ヤクルトのウラディミール・バレンティン選手が9月15日の阪神戦で、プロ野球新記録となる56号(そして57号)ホームランを放った。1964年の王貞治(巨人)、2001年のタフィ・ローズ(近鉄)、2002年のアレックス・カブレラ(西武)のシーズン55本塁打の記録を破ったのだ。

これまで王貞治選手の本塁打記録は、神聖なもので、破ってはいけないものとされてきた。だからローズもカブレラも、そこで止まった。しかし、バレンティンはやるだろうと私は思っていた。そんなことを気にしていないからだ。

残り18試合、バレンティンは記録を伸ばすことに専念するだろう。60号も視野に入ってきた。しかし、そのことが、わがベイスターズに福音をもたらすのだ。

9月14日時点で、本塁打1位はバレンティンの55本で、2位がブランコの37本だ。打率1位は、バレンティンの3割3分6厘で、ブランコが3割2分7厘の第2位。ところが、打点は、ブランコが124の1位で、バレンティンの117が第2位になっている。

なぜこんなことが起きているのかと言えば、答えは明らかだ。バレンティンがホームランを狙って振り回しているのに対して、ブランコは得点圏にランナーがいると、チームバッティングに徹しているのだ。実際、得点圏打率はバレンティンの3割4分0厘に対して、ブランコは3割8分5厘と圧倒的なトップを記録している。

つまり、このままバレンティンが本塁打記録更新を狙って、振り回し続けてくれれば、ベイスターズとスワローズの得点力の差が開いていく。スワローズの目標がバレンティンの本塁打記録に限られていくなかで、ベイスターズには悲願である最下位脱出という目標がある。それが実現できる可能性が高まってきているのだ。

残り試合はベイスターズが16、スワローズが18。ゲーム差4.5は、けっして安全圏ではない。しかし、バレンティンが本塁打記録にこだわってくれれば、2007年に大矢監督の下、4位になって以来の最下位脱出が近づいてくる。頑張れバレンティン