米「ロサンゼルス・タイムズ」誌のウェブサイトは9月19日、「経済大国・中国、わき目も振らずに突き進むのは怖いから」と題した記事を掲載した。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。

 世界の国々が衰退することを恐れて必死にもがいているなか、中国の「年平均経済成長率10%」は誰もが眼を見張るものである。今や中国の大都市は新車や高層ビル、プラダ、グッチ、カルティエと言った高級ブランドで溢れている。

 言ってしまえば、中国はちょうど坂道を勢い良く登っているのだ。しかし、中国人は自分たちを取り巻く世界をどのように見ているだろうか。彼らの眼には、世界は少し違って映るようである。彼らが懸命に突っ走っているのはどうやら、貧乏を恐れているからなのだ。

 中国の指導者たちは大きな勝負に出ている。自分たちの力で雇用の機会を増やし、労働者の収入の増加と農村部の貧困層の減少を目指している。

 しかし13億人もの人口を抱える国にとって、極端な貧困の格差を改善するということは、口で言うのは簡単でも、実行することは極めて難しい。経済専門家の樊綱氏は「経済の安定した発展を保つためには、近い将来、年平均の経済成長率を少なくとも8%程度に維持しなければいけない。貧困な農民階層が存在しない裕福な国家を作ると言う長期的な目標を実現するために、20年以内に1.5億の仕事や雇用を創出しなくてはいけないのだ。そう、なんと1.5億も。」

 また、樊綱氏はこのようにも話している。「新しい働き口がなければ、私たちは社会の一大危機に直面することになるだろう。この不安こそ、中国がGDPで長年のライバルである日本を超えた時、得意満面にならなかった理由である。中国人は世界の大国に仲間入りしたからといって、そこから利益を得ることなど望んでいない。むしろ、自分たちを貧困な発展途上国として見て欲しいと望んでいる。私たちはまだ裕福になった訳ではないと皆口を揃えて言っているのだ。国際通貨基金(IMF)が公表したデータによると、2009年の中国の1人当たりのGDPは4000米ドルにも届かず、アメリカの12分の1にすぎない」

 中国が貧乏だと言っているのは、もちろん人民元の値上げ要求に対抗する為でもある。海外投資を行なう企業をもう援助しない為にも、海賊版に対する外国の圧力に屈しない為にも必要な作戦である。少し前まで極端に貧乏だった国は今、自然資源や技術や富といったものに囲まれ、世界の中で、全力で奮闘している。そして、「新参者」として努力する姿こそ中国の真の姿である。

 中国を大国と見ている人は多いが、中国人自身はそのようには考えていなかったのだ。

 樊綱氏は、「中国は自分たちが困難な状況にあると認識している」と述べた。中国人は、自国の経済効率は高くないことも、格差が大きく、今はただ勢いに乗って突き進んでいるだけだということもきちんと分かっている。この勢いが衰えれば、正真正銘の困難が訪れることは間違いない。(編集担当:米原裕子)



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