え防止は、営業上重要な事項。そこで最近では、「内緒ですけれど、割引幅を大きくしますから、借り換えせずに当行を引き続きご利用ください」と、銀行のほうから割引提案するケースも徐々に出てきている。

表のように、借り換えと金利交渉を比べてみると、金利交渉のメリットは、費用がかからず、提出書類も少なく手続きがラクなところ。金利を少しでも下げたい場合や、金利以外の返済方法の見直しもしたい場合は、借り換えのほうが融通がきく。

しかし、個人が銀行の担当者と金利交渉するのは、なかなか切り出しにくいもの。金利交渉には若干のノウハウが必要だ。「最近、金利が下がっているので借り換えを検討していますが、今借りているローンの金利はもう少し低くなるものでしょうか?」、あるいは住宅ローンを借りて数年たち、固定金利期間終了後に金利割引の幅が小さくなると、急に金利が上がってしまうので、「これからの金利の割引幅をもう少し大きくしてもらえないでしょうか」などと交渉するのである。

「金利を下げてくれ」とか「下げてくれるんだろうな」など高飛車な物言いはよくない。交渉の内容と立場をわきまえて、あくまでもこんなことできますかねぇ、とお願いするパターンが理想的である。それを受け止めるかどうかは銀行次第。銀行によっては、金利交渉に応じない場合も考えられるので「そんなこと無理ですよ」と言われてしまうかもしれない。金利交渉への対応は、銀行によって全然違うし、ローンを借りている人の属性によっても違うことは知っておこう。銀行が好きな属性というのがあって、これに当てはまる人は金利交渉に応じてもらいやすい。

(1)雇用が安定している人(大企業の社員、公務員など)
(2)年収が高い人
(3)余裕資金や退職金で銀行の投信や保険を買ってくれそうな人(実際に買わなくてもいい)

要するに、返済をキチンとしてくれて、なおかつ顧客になってくれる人、ということだ。このことからもわかるように、金利交渉に応じてもらえる可能性があるのは、「これからもキチンと返済してくれる優良顧客」。だから、「生活が苦しくて返済が厳しいので金利を下げてほしい」というようなネガティブな交渉は絶対にNG。

金利交渉はしてみる価値はあるが、ダメでもともと、と思ってチャレンジしてみることが大事である。金利交渉に応じてもらえなくても、気落ちせずに、次の手段である借り換えを検討しよう。金利交渉がうまくいかなかったからと放っておくのが一番まずいパターン。仕事のように締め切りを決めて、1カ月以内にアクションを起こそう。

(ファイナンシャル・プランナー 深田晶恵 構成=生島典子 図版作成=ライヴ・アート)