書店では売ってないサイバーコネクトツー手帳。同社のファンならずとも要チェックだ。

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いよいよ年の瀬も押し迫って参りました。この時期、都市部の大型書店では「手帳フェア」「カレンダーフェア」が定番イベントです。

もっとも、スマートフォンやウェブサービスなど、スケジュール管理はデジタルに移行しちゃった人も多いかもしれません。僕もその一人で、ここ数年はiPhoneアプリの「さいすけ」と、Googleカレンダーを同期させて使っていました。ほら、世の中はクラウドですから。情報が散らからなくて、便利なんですよね。

そんな中、デジタルコンテンツの梁山泊みたいなゲーム業界で、オリジナル手帳を制作して、昨年から販売しはじめた会社があるんです。それが福岡市に本社を構えるサイバーコネクトツー。「.hack」シリーズや、「NARUTO−ナルト− ナルティメット」シリーズなどを制作しているゲームスタジオです。

この手帳、書店やゲームショップでは売ってません。自社通販サイト専売なんです。にもかかわらず口コミで広がり、昨年度はめでたく完売。今年もそろそろ売り切れ間近ということで、入手してみました。

さっそく届いた「CC2(サイバーコネクトツー)手帳2012」をチェック。大きさはA5版サイズで160ページ。机の脇に置いたり、鞄に入れて持ち運ぶスタイルです。外側はビニールカバーで覆われていて、見開きの左側は1週間分のスケジュール記入欄、右側はメモ欄となっています。たっぷりメモ欄があるので、イラストメモに良さそうですね。作りもしっかりしていて、使っているうちにページがバラバラになったりすることもなさそう。ビニールカバーの差し込み領域も余裕があって、イベントチケットや、へそくりの一万円札を忍ばせておく、などにも良さそうです。会社の手帳だけあって、同社の歴史や開発タイトル一覧なども紹介されています。

もっとも、そんな常識的な用途では収まらないのが、この手帳のユニークなところ。なんといってもビックリなのが、年末年始とお盆休みの時期、あわせて8日間が公休日と記されているところです。2011年は仕事納めが12月27日で、年明けは1月5日からとなっています。こんなふうに、会社の休みを世間一般に公開しちゃうって、おもしろいですよね。だってほら、ゲームスタジオっていうと聞こえは良いですが、メーカーあってのスタジオですから。発注元からやれと言われれば、休日を返上してでも働くのが現場のルール。特にゲーム業界のようなクリエイティブ産業では、この傾向が顕著です。それを堂々と「休みます」宣言しちゃっているところが、かっこいいなあと思うわけです。

ちなみに巻末には、同社で働く上での「お約束」が9個、記されています。中でも目を引くのが、「泊まり作業は禁止で、毎朝9時に出社」というところ。これ、見方を変えれば経営者の社内外に対する「マニフェスト」だったりするわけですよね。弊社はこういうルールです。だから優秀な志望者は大歓迎です、という。もっとも、こうした情報を世間様に公表するのって、情報がネットを通してすぐに広まっちゃう昨今では、なかなか勇気がいるんですよ。でも、ちゃんとワーク・ライフ・バランスをとってこそ、おもしろいゲームが生まれるというもの。ゲーム業界に限らず、サービス産業や休日出勤が恒常化する中、ぜひ多くの企業でも見習っていただきたいところです。

また見開きの右上には、同社代表の松山洋氏による「アクセル・フレーズ」が記されています。▽足を組むな、だから背骨が曲がるんだ。▽自分の"敵"くらい、自分で育てる。情報は与えた人間に集まる。▽"終日"はNGワード。日時を明確に−−などの熱いメッセージがずらり。いやー、体育会系だなあ、と思って流し読みしていたら、「言っておくが"体育会系"は大っ嫌いだ。は?"あいさつ"することが別に"体育会系"じゃないでしょ?」という、きつい一言も。ははっ、スミマセンでした松山社長! こんな風に背筋がシャンとする熱い名言が62個も詰まっています。

もう一つおもしろいのが、公式ブログで手帳の使い方が紹介されているところ。同社の社員のみならず、関連企業の方々も含めて、さまざまな使い方が写真入りで見られます。メモ欄を三等分して使い分けたり、ペンホルダーを付けたり、シールで色別に項目を分類したり、中には自分流の「アクセル・フレーズ」を追加したり。いろんな使い方があるんだなあと思わされます。そもそも、他人の手帳をチェックする機会って、あんまりないですよね。このブログをチェックするだけでもオススメですよ。

それにしても、なぜ手帳を販売することになったのか。広報の柴山ゆかりさんに質問してみました。教えて、柴山さん!

「実はこの“CC2手帳”は毎年、サイバーコネクトツーのスタッフ用に作られていたのです。基本的に今までずっと、弊社代表の松山自身が使いやすいように細かくレイアウトの指示を出し、必要な情報をまとめて、長い年月をかけて現在のフォーマットになった商品です。
そのため、サイバーコネクトツーの設立記念日や年末年始の公休、弊社の開発タイトル情報の紹介も掲載しています。
毎年、実際に使用している弊社スタッフはもちろんのこと、業務でご一緒させていただいた業界関係者にお渡ししていたのですが、“非常に使いやすい”という声と、お客様から“欲しい”という声をいただきましたので、その声にお答えしようと昨年から販売を開始しました」

なんと、販売まで時間をかけて作り込まれたんですね。ではオススメのポイントは?

「ムダを無くして持ち運びしやすい重さにしたり、右ページのメモ欄を大きくして使いやすさにこだわったり、機能性を重視したりと、じつはシンプルなこだわりがいろいろとあります。
その中でも他の手帳と一番異なる点は、週間スケジュールのページ右上に掲載している「アクセル・フレーズ」と称した松山洋の名言集です。こちらは松山洋がゲームクリエイターとして培い、常日頃サイバーコネクトツーのスタッフにも言っている、もの作りに対するこだわりを表現した言葉です。
サイバーコネクトツーがこれまで生み出してきた開発タイトルや、映像制作などでの、もの作りに紐づくフレーズを紹介しています。
この「アクセル・フレーズ」からサイバーコネクトツーの温度を感じていただけたら嬉しいです」

やはりそこでしたか! 確かに「社風」がビンビンに伝わってきますよね。でもでも、社員の使用率ってどれくらいなんでしょう? 机の隅にしまいっぱなしとか......。

「松山はもちろんのこと、おおよそ9割以上のスタッフが使用しています。
スケジュールをデジタルで管理しているスタッフもおりますが、それぞれの利便性を活かしてCC2手帳と併用しているスタッフが多いです。
中にはスタッフ本人だけでなく家族も使っています、というスタッフもいるほどです」

えーっ!? ホントですか。確かに人によって使い方に個性が出そうですよね。ぜひ松山社長の手帳もご紹介いただきたいところです!

というわけで「ゲーム開発を通じて生まれた、毎週異なる『松山洋のアクセル・フレーズ』も掲載されたCC2手帳2012。松山はもちろんサイバーコネクトツースタッフが自信を持っておススメする手帳です! ぜひ宜しくお願い致します。」と大プッシュされてしまいました。しばらくデジタル派だった筆者ですが、来年は同社の方々を見習い、用途に応じて使い分けてみようと思います。

ちなみに、いろんな会社で自慢の手帳を作って、展覧会などを行ったら、おもしろそうですよね。経営者の皆さん、ぜひご検討をお願いしますっ!
(小野憲史)