W杯開催中の練習ボイコットを中心とするフランス代表の一連の不祥事について、フランスサッカー連盟(FFF)が調査団を設置して7月16日から真相の究明に当たっている。8月2日には、ボイコットの“首謀者”と見られるパトリス・エヴラ(マンチェスター・ユナイテッド)、ウィリアム・ギャラス(元アーセナル、移籍先は未決定)をFFF本部に迎え、聴聞会が行なわれた。他の選手たちやドメネク監督はこれ以前に電話で聴取を受けていた。

 ル・パリジャン紙によると、両選手はボイコットの原因のひとつが、2年間におよぶ監督と選手の関係悪化にあると証言した。ギャラスは「彼(ドメネク監督)は主将以外ほとんど誰とも話すことがなかった」と語った。選手たちはW杯直前の強化試合で中国に敗れたあと、戦術の見直しを求めていた。しかし「監督に歯向かった者は干される」という空気があった。ギャラスの言葉を信じるなら、その犠牲を最初にこうむったのが、初戦のスタメンから外されたフロラン・マルダ(チェルシー)だったと推察できる。

 主将から外されたアンリとギャラスには、もはや発言権はなかった。選手たちは不満を内側にため込むこととなり、ついに耐えきれず爆発させてしまったのが、メキシコ戦のハーフタイムに監督を罵倒したニコラ・アネルカ(チェルシー)ということになる。

 アネルカの追放を知らされたあと、エヴラやギャラスは監督との話し合いを求めていた。しかし彼らは、FFFのエスカレット会長(当時)とホテルの廊下でこれまでになかったほど「朗らかに」歓談するドメネク監督の姿を見て、嫌悪感を抱いたという。ギャラスは前会長についても、「控え室に来て我々を励ますことは一度もなかった。初戦のウルグアイ戦の前ですら来なかった」と不満を語っている。

 こうして、「現実から切り離され」、冷静な判断力を失った選手たちが態度を硬化させ、抗議のボイコットへと向かう。いまでは「愚かな行為だった」と認める2人は、次戦のノルウェー戦(8月11日、親善試合)のメンバーからW杯に出場した全員を外す、としたローラン・ブラン監督の決定を「正当」と受け止めている。

 調査団は4日に聴取を終えて報告書をまとめ、翌日にデュショソワFFF新会長に提出する。6日には緊急理事会が開かれ、今回の“事件”に対する処罰等を決定する見通しだ。