ユーロ2012予選の初戦(対ベラルーシ)を3日に控え、パリ郊外クレールフォンテーヌで合宿中のフランス代表。1日には、ローラン・ブラン新監督の“公約”通り、ジネディーヌ・ジダン氏が“1日コーチ”として練習に合流した。

 レキップ紙によると、W杯の悪夢から早く脱却して新スタートを切りたいレ・ブルーにとって、ジダン氏の参加は期待以上の効果をもたらしたようだ。練習を終えた選手たちは興奮の面持ちで「代表でしか味わえない体験」(FWオアロ)、「魔法のような時間」(DFラミ)を語った。

 現在の代表メンバーで、現役時代のジダンといっしょにプレーしたことのある選手はマルダ、メクセス、サアなどごく一部。記者会見で「ムッシュー・ジダン」と耳慣れない敬称で呼んだママドゥ・サコなどは、98年W杯制覇のときにはまだ8歳だったのだから、初めて間近で見る「カリスマ」に胸を躍らせたのも無理はない。

 選手たちは練習前のミーティングで98〜2000年のフランス黄金時代のビデオを鑑賞し、ジダン氏のスピーチに耳を傾けた。「あれだけの大スターが自分のビデオを見せながら照れているのが印象的だった」(DFクリシ)、「彼が心から話しているのを感じた」(オアロ)、「僕らの頭にもすんなり理解できた」(ラミ)と寡黙なスターが少ない言葉で話すひとつひとつが胸に響いたようだ。

 ジダン氏はその後、選手たちと同じ練習着でトレーニングにも参加。ミニゲームなどで汗を流し、集まったおよそ300人のファンを前に、まだ衰えていないテクニックを披露した。

 「勝利を重ねて強くなるしかない」というジダン氏のメッセージは、選手たちに意識のうえで大きな収穫をもたらした。MFヴァルブエナは「チームの再建は、ピッチでのパフォーマンスを通じてしかあり得ないということをあらためて実感した」と語った。ラミに至っては、「僕らがここにいるのは、欧州の王者に、世界の王者になるため。夢をもたないと」と“ジダン効果”が早くも意識に刷り込まれたことをうかがわせた。