「生まれつき、まぶたがない」頭蓋骨の一部もない状態で産まれ…『世界で前例がない障害』の息子を育てる夫婦が振り返る“妊娠時の記憶”
世界でも前例のない障害を持つ息子・未来くんの日常をYouTube「星のミライChannel」で発信する星野しほさん、孝輔さん夫妻。未来くんは、まぶたと頭蓋骨の一部がない状態で生まれ、その他にも小耳症や小顎症、嚥下障害といった症状がある。
【写真】「生まれつき、まぶたがない」世界で前例のない障害児・未来くんと、星野さん夫婦
新型出生前検査で異常はなかったが、妊娠中期に突如、医師から異変が指摘された。何度検査してもはっきりしたことがわからない中、しほさんはある病名に行き着くが……。未来くんの現在のようすや、妊娠初期からどのように夫婦でコミュニケーションを重ねたのかなどを聞いた。

©杉山秀樹/文藝春秋
産まれた日に「気管切開」、耳の穴も途中でふさがっている
--今日はご自宅にお邪魔させていただきありがとうございます。未来くんは8月で3歳半になりましたが、今の状態を教えてください。
星野しほさん(以下、しほ) はい。まず、みーくん(未来くん)は気管切開をしています。「小顎症」といって、顎が小さいことで舌の根元が喉の奥に沈み込んでしまい、そのせいで気道が狭くなって口鼻から呼吸ができないんです。喉に穴を開ける気管切開をし、そこから呼吸している状況です。
気管切開は産まれた日にしたんですけど、当初は肺のふくらみが小さいことや気管軟化症もあって、1日の大半は人工呼吸器を付けて過ごしていました。その後、症状が良くなったことで自宅にあった人工呼吸器などの機材も返却し、今は喉に開けた穴から自分で呼吸をしている状況です。
--食事はどうされているんですか?
しほ 「胃ろう」というものも付けています。これは経管栄養の一種で、お腹と胃に穴を開けて管を付け、そこからペースト状のご飯を注入するものです。胃ろうは小顎症とは関係がなく、嚥下障害があったので付けました。要は、ごっくんする力が普通より弱いので、経管栄養で必要な栄養を入れてあげながら、お口から食べる練習も並行してやっています。
あとは、耳が小さい「小耳症」でもあります。耳が生まれつき低形成で、形はかろうじてあるものの、耳の穴が途中でふさがっているので難聴です。難聴には4段階ありまして、みーくんの場合、耳もとで大きな声で話せば聞こえるレベルの「高度難聴」になります。
今は補聴器を付ける練習をしていますが、本人がすごく嫌がるので、ゆっくり慣れていけたらいいなと。
生後100日目には、全欠損だった「まぶた」を形成する手術も
--生まれつきまぶたもなかったそうですが、現在は手術もされて。
しほ 生まれつき上下のまぶたが欠損、つまり、まったくなかった状況で、生後100日目に下まぶたを形成する手術を受けました。
この手術によって目の露出範囲を狭めることはできたのですが、まばたきができるようになるわけではないので、今も24時間、目は開きっぱなしです。なので、乾燥を防ぐために日々点眼と、寝る時にはラップで目を保護するケアが必須ですね。
あとは、おでこのあたりの頭蓋骨が広い範囲で欠損しています。大体、頭頂部からおでこまでと、目の周りから頬骨のあたりまで、骨がまるっとないんですね。見た目にはわからないかもしれないんで、ちょっと実際に触ってみていただけます?
--(未来くんのおでこあたりを触らせてもらう)あ、たしかにフニフニしていて柔らかいです。
しほ そうそう。この頭の骨に関しては様子見で、ヘルメットを適宜つけてガードをしています。現状としてはそんな感じですが、今後、成長に伴って手術をする可能性はありますね。
--今も未来くんは元気に遊んでますけども、歩行に関してはどうですか?
しほ みーくん、おいで。皆にちょっと歩いているところ見せてほしいな。(未来くん、数歩歩く)こんな風に2、3歩よちよちするような感じで、全体的に発達が遅れてはいます。
--すごくわかりやすくて医療従事者の方からお話を聞いているようでしたが、たくさん勉強をされて。
しほ そうですね。本当に最初は右も左もわからなかったので。
星野孝輔さん(以下、孝輔) うちの家族にも障害や病気を持っている人がいなかったので、子どもが生まれるまではやっぱり自分ごとじゃなかったですね。みーくんのような子どもは「医ケア児(医療的ケア児)」と言うんですけど、それも息子が生まれてはじめて知った言葉でした。
妊娠22週目で、医師から指摘があった
--妊娠時から障害についてはわかっていたのでしょうか。
しほ 妊娠13週の時に新型出生前検査は受けていて、染色体異常がないことは確認していました。妊娠した周りの友だちで検査を受けている子が多かったので、私も事前に赤ちゃんのことをより詳しく知っておきたいと思って受けていたんです。
そうして問題ないままきていたんですが、妊娠22週のとき、産院の勧めで胎児スクリーニング検査を受けました。ふだんの妊婦健診より精密に赤ちゃんの発達がわかる超音波検査を受けて、そこではじめて、「頭の横幅が通常より短いかもしれない」と指摘を受けたんです。
大学病院への紹介状には「頭蓋骨レモン型」と……
--「頭の横幅が通常より短いかもしれない」とは、何を意味するのでしょうか?
しほ 翌週に再検査したのですが、よくわからなくて。結局、大学病院の紹介状をもらったんですけど、診察は1週間後。何もわからない状態が不安すぎました。
で、紹介状をよくよく見たら、ちゃんと封がしてあるわけじゃなく、簡単にテープで留めてあるだけだったので、いけないことだと思いつつ、開けて見てみたんです。
--紹介状には何が書かれていたのでしょうか。
しほ 「頭蓋骨レモン型」「眼間乖離」「目の位置が低い」という3つが書いてありました。で、そのキーワードをもとに大学病院に行くまでの1週間、ひたすら検索、検索、検索の日々です。
目の症状でぱっと当てはまる病気は見つけられなかったんですけど、「頭蓋骨レモン型」について明確に当てはまっていたのが、「二分脊椎」という病気で。もう絶対にこれだと。そこからは二分脊椎症のお子さんを持つ親御さんがどういう生活をしているかとか、そこまで調べていました。
--しほさんは英語と韓国語も堪能とお聞きしたんですが、海外の文献もあたったりしましたか。
しほ 忘れてましたけど、そう言われるとたしかに海外の論文も見てましたね。論文は英語の文献のほうが進んでいたり情報が多かったりするので、素人なりに調べられることは手当たり次第調べていました。
妊娠中は検索魔になりやすいというのは結構あるあるだと思うんですけど、私も障害がわかる前からいろんな妊婦さんの経験談を読んでいて、「紹介状を渡されました」「どうしたらいいのか分かりません」みたいな声を見ていたんですね。で、そのときに他人事で読んでいた妊婦さんたちの苦しみが自分にもめぐってきたような気持ちになりました。
そうしてメチャメチャ調べまくっていくうちに、大学病院に行く頃にはわりと心構えもできていたのですが、先生からきっぱり、二分脊椎は否定されたんです。
「もしかしたら耳がない可能性もある」
--二分脊椎症だと思っていたけれど、実際には違ったと。
しほ 二分脊椎症だと思い込んで育児スタイルまで思い描いていただけに、そっちにショックを受けてしまって。大学病院の検査でよく見たら、「頭蓋骨レモン型」でもなかったんですよ。
「ああ、違うんだ」という安堵が一瞬訪れて、すぐ「じゃあ一体何?」という不安が襲ってきて。
--大学病院の検査でも詳細はわからなかった?
しほ 3Dで見られる超音波検査をやったんですけど、「手の指、足の指は5本ずつありそうだね」とかっていうポジティブな言葉にはいちいちホッとしたり、「かわいいね」って言われるとうれしかったりしながら、結果的に、「目が離れていそうです」「目の位置が低い」と。で、「耳がよく見えなかったから、もしかしたら耳がない可能性もある」とか、そういうことを言われて。
--新たな症状もわかったんですね。
しほ そうですね。で、「それってつまり何なんですか?」と思うわけですけど、産科の先生は正直生まれた後のことは専門外なので、「生まれた後は小児科の方でサポートします」という回答になってしまって。
病名含めてわからないことはたくさんありましたけど、その日は、自分の子どもにはまず間違いなく、なんらかの障害があると確定した日ではあったんです。
子どもの障害を、夫婦でどう受け止めたのか
--御夫婦でそのときに話したことを覚えていますか。
しほ 確定診断を言われたその日、夜に2人で散歩したんですよ。いろいろ所見はあるものの、先生から「赤ちゃん自身は元気です」と言われていたので、まずは「そこはよかったよね」と話をして。
その後は、「耳がなかったらどうなるんだろうね」「聞こえないってことなのかな」とか、そういう話を一通りした後に、結論としては、「でもやっぱり2人の子どもだし、元気で生まれてきてくれるならそれが一番だし、どんな子が生まれても大切に育てたいね」という話で着地して。
だからその日は悲しい日というより、1つまた前進した日として記憶に残っています。
孝輔 みんな子どもってそれぞれ違うじゃないですか。だから僕は、うちの子はこういうタイプの子が来るんだな、と淡々と受け止めたという感じで。
障害や病気に対して負のイメージがないわけではないですけど、それもただのイメージであって、やってみないと分からない。だからそのときは、「自分の子育てはこうなんだ」と受け止めることしかできないというか、それ以上でもそれ以下でもなかったんです。(つづく)
〈「顔が紫色で、産声も聞こえなかった」産まれたその日に気管を切開し…『世界で前例がない障害児』“おもちくん”を出産した母が明かす、今でも忘れられない“医師の一言”〉へ続く
(小泉 なつみ)
