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相続した土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の減額特例」。前回は、被相続人が住んでいた自宅の土地を対象とする「特定居住用宅地等」を取り上げました。今回は、個人事業に使っていた土地、同族会社の事業に使っていた土地、賃貸事業に使っていた土地を対象とする3つの宅地等について、適用されるための要件や、相続開始前3年以内に事業を始めた場合の注意点を解説します。

〈登場人物〉

吉田課長:A社で働く課長。3人きょうだい(吉田さん、弟、妹)の長男で、2人の子を持つ。税理士とは業務上のやり取りがある。

事業に関連する3つの宅地等

「小規模宅地等の減額特例」(以下「減額特例」、租税特別措置法69条の4)の減額特例が受けられる「事業」に関連する次の3つの宅地等を取り上げます。

① 特定事業用宅地等(以下「個人事業に使用した宅地等」)


② 特定同族会社事業用宅地等(以下「個人が経営する特定同族会社の事業に使用した宅地等」)


③ 貸付事業用宅地等(以下「不動産貸付事業に使用した宅地等」)


 

吉田課長「3つの宅地等に該当すると、相続税はどれくらい減額されますか?」

次のように減額されます。

(1) 個人事業に使用した宅地等、個人が経営する特定同族会社の事業に使用した宅地等
  400㎡まで80%の減額(2割評価)


(2) 不動産貸付事業に使用した宅地等
  200㎡まで50%の減額(5割評価)


ただし、居住に使用した宅地等と(1)の2つの宅地等を減額特例の対象にする場合は、200㎡からこれらの宅地等に使った面積(200㎡換算後)を控除した残りの面積になります。

個人事業に使用した宅地等とは

吉田課長「それでは、個人事業に使用した宅地等から。どんな宅地ですか?」

相続開始の直前において被相続人等の事業の用に使われていた宅地等(土地、借地権など)のことです。

事業の種類はさまざまです。そのなかで、不動産貸付事業は、不動産貸付事業に使用した宅地等の事業になります。

不動産貸付事業とは、①不動産貸付業、②駐車場業、③自転車駐車場業、④準事業をいいます。準事業とは、事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で、相当の対価を得て、継続的に行うものをいいます。

吉田課長「被相続人等とは、誰のことですか?」

次の①、②の親族のことです。

① 被相続人


② 被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族



吉田課長「被相続人の死亡により引き継がれる宅地等とは?」

次の①、②の2つの宅地等です。

① 被相続人が営んでいた事業に使っていた宅地等


② 被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族が営んでいた事業に使っていた宅地等


 

吉田課長「これらの2つの宅地等を誰が引き継ぐと、減額特例の適用を受けることができるのですか?」

2つの宅地等で減額特例の適用が受けられる親族は違っています。次の(1)、(2)の区分に応じた(1)、(2)の適用要件(各①~③)のすべてを満たす宅地等を取得した親族になります。

(1) 被相続人が営んでいた事業に使っていた宅地等
 ① 事業の引き継ぎ要件
   その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を引き継ぐ親族であること。
 ② 申告期限までの宅地等所有要件
   その親族が申告期限まで引き続きその宅地等を有していること。
 ③ 申告期限までの事業継続要件
   その親族が申告期限までその事業を営んでいること。


(2) 被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族が営んでいた事業に使っていた宅地等
 ① 被相続人との生計一要件
   その被相続人の親族が、その被相続人と生計を一にしていた者であること。
 ② 申告期限までの宅地等所有要件
   相続開始時から申告期限(その親族が申告期限前に死亡した場合には、その死亡の日)まで引き続きその宅地等を有していること。
 ③ 申告期限までの宅地等の事業継続使用要件
   相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の事業の用に供していること。
 

これらの区分の仕方((1)、(2))とその適用要件(各①~③)の定めは、不動産貸付事業に使用した宅地等についても、ほぼ同様の適用要件としています。

「事業」が「不動産貸付事業」に変わるという違いだけです。

相続開始前3年以内に始めた事業は要注意

吉田課長「個人事業に使用した宅地等についての適用要件は、他にもありますか?」

2つあります。1つは、「相続開始前3年以内に新たに事業の用に使った宅地等の除外」要件です。

ただし、事業実態が認められる一定の場合には、個人事業に使用した宅地とします。

この一定の場合とは、新しく事業の用に使う宅地等の時価(相続税評価額)に対する建物、構築物、減価償却資産の時価(相続税評価額)の割合が15%以上であることです。

この投資割合(15%以上)で、被相続人が本気で新しい事業を始めたかどうかを確認します。

吉田課長「個人事業に使用した宅地等についての最後の適用要件の説明をお願いします」

これまでの適用要件に該当する宅地等を「共有で取得した場合の持分限定要件」です。

適用要件を満たす共有者の持分に相当する宅地等(面積)だけが、個人事業に使用した宅地等に該当するということです。

「個人が経営する特定同族会社の事業に使用した宅地等」と「不動産貸付事業に使用した宅地等」についても、同様の適用要件を設けています。

特定同族会社の事業に使用した宅地等とは

吉田課長「次は、個人が経営する特定同族会社の事業に使用した宅地等です。特定同族会社とは?」

相続開始の直前に、被相続人やその配偶者などの特別の関係者が有する持株割合が50%を超える会社のことです。

この特定同族会社が、被相続人からその宅地等とその上にある建物を借りて、または自ら建物を建設して自社の事業に使っている場合を想定しています。

ただし、この宅地等を不動産貸付事業に使っている場合を除きます。

吉田課長「『被相続人の分身』のような会社ですね」

そのとおりです。事業を「被相続人が営むか、特定同族会社が営むか」の違いがあるだけです。

したがって、個人事業に使用した宅地等の適用要件とされた、「申告期限までの宅地等所有要件」、「申告期限までの宅地等の事業継続使用要件」、「共有で取得した場合の持分限定要件」は、個人が経営する特定同族会社の事業に使用した宅地等の適用要件とされています。

吉田課長「個人事業に使用した宅地等との違いもありますよね」

はい。それが、その宅地等を相続または遺贈により取得した被相続人の親族は、「申告期限において、その法人の役員(清算人を除く)になっている者」でなければならない、という要件です。

この要件は、特定同族会社と新しい宅地等の所有者である相続人との強い結びつきを担保するものです。

不動産貸付事業に使用した宅地等の要件

吉田課長「最後は、不動産貸付事業に使用した宅地等です」

すでにお話ししていますが、不動産貸付事業か不動産貸付事業以外の事業か、という営む事業に違いがあります。しかし、一部の適用要件を除いて、個人事業に使用した宅地等についての適用要件と変わりません。

たとえば、不動産貸付事業に使用した宅地等では、次の①、②に区分して、それぞれ個人事業に使用した宅地等と同様の3つの要件で親族を限定しています。共有で取得した場合の持分限定要件も同様です。

① 被相続人が営んでいた不動産貸付事業に使っていた宅地等

② 被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族が営んでいた不動産貸付事業に使っていた宅地等


 

吉田課長「個人事業に使用した宅地等と異なる適用要件もありますよね」

はい。その1つが、「不動産貸付事業に使用した宅地等」からの除外規定です。具体的には、次の①、②の宅地等を除外します。

① 個人が経営する特定同族会社の事業に使用した宅地等


② 相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に使われた宅地等


ただし、相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っていた被相続人等のその特定貸付事業の用に使われた宅地等は、「不動産貸付事業に使用した宅地等」とします。

ここでいう特定貸付事業とは、不動産貸付事業のうち、準事業以外の事業をいいます。

吉田課長「ワンルームマンションを購入して、賃貸事業を始める場合ですね」

購入者は購入後3年を超えて生き続け、貸し続けなければ減額特例の適用はない、ということです。
 

多田 雄司

税理士