6月4日に開かれた国際オリンピック委員会(IOC)の理事会で、“北京の次の次”の大会である『2016年夏季オリンピック』開催地の第1次選考が行われ、東京が通過を果たした。

 立候補していた7都市から選考に残ったのは東京を含めスペイン・マドリード、アメリカ・シカゴ、ブラジル・リオデジャネイロの4都市。競技会場やインフラ、財政など10の評価項目に全体計画を加えた11項目で選考が行われ、東京は4項目で1位、6項目で2位の評価を得、総合トップで通過したという。この結果に招致の旗振り役である石原慎太郎東京都知事は意を強くしたようで「これからが本当の競争だ」と力強く語った。

 だが、東京には大きなウイークポイントがある。「世論の支持」の低さだ。IOCがはじき出した世論支持率はマドリードが90%、リオデジャネイロが77%、シカゴが74%で、東京は59%。最下位なのである。

 実際、巷にオリンピックを歓迎する空気はない。新聞やテレビが集めた声も「財政が苦しいのに、オリンピックに大金を使っていいのか」、「税金は福祉や医療制度など足りないところに使ってほしい」、「オリンピックが来ていい思いをするのは、一部のゼネコンや広告代理店くらいでしょ」といったものばかり。支持よりもむしろ反対意見の方が多いのだ。

 日本で初めて行われた1964年の東京オリンピック。当時はほとんど反対がなかった。誰もが自国でオリンピックが開催されることを喜び、観戦のためにテレビを買い、競技に注目した。あれから44年――。変われば変わるものだ。

 高度経済成長が始まった当時と、成長に限界が見えた今という時代の違いもあるだろう。だが、それ以上に人々のオリンピックへの受け止め方が変わった。たとえば10年前の長野オリンピック。当時JOCの名誉会長だった堤義明氏主導で行われた大会は、堤氏率いる西武グループに利益をもたらした。オリンピックはアスリートの祭典という意味とは別の意図を含んで行われるものである、ということを人々は知ってしまったのである。

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