「正直な所、少し悩んだりしましたね」。2012年の秋を振り返って、コカ・コーラ ゼロのブランド戦略担当者は苦笑いを見せた。
 日本コカ・コーラのコカ・コーラ ゼロは2013年6月4日に発売6周年を迎え、累計販売60億本を超えた。そのビッグブランドもキリンビバレッジのメッツコーラやサントリーフーズのペプシスペシャルという「特保コーラ」の発売によって話題を奪われることとなったのが昨秋のことだ。

■ゼロコーラ市場の伸長と特保コーラの登場

 「カロリーを気にしてコーラから離れていく、20代後半から30代前半のコーラ好きの“ためらい”を取り外す」のがコカ・コーラ ゼロの狙いであると担当者は語った。
 コーラの主たる飲用層は10代で、年齢が高まると共に離れていく。そんな構造を変えたのが「カロリーゼロ」を売り物にしたゼロ系炭酸飲料だ。世間では「ゼロコーラ戦争」などといわれるなか、生産量が拡大していくことになった。
 しかし、2012年に状況が変わった。「特保コーラ」が相次いで発売され、目新しさと健康イメージでコカ・コーラ ゼロなど既存のゼロ系炭酸のシェアを脅かしはじめたのである。そんな環境の中で2013年に向けてどのように成長戦略を描くのかが検討された。
 リーダーの戦略の基本は「全方位戦略」であると考えれば、先行する商品に同質化戦略を仕掛け、特保コーラを上市するというシナリオもありえる。一方で「特保は“健康”が売り物だが、“健康”も“おいしさ”も両方あるのがコカ・コーラ ゼロなので、“健康”だけを訴求したくないという思いもあった」とも担当者はいう。どこに軸足を置くべきかが最大の論点となったのである。


■特保市場では戦わない!

 「ブランドの根本に立ち戻って“ゼロ”の定義をし直した」と担当者はいう。
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