日本は頭で野球する!

いやー、なかなかの策士ですね、侍ジャパンは。6日に行なわれたWBC1次ラウンド最終戦・キューバ戦。この試合はハッキリ言えば消化試合です。日本はすでに2次ラウンド進出を決めており、勝敗は無関係。強いて言えば、2次ラウンドの初戦で当たる相手が台湾となるかオランダとなるかという差はありますが、対戦相手を選ぶ意味はほとんどありません。

ダブルエリミネーション方式の2次ラウンドは、ざっくり言うと「2敗したものから消えていく」ということ。最初の相手が台湾だろうがオランダだろうが、それで何かが決まることはありません。極端に弱い草野球みたいなチームがあるなら初戦で当たっておくメリットもあるでしょうが、2次ラウンドまで来て草野球などいるはずもありません。韓国に競り勝って出てくる両チームですからね。

つまり、このキューバ戦は極端な話、家で寝ていてもいい試合。

そこをどう活用するか。勇ましき侍なら全戦全勝を目指し、キューバを徹底的に凹ませるのが筋。しかし、かつてそれをやったアテネ五輪は、予選リーグを堂々1位で通過しながら、準決勝で敗れ、銅メダルに終わり「敗北の歴史」とされました。逆に、途中段階では負けまくったWBCは第1回・第2回とも最終結果が優勝だったことで「勝利の歴史」として記憶されました。過去の経緯を踏まえれば、野球界は「終わりよければすべてヨシ」を選ぶのは自然と言えるでしょう。

キューバ戦は文字通りの捨てゲーム。この試合で侍ジャパンは、各種の最終確認を行ないました。おおよそ「これはイケる」は確認できているのですが、「これはナイ」の確認はまだ済んでいませんからね。2次ラウンド以降は一手の誤りが即敗退につながります。「これはやったらアカン」をしっかり確認し、ワラにすがる希望的観測を断ち切ること。それがキューバ戦の最重要課題。そして侍ジャパンは見事にそれをやり切りました。世界3連覇を見据え、目先の勝敗に踊らされることなく、粛々と目の前の課題に取り組む姿勢…侍ジャパンは冷静沈着な知性派集団のようですね。

ということで、侍が断ち切った「迷い」たちを、6日のTBS中継による「WBC1次ラウンド 日本VSキューバ戦」からチェックしていきましょう。

◆「これはまだ使える」「これはもう使えない」「これはまだ使える」

かつてサッカー日本代表の監督をつとめたイビチャ・オシム氏にはこんな逸話があるそうです。自国のメディアが国内での民族対立などを背景に、「ウチの民族のあの選手を使え!」などと突き上げるものですから、「じゃそのとおりにやりましょう」という選手起用で敗戦。「これはナイ」ということをメディアたちに見せつけた上で、次戦は自身のイメージする編成で見事に勝利し、外野の野次を黙らせたというのです。

オシム氏の場合は、本番の重要な一戦でそれをやったということで、非常にリスキーな賭けではありますが、今回の侍ジャパンはノーリスク。別に結果がどうなっても構わない試合で「これはナイ」を確認できたのです。百利あって一害ナシの好判断。見事な仕分けに、僕の中のクラリオンガールも「グループAの2位じゃダメなんですか?」と意気揚々です。

●仕分け?:レジェンド始球式⇒もう残っていナイ
いきなり閑話休題みたいな感じですが、始球式とかそんな気合い入れる必要ナイですよね。1戦目は王貞治氏、2戦目はボビー・バレンタイン氏とWBCっぽい人選がつづきましたが、もうアテがありません。ここに出てもいいくらいのレジェンドが残っていれば、その人に監督頼んでますからね。

↓ということで、レジェンドを仕分けした結果、始球式をつとめるのはスヌーピーになりました!


王→バレンタイン→スヌーピーって並び何だよwwwww

「バレンタインスヌーピー」って、スヌーピー型のチョコレートみたいじゃないかwwwww逆に王だけ浮いてきちゃったぞwwww

いっそ「ソフトバンクのCMの犬」「千葉県のマスコットの犬」「スヌーピー」のほうが統一感あるわwwwww

あるいはスヌーピーが監督で、山本浩二さんが始球式ってパターンでもよかったwwww



●仕分け?:1番長野⇒これはしばらくナイ
強化試合でトライし、本人の調子が上がらないことで取り止めになった1番長野。山本構想の重要な部分でしたが、やはりナイということが確認できました。調子が上がればもちろんやぶさかではありませんが、それを待っている余裕はありません。守備から外す余裕はありませんので、打順を下げて調子が上がるのを待ちましょう。9回に放った内野安打は、キューバのショートでなければセンター前に抜けるタイムリーでした。復調は目の前です。

●仕分け?:2番鳥谷⇒たぶんナイ
途中交代で思い出したように試してみた2番鳥谷。「打たないけど出塁率はいい」という触れ込みで、山本構想の目玉となっていた起用。実際この試合開始時点では打率.000で出塁率.600という逆イチローのような状態でした(※イチローの場合は、すごい打つが思ったほど塁には出ない)。しかし、改めて確認できたのは「打ちよらんな」という現実。9回の5点を追いかける場面で、華麗に犠牲フライを打ちあげて1点を取ってきた際には、「打つなよ」「押し出し四球を狙えってサインないの?」「色気を出すな!」と我が家にもため(c)が広がりました。

●仕分け?:二塁鳥谷⇒よく考えたらナイ
鳥谷がよく塁に出るから慣れない2番をやらせてまで、先発で起用するというのが山本構想だったはず。しかし、上記?でその前提は崩れました。ならば二塁で使う必要もないのでは…?6回の守備でキューバの二盗を刺そうとした際、タイミング的にはアウトの送球をグラブに当ててポロリしたのは、慣れない動きだったからのはず。打つほうが上がってくるまで(もうマックス状態なのかもしれないが…)無理に任せる必要もないでしょう。

●仕分け?:エース田中⇒ナイっぽいので中継ぎに昇格
「田中、中継ぎに降格」という記事に噛みついて、ツイッター上の交流をキャッキャウフフ楽しんでいたマーさん。山本構想ではエース田中が決勝戦で先発する予定だったと思いますが、中継ぎは重要な役目であるという点では僕も異論がありませんので、チーム事情を鑑みて「中継ぎに昇格」してもらいましょう。キューバ戦では連打を浴びてアッサリ1失点を喫するも、2イニングで6奪三振と一流のチカラも示しました。「勝っている試合の中継ぎ(←重要!)」を立派に果たしてくれるに違いありません。

↓マーさんもツイッターで意見を表明しているぞ!


首脳陣:「いやもう自分中継ぎやで」
首脳陣:「他人事みたいに言ってるけど」
首脳陣:「もう自分『中継ぎの人達』に昇格やで」

●仕分け?:大隣⇒誰もいなくなるまでナイ
選んだのは誰かと問えば、最終的には山本監督なわけですが、どの辺に納得感を見出すかは難しいところ。沢村賞でも獲っていれば「あー涌井選んじゃったか」「もうあの頃とは別人だよ」「大事な場面では使うなよ…」と思いつつも、セレクト自体を非難することは困難です。しかるに大隣。万が一キューバ戦で好投でもしようものなら、ついうっかり次も使ってしまう危険性があっただけに、「まぁ無理に使うほどの理由はナイな」と確認できたことは大きな収穫でした。

●仕分け?:今村⇒同上

●仕分け?:澤村⇒桑田さんはナイと思っている
オフの間に鍛えた筋肉のバランスが整うのは秋なんじゃないかと、根強い疑問符が残る澤村。山本監督の厚い期待に応えて中国戦では好投を見せるも、所詮は中国戦ということで、どこかでハッキリさせておく必要がありました。ということでキューバ相手に投げてみたところ、高めの真っ直ぐは今の筋肉量ではキューバに通用しないことが判明し、無事に確認が終了しました。

↓解説の桑田さんは澤村に対してまったく信頼を寄せていナイ!
実況:「澤村投手の中国戦は圧巻でしたね」
桑田:「…そ、そうですね?」

実況:「三者三振、最速151キロでしたか」
桑田:「スピード“は”ありましたね」

桑田:「ほとんどド真ん中ですけどね…チカラで抑えるタイプですからいいんでしょうけど」
実況:「ではキューバのようなバッターに対しては?」
桑田:「そうなんですよ、そうなんですよ…ハイ」
桑田:「もう少し軽く投げてコース狙ったら、もっといいピッチャーになれると思うんですけどね」
桑田:「澤村クンの球威であれば何とか抑えられるかもわからないですが…」
桑田:「真ん中周辺はクリーンアップは打つでしょうね…」

(パカーン!先頭のフェルナンデスが初球の真っ直ぐを二塁打)

桑田:「真ん中高めですよね…。真ん中周辺はチカラで行っても難しいですね…」
桑田:「インハイだと詰まると思うんですよね…」

(パカーン!一死後、アブレウがタイムリーヒット)

桑田:「外は一番手が伸びるところなんですよね…」

「筋肉量で相手を上回ればどんな打者でも抑えられる」という信念を真っ向から否定してあげなさんなw

中国相手にはこの剛球はまだまだ通用するはずです!

問題は中国との対戦はもうないってことだけ!



●仕分け?:代打本多⇒使うならそこじゃナイ
解説の桑田さんが試合中に「本多クン…使わないんですかね…僕は本多クン使ったほうがいいと思うんですけどね…」と言ったのを、ワンセグか何かで聞いたのか。山本監督は6点負けている9回の一死一・二塁のチャンスに代打・本多を告げます。「え!?代打本多?」「代走の言い間違いじゃなく?」「しかも松田に?」と走る衝撃。ちなみに相手は左投手。この場面で本多は初球セーフティバントを試み、あわやファウルフライという大失敗。結果的に四球で出塁こそしますが、「そういうことじゃナイ」「松田が四球選んで代走本多ならまだいい」「最初から2番セカンド本多なら特に気にならない」と、コレジャナイ感が漂います。

●仕分け?:相川の一振り⇒ドジョウは絶滅してもういナイ
何やかんやで3点を返した侍ジャパン。そしてホームランなら同点という場面で打席が回ってきたのは、4番・阿部に交代で途中から出場していた相川。山本監督の脳裏にもオーストラリアから逆転のスリーランを放った強化試合が甦ったはずです。一方、茶の間は騒然。「柳の下に二匹目のドジョウはおらんよ…」「残ってる野手はいないの?内川は腰痛?」「あ、代打いけるの銀仁朗しかいない…ダメだ…」と諦めにも似た気持ちで、2011年ホームラン1本&2012年ホームラン1本の相川をそのまま打席に送り出してしまいます。「夢よ再び」という儚い希望・甘え・ご都合主義を断ち切る、ただそれだけのために…。

↓まぁ確認するまでもなかったかもしれませんが…


首脳陣:「ですよねー」
ファン:「ですよねー」
本人:「ですよねー」



以上のように「これはナイ」を確認できた結果、侍ジャパンは迷いなく2次ラウンドに進めることになりました。世間では「阿部・4番」などもナイんじゃないかと騒がれているとは思いますが、じゃあほかに誰がというのもナイわけです。ホームランなら一打同点の9回裏に4番・相川が打席に立ったという現実。それよりは打率ゼロ割でも、阿部ちゃんが行ったほうが納得感はありますからね。

そして、これらの仕分け作業の共通点にお気づきでしょうか。オシム氏の逸話が「メディアの要求に監督が応えた」ものだとすれば、今回はその逆パターンで「監督の要求に周囲が応えた」というものだということ。これで今後は監督のヤジが静かになりますので、「山本構想」というものを微粒子レベルに解体したうえで、コーチ陣が進言する編成にて試合を行なうことができるわけです。

あの名称・落合博満氏も言っています。投手起用を決めるのはコーチで、自分は当日まで誰が投げるのか知らないと。それでいいのです。山本監督は誰にもこなせない「レジェンド」という仕事で、チームに貢献してくれれば十分。記者会見、相手監督との挨拶、審判へのメモの読み上げ、テレビ対応、国民への顔役…などなどやることは山ほどあります。そしてそれは梨田氏・東尾氏レベルで背負えるものではなく、与田氏・立浪氏など到底力不足。高代氏・緒方氏にいたっては「誰?」からのスタート。レジェンド山本だからできる仕事なのです。

敗れれば指導者としての復帰の目を絶たれることを承知で、この難役を引き受けたレジェンドに敬意を表しつつ、試合中はメモの読み上げに集中してもらえるよう、環境を整えていくことが重要。この試合で得た教訓をもとに、仕事のいろいろな部分を「やらナイでください」に仕分け投入しながら…。

↓ちなみに、キューバ側が仕分けが不十分でこんな状態に!


長げぇよwwwwwwwwwwwww

名前を短くするか、フォントを小さくしろwwwwwwwwwww

背中に特大アーチ描くなwwwwwwwwwww

山本構想は改めて捨て、調子のいいヤツで普通に回せば心配無用です!