左から米光一成さん、飯田和敏さん、麻野一哉さん。仲良し3人組だ

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「今日のタイムスケジュールってどんな感じですか?」
「えー、ちょっと待って、いま考えるから。えーっと、まず最初に飯田さんが1時間やって、そのあと休憩して」
「それ時間おかしない?」

開場前に楽屋を訪ね、今回の流れを聞くと、その場で考えだす米光一成さんと麻野一哉さん。あれ? 気にしてなかったのか。もうこのイベントも7回目だから、みんな余裕なのかな。

「なんとかソーウル、イェー!」
楽屋からリハ中の壇上をのぞいたら飯田和敏さんがギター片手に歌っていた。
あ、この光景はいつもどおりだ。

12月21日、阿佐ヶ谷ロフトA。「夜のゲーム大学7」スタート前の光景。
このイベントはゲームクリエイターの飯田さん、麻野さん、米光さんの3人がそれぞれ行うゲーム講義を、お酒を飲んだり、牛タンカレーを食べながら(うまい!)ぼんやりまったり見るイベントだ。。
前回の「ゲーム大学6」は香山哲さん。前々回の「ゲーム大学5」は俺がレビューしているので詳しくはコチラをどうぞ。


1限目は飯田さんから。
日本未来科学館に常設されている「アナグラのうた」(これもエキレビ!で小野憲史さんがレビューしております)の裏側を見せる「アナグラのうら」。

登場してしょっぱなから興奮している飯田さん。なぜかというと、このイベントの6日前、12月15日、飯田さんが演出を手がけた「アナグラのうた」が第15回文化庁メディア芸術祭エンタテインメント部門優秀賞を受賞したからだ! 拍手!

どういう賞なんだろう?
「もう一生食いっぱぐれない、上がりですね!」と飯田さん。
いいなあ!
2009年の第13回文化庁メディア芸術祭でも「ディシプリン*帝国の誕生」でノミネートされていたんだよね。今回とうとう受賞!
そしてパワーポイントに映し出される「祝ってぇー!」の文字。わざわざこんなページ用意していたとは。
おめでとうございます!

拍手!
「うおー、アリーナ席ー! イェーイ!」
拍手!
「二階席ー! イェーーーイ!」
完全に気持ちよくなっている飯田さん。「うーん、今日の趣旨はだいたい終わっちゃったな」だって。俺もそれでいい気がしてきたよ。

「アナグラのうた」のサイエンスコミュニケーター、ミチュハシ(三ツ橋)さんをゲストに迎え、ようやく授業「空間情報科学の展示」のスタートだ。

「情報共有パワー」とは、情報を共有して、なんらかの力にしていこうということだ。
東日本大震災でツイッターが情報交換の場になっていたことをひとつの例として上げていた。家に帰れない人たちが、現在の交通状況や、受け入れ先の体育館などの情報をシェアしあっていた。いろいろ流れてくる情報ツイート。慎重にソースを確認しながらRTしていたっけ。

三ツ橋さんは「いまの科学の限界が3.11でつきつけられたのかもしれない。でも科学は大丈夫。使う人の心持ち次第だし、幸せな方向に取り組めるはず。なかったら生きてはいけないですから」と語っていた。震災で日本未来科学館が閉まっているとき、クローズドな場所で待っているだけではダメだと、みずからいろいろな場所に行き、放射能についての話をしたそうだ。

「そうだよね。僕も昨日電気止められたんですけど」と飯田さん。えっ? また急におかしなことを!
「食いっぱぐれてる。ぜんぜん上がってないなあ」と勝手に心配をしていたら、「ポストを開けられない病」にかかってしまったらしい。あるある。だから振込できなかったのね。
「暗くなるのもキレイだからいい。寒いのも布団にくるまればいい。電気はいらないと思っていたけど、ふとフェイスブックのアプリ『Mafia Wars』を思い出しちゃったんだよ。僕のふるさとのように懐かしかった。帰りたかった……」。
まるでいい話のように語っている。いや、おかしい!
「電気がきたときはうれしかったよ。科学って大事だね」。え、えぇー! 締めちゃったよ。

相変わらず飯田さんはなにを言っているかわからないので、実際に「アナグラのうた」に行って確認してくるしかないなあ。

・1月8日 東京都写真美術館「見えない世界の見つめ方」
・1月15日 未来館ワークショップ「アナグラの世界の会議」
・1月31日 未来館「空間情報科学シンポジウム」

来月のスケジュールはこんな感じ。


2限目は米光さん。
立命館大学映像学部で実際に行なっている「インタラクティブコンテンツ制作実習」はどういう授業なのかを紹介。授業の裏側だ。
「夜のゲーム大学5」のときは、いきなりお坊さんのお経ではじまっていたけど、あれ、今回はまともだ。

米光さんの授業コンセプトのひとつに「評価、採点は完全にオープンである」というものがある。これは学生からは不評らしい。でも、米光さんは「いま失敗したかどうかわからないゲームはいやだ。マリオがジャンプできないから穴に落ちたなら、次はちゃんとジャンプしようと思うでしょ?」とゲーム的に解説。良いゲーム脳!

これはいいなと思ったのが、毎回授業スタンスを、タロットカードの大アルカナで説明をしていること。たとえば「魔術師」のカード。魔術師はタロットの1番目、はじまりのカードだから、スタートの部分をしっかりと意識する。
「塔」のカードはアクシデントの暗示。このときは「今日は、ぜんぶぶっ壊すから」と言って、学生たちにダメ出しをする。「今日はダメ出しをする」という設定があると学生たちは傷つかない。
「素で怒るのいやなのよ。それで次の授業から来なくなっちゃう子もいるからさ」と米光さん。

エキレビ!では米光さんの原稿は俺が編集として見ているんだけど、たまにどうやってダメ出しをするか迷うときがある。これからは毎回塔のカードを引いてから言うことにしますね。

授業後半は質疑応答。ステージの端では飯田さんがギターを弾いていた。なぜだ。
以前エキレビ!で米光さんと対談した「もじぴったん」の中村隆之さんから、「やる気がなかったり、あってもできない学生たちをどう救うか」という質問。
学生は場の雰囲気に敏感だから、クラスに5人やる気がある人がいれば、みんなやるようになる。いかに、その5人を先に見つけ、イキイキとしたクラスにするか。これは今後の課題でもあるそうです。

米光講義も、もうそろそろ終わりかなーと思っていたら、女の人が米光さんに向かい「キスして」。「えええ!」米光さんもあわてる。

「キスして」
「ええぇ」
「キスして」
「うわぁぁ」
「じゃあなにならいいの?」
「預言してあげる。預言詩『ウロボロスの犬』!」。

えええ、なんかはじまったぞ。

重低音が会場に鳴り響き、

「お風呂入ってぶくぶくやったらー」
「ゲーミフィケーションという名のもとでー」

なんだこれ……。これが飯田さんの言っていたポエトリーリーディングだろうか?

「本日、秘密結社マルクトを結成する!」。

「夜のゲーム大学5」では飯田さんが歌って、今回は米光さんかあ。なんのイベントだっけこれ。

って、「秘密結社マルクト」で検索したらフェイスブックを発見! どうやらイベントジャックされていたみたいだ。ぜんぜん秘密じゃなかった。



最後は安心と信頼の麻野さんの授業。
12月17日に発売した「真かまいたちの夜11人目の訪問者」記念、制作スタッフが集結して、ゲーム制作の裏側を披露。

エキレビ!インタビューシリーズでも記憶に新しい、開発プロデューサー、中嶋康二郎さんとシナリオディレクター、伊東幸一郎さん。それにディレクターの醍醐頼希さんの4人での登場だ。
麻野さんが紹介しようとしていたけど、スタッフの下の名前を覚えていない。けっきょくみなさん自分でやっていました。

麻野 分岐っていろいろあるんですよね。今回エキレビ!っていう……なんだっけ、あれ。
伊東 レビューサイト。
麻野 そうそう。

案の定麻野さんはエキレビ!を覚えていませんでした。あなた、うちのライターでしょ!

チュンソフトで過去発売されたサウンドノベルの分岐システムについてまず解説。文章を読んでいくゲームにどうやってシステム性をだすか、ゲームデザイナーとしていちばん気にしていた麻野さん。サウンドノベル第一作「弟切草」のイメージはあみだくじ。ストーリーのはじまりがいくつもあり、エンディングまでの間を分岐でつないでいく。
これはいつも麻野さんが「地獄だった」と言っている。たとえば、ヒロインの奈美がトイレに行ったと思ったら、次のシーンで、なぜかまだ居て「トイレに行きたい」みたいなことになりかねない。あみだくじのようにジグザグに分岐してしまうから、ストーリーのつじつま合わせが大変なんだって。

「かまいたちの夜」は木の根っ子を逆さまにしたような感じで、一度分岐したらもう元の話に戻ることはないので、違う話を思い切って書くことがきでる。
「街」でいちばん頭をひねったのが、自分の行動が、他人の結果に反映する他人分岐。「428」は何人もの主人公がひとつの事件に収束していく群像劇。「24」をやりたかったと伊東さん。
「忌火起草」を担当した中嶋さん。「弟切草」と同じくあみだくじシステムのようで「二度とやらへん!」と言っていた。そんなに大変なのか……。

最後は「真かまいたちの夜」が当たるプレゼントコーナーだ。
事前に配られていた抽選用紙に記入すると、「真かまいたちの夜」のPS3版、PSVita版がそれぞれ2本ずつと、ポスターが9枚当たる。会場にいるエキレビ!ライターには誰も当たらなかった(とみさわ昭仁さん、tk_zombieさん、島影真奈美さん、芹沢たすく、俺)。ガーン。

「かまいたち」にちなんで全身タイツの青人間が登場! 当選者にプレゼントを配っていた。
その正体はゲーム音楽制作 株式会社ノイジークロークの川越さん。お、「真かまいたち」のサウンドトラックが出るらしい。(調べたら座談会発見。青人間もいる!)。


「ゲーム大学」を観るのもこれで4回目。俺は2、3歳のころからずっとゲームで育ってきて、3人の作品でも遊んでいる。
そのゲームデザイナー3人の話をこんな定期的に聞けるイベントもそうそうないんじゃないか。半年に一度のお祭りイベント。さて、「夜のゲーム大学8」はいつ開催かなあ。
(加藤レイズナ)