「脱中国」の動きが盛んだ。きっかけは反日デモと暴動だが、より本質的には、中国が手軽に儲かる生産地ではなくなってきたからである。それは労働者の権利を無視することで成り立っていたビジネスの構造が変質したということでもある。

中国に進出していた中小メーカーの撤退が密かな「ブーム」の様相を呈している。ついこの間まで中国進出を煽っていたコンサルティング会社が主催する「撤退セミナー」が日系企業向けに盛況らしい(同業ながら何とも商魂たくましいと感心する)。

かくいう小生も以前は中国進出をお手伝いすることもあったが、2010年9月の尖閣諸島中国漁船衝突事件とその後の反日感情のあり様、中国政府のえげつないやり口(レアアース禁輸など)を見て、「もう中国は日本企業にとって安全な場所ではない」と痛感し、それ以降は東南アジアを代替案として薦めるようにしてきた。

今現在、中国からの撤退を検討している中小企業の多くはメーカーである。彼らが真剣に「脱・中国」を考えるようになったきっかけは間違いなく昨年の尖閣諸島国有化に伴う反日デモ・暴動であり、日系保険会社の「暴動特約」の新規引き受け見合わせ方針や最近の大気汚染なども彼らの不安や嫌気を後押ししている。しかし本質的理由は中国で利益を上げにくくなってきたからだ。

元々中国に進出してきた中小企業メーカーの大半は、安い人件費に惹かれて日本から工場を移設してきた。ところが中国での人件費が高騰を続けた結果、採算ぎりぎりになっているケースが多い。当初認められた税金などの優遇措置は既になくなり、しかも2008年の労働契約法の施行で、一定の条件を満たすと事実上の終身雇用が義務付けられるなど、労働者の権利が大幅に認められるようになった。

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