レコーディング時の音、そのまま伝える「ハイレゾ」 ソニー「ウォークマン」これで巻き返し図る
ポータブル音楽プレーヤー市場でアップル社の「iPod」や「iPhone」に圧されてきたソニーが、「High Resolution」(ハイレゾ)対応ウォークマンで巻き返しを図る。
いまや、インターネットからダウンロードした音源をパソコンに取り込み視聴する「PCオーディオ」は当たり前。ポータブル音楽プレーヤーもコンパクト化するとともに、スマートフォンの機能の一つとなりつつある。その一方で、「より質の高い音」を聴きたい人が増え、こうした層を引き寄せたいというわけだ。
ハイレゾ対応ウォークマン、音質でiPodを一歩リード
かつて、ソニーの「ウォークマン」といえば、世界的なベストセラー商品となり、一世を風靡した。しかし、音楽を取り込む媒体がカセットテープからCDやMDに変わり、さらにネットでダウンロードできるようになったことで、最近ではスマホがウォークマンを「代用」するようになってきた。
そうした中で、ソニーは2013年の年末商戦に向けて、新たに「ハイレゾ」対応ウォークマンを投入する。10月19日に「NW‐F880」シリーズを発売。12月上旬には上位機種の「ZX1」を発売する予定だ。
F880シリーズはオープン価格だが、16GBタイプで2万7000円、32GBタイプで3万円、64GBタイプで4万円程度を想定。ZX1はやや高めの7万5000円程度だが、データ容量は128GBと大きい。
これら新型ウォークマンは、ハイレゾ音源以外もハイレゾで楽しめるように、標準音源をハイレゾに変換する機能もあるという。
現在、アップル社の「iPod touch」の価格は、アップルストアで32GBが2万9800円、64GBが3万9800円と、ソニーのハイレゾ対応ウォークマンとほぼ同じ価格帯だ。
iPodはハイレゾ対応ではないので、音質ではウォークマンが一歩リードする形だ。
一方、ソニーはコンテンツの配信サービスでもハイレゾ対応を整えた。10月17日から、ウォークマン公式ミュージックストア「mora」でハイレゾ音源の販売を開始。当初、約600タイトル(アルバム)からスタートし、順次配信タイトルが増やしていく。
また、すでに実績のあるハイレゾ音源配信サイト「e‐onkyo music」や「OTOTOY」とも連携し、音楽ファンの「ハイレゾ」ニーズに対応する。
今まで聴こえなかった音や深い音色を豊かに表現
今回、ソニーが新商品で対応した「High Resolution」(ハイレゾ)とは、高い解像度の音質のこと。解像度は、1秒間にどれだけの音声を分解してデジタル化するかを数値化している。これが高いほど緻密に音を再現することができる。また「量子化ビット数」が大きいほど音の再現性が高いとされる。アナログからデジタルに変換する際、データを忠実に再現するからだ。
音楽CDのクオリティは44.1kHz・16ビットだが、ハイレゾ・オーディオはこれを超える96kHz・24ビットや192kHz・24ビットのクオリティをもつ。96kHz・24ビットの音源でも、そのデータ量は音楽CDの約3倍で、それだけ高い表現力をもつことになる。
音響・映像システムのヒビノは、「これまでは、アーティストがレコーディングしている音はCD化の段階で解像度が落ちていました。それがハイレゾによってレコーディング時の音を、そのまま伝えることができるようになったわけです」と説明する。
今まで聴こえなかった音や、楽器やボーカルの深い音色を豊かに表現でき、レコーディングスタジオやコンサートホールで聴いているかのような空気感や臨場感あふれるリアルな音を体感できる。
半面、そのために情報量が大量になるが、いまやCDの売り上げよりもネットでの販売・配信が上回る。「これからはハイレゾが主流になります」と、ヒビノはみており、同社も子会社のヒビノインターサウンドがiBasso Audio製のハイレゾ対応音楽プレーヤーを販売している。