戦闘では最大100人ものプレイヤーが入り乱れ、一斉にクリスタル鉱床に群がる。これだけの数のプレイヤーが、一斉にわーっ! と動く混沌っぷりを想像してみてほしい
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スクウェア・エニックスの「MONSTER×DRAGON」が面白い。
通称「モンドラ」。ブラウザで遊べるシミュレーションゲームで、100人ものプレイヤーがカードバトルで一斉にぶつかり合う。ひ、100人!? カオスすぎるだろ! と思ってはじめてみたら、案の定予想をはるかに上回るカオスっぷりだった。100人がそれぞれ手に駒を持って、「せーの!」で一斉に指す将棋みたいな感じ。もう、カオスすぎてカオスすぎて何がなんだか。
ただ、紹介していいものかどうか、ちょっと迷うんだよなー。というのも、これ、いわゆる「カードガチャ」タイプのゲームなのだ。

ゲーム自体は無料。ただしバトルに使用するカード、これが有料。もちろん無料で引けるカードもあるけど、レアなカードはやっぱり有料の方が出やすい。お値段は1枚100円(300円3枚のセットと、600円6枚のセットがある)で、ムキになって引きまくると、月末にどばっと請求されて大変なことになる。
だけど困ったことに、面白いんだよこれが! だから実際に遊ぶかどうかは、レビューを読んだみなさんで決めてほしい。うっかりハマっても当方では一切責任は負いかねます! ……ってそんなゲーム紹介ねえよ、と思ったけどまあいいや。

舞台となる大陸には、赤、青、黒、緑の4つの国があって、戦闘ではこのいずれかに所属して戦う。狙うは大陸のあちこちに眠る、パワーの源「クリスタル」。1回試合は25分間で、最大で25人×4勢力、つまり100人が参加。途中で他勢力のヤツらとぶつかり合ったら、あらかじめ組んでおいたカードデッキで白黒をつける。最後に最も多くのクリスタルを持っていた国が勝利。

見た目は将棋っぽいけど、動かせる駒は自分ただひとつだけ。プレイヤーは指揮官ではなく「駒」そのものになって戦う。100人が100人、それぞれの意志で動いてるから、先がまったく読めない。うまく連携が決まって、孤立した敵をフルボッコ。気持ちいい。かと思うと、いつのまにか敵に囲まれてて自分がフルボッコ。超くやしい。やられると持っていたクリスタルを奪われ、本拠地まで戻される。ちくしょーまた前線まで行くのかよー、っていつの間にかムキになってる自分がいる。

自分の番が回ってくるのは30秒に1回。最初は「待ち時間がかったるいなー」と思ってたんだけど、慣れてくるにつれてそうでもなくなってきた。
他の99人が好き勝手動いてる中で、じゃあ自分はどう動くべきなのかを考える。あっちのクリスタルを取りにいきたいけど、あっちで苦戦してる味方も助けたい。よし、こっちだ! と思って動くと、他のみんなは逆方向へワラワラワラ。ギャーッ、そっちが正解か! 急いで追いかけたいけど、次に動けるのはまた30秒後だ。
失敗すれば貴重な30秒がまるまる無駄になる。だけどうまく連携できれば、脳汁がどぱどぱ出るくらい楽しい。かったるいなんてとんでもない。頭の中は常にエンジンフル回転だ。

戦闘が終わると、自分の国の順位に応じてギル(お金)が支払われる。1位なら350ギル、4位だと200ギル。夜限定で行われるランキング戦だとこれが倍になる。
100ギルで1回、無料のカードガチャが引けるので、勝っても負けてもカードが増える。どんどん戦って、どんどんデッキを強くしていこう。まあ、いくらデッキに凝ったところで、囲まれてボコボコにされたらひとたまりもないんだけどな!

カードの入手方法は最初に書いたとおり、無料のギルガチャと有料のコインガチャがある。さすがにレアカードは有料限定……と思っていたら、ランキング戦で勝つと引ける「ブレイブガチャ」というのもあって、こっちなら無課金でもレアカード入手のチャンスがある。プレイヤー同士でカードを売買することもでき、無課金のユーザーにも、ちゃんとすべてのカード入手のチャンスが与えられている。
それにさっきも言ったけど、大切なのはデッキの中身よりも戦場での立ち回りだ。無課金ユーザーはただボコボコにされるだけ――といったこともなく、このへんも課金者が有利になりすぎない絶妙なバランスだと思う。

えっと、ハッキリ言っちゃうと、ものすっっっごくユーザーを選ぶゲームです。戦闘中は25分間パソコンの前にぴったり貼り付いてなきゃならないし、30秒ごとに手番が回ってくるから、ながらプレイにも向かない。ブラウザゲームって言うからてっきり1回5分くらいでサクッと遊べるものだと思ってたら、ガチガチのゲーマー向けシミュレーションだったでござる!

今時こんなゲームデザイン、あり得ないよなあ。だけど、その予想のナナメ上っぷりが同時に嬉しくもあった。
ただお金が儲けたいだけだったら、ゲームデザインなんかどこかから引っ張ってくればいい。「トラビアン」でも「マフィアウォーズ」でも「FarmVille」でもお好きなものをどうぞ。あとはファンタジーでもロボットでも三国志でも、適当にキャラをのっければオリジナルゲームのできあがりだ。
だけど「モンドラ」はそういう安易な道を選ばなかった。あえて間口を狭めてでも、ちゃんと「ゲームを作ろう」って気概が伝わってくる。他のゲームにない、「モンドラ」にしかない面白さがある。
家庭用ゲームメーカーは、今後もどんどんソーシャルゲーム、ブラウザゲームに参入すればいいと思う。そんで今までどっかで見たようなゲームばっかり作ってきた連中に、ホンモノのゲームがどういうものか、思い知らせてやってほしい。

最後に一つだけ、先日とうとう1000円だけ課金してしまったことをここで告白します。この手のゲームではずっと無課金一筋だったけど、「こんなハチャメチャなゲームになら、ちょっとお金を出してもいいかな」って思っちゃったんだよー。反省はしてないけどな!
(池谷勇人)