合羽橋の包丁専門店が5年で10店→30店に急増…京都・河原町でも出店ラッシュ、外国人観光客が殺到する「包丁ブーム」の実態

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インバウンドが包丁専門店に殺到

いま全国の観光地で、急増する外国人観光客をあてこんだビジネスが次々と生まれている。「日本らしさ」を売りにしたそうした商売のなかで、東京や京都で存在感を増しているのが、外国人観光客をターゲットにした包丁店だ。背景にあるのは、和包丁の海外での空前のブームである。

京都市の外国人観光客数は2024年に初めて1000万人を突破し、外国人宿泊者数もコロナ禍前を上回る水準に達した。この波に乗り、いま京都では包丁専門店の出店が相次いでいる。

大阪・堺の老舗「實光刃物」が寺町商店街に京都2店舗目を構えたのが2024年1月。2025年には和包丁ブランド「MUSASHI JAPAN」が河原町に進出し、2026年5月には貝印が創業118年で初となる直営路面店を御池通に開いた。

「MUSASHI JAPAN」運営元のTAIMATSU株式会社は、東京・合羽橋の旗艦店を起点に約3年で全国17店舗、従業員300名超へと急成長し、渋谷や表参道、広島、京都・河原町駅前など観光客の集まるエリアへ出店を広げてきた。多言語への対応やDXを掲げる新興ブランドが、老舗と肩を並べる構図だ。

日本国内の包丁メーカー38社の売上高は、2025年8月期に過去5年で最高となる167億円台に達したとの報道もある。(※東京商工リサーチの調査 2026年3月)インバウンド需要が業界全体を押し上げているのは間違いない。

実際に京都・河原町や先斗町を歩くと、外国人が多く集まる通り沿いに包丁店が何軒も連なる。ある店の店先には甲冑や兜、日本刀が飾られ、内装も和風にしつらえてある。刃や柄にはアーティスティックな装飾が施され、「Japanese Knife」として人気を集めていた。価格は数千円から5万円ほどが中心で、日常使いというよりは高級な土産物、あるいは工芸品として買われている様子がよくわかる。何軒か回ると、外国人の店員も目立った。

記者が店を訪れたときも、何人もの外国人観光客が包丁を吟味していた。ある店員は「日本のお土産として何本も買っていく人もいますよ。外国人だけでなく地元の方も多くいらっしゃいます」と話してくれた。

和包丁は定番の「日本みやげ」に

こうした出店ラッシュの背景には、和包丁へのたしかなニーズがある。海外で注目が集まったきっかけは、2013年に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことだ。

西洋の包丁がブロック肉のカットを得意とする一方、伝統的な和包丁は片刃ならではの鋭い切れ味と、そのデザイン性で海外の評価が高い。台所用刃物の輸出額は2004年の約28億円から年々増え、2021年には約118億円と過去最高を記録した(※名古屋税関)。訪日客のあいだでも土産としての人気は高く、和包丁は定番の「日本みやげ」になりつつある。

こうした専門店が扱う包丁の産地は、大阪・堺、新潟の三条・燕、福井・越前、高知・香美、岐阜・関などが中心だ。

東京・合羽橋でも約30店舗に急増

こうした現象は、京都だけのものではない。東京・合羽橋の道具街でも同様の動きが起きている。

読売新聞の取材によれば、コロナ禍前は10店舗ほどだった包丁専門店は、組合未加盟の店を含め、現在は3倍の約30店舗にまで増えた。同組合の担当者は「後継者がおらず、閉店した刃物以外の店舗の後に、包丁専門店が次々と出店している」と証言している。今回、本誌記者が実際に合羽橋を歩いて確認したところ、研ぎ専門店を含め29店舗が営業していた(7月時点)。

撮影に訪れたのは日曜日。道具街の多くの店がシャッターを下ろすなか、包丁店だけはほとんどが店を開け、多くの観光客を迎え入れていた。

こうした街の変貌ぶりは、古くを知る人にはいっそう際立って映る。合羽橋で三代続くうつわ店の店主によれば、そもそも合羽橋は道具街ではあっても、包丁を多く商う場所ではなかったという。包丁専門店は「つば屋」と「かまた」の2軒ほどで、包丁はむしろ築地の市場に買いに行くものだった。それが、新しくオープンした店が次々と増え、いまの「包丁街」ができあがったのだと同店主は振り返る。

観光客向けの10万円近い商品も

老舗と新興店が同じ通りに軒を連ねる光景は独特だ。

先述の、合羽橋で一番古いとされる包丁専門店「つば屋」、新潟・三条の包丁だけを扱う昔ながらの「刃物屋 越乃一刀本舗」、大正初期の農具製作所を起源に100年余りの歴史を持つという「銘匠」、新潟・燕三条ブランド「藤次郎」の直営ギャラリー、大阪・堺の職人技を掲げる「ZAKU Knives」、ドイツの老舗刃物ブランド「ツヴィリング J.A.ヘンケルス」の日本拠点など、由緒ある店や名の知れたメーカーの直営店が数多く並ぶ。

さらに、スタッフ全員が外国人という新興店や、1階が包丁屋で2階は日本酒バーやカフェという観光客向けの複合店、料理教室や研ぎ教室まで併設するギャラリー型の新店まで、業態は多種多様だ。

いかにもインバウンド向けとみられるある店では、両刃のステンレス三徳包丁が2万円台なかば、螺鈿や角をあしらった美術品のような包丁は10万円近い値がついていた。店員によれば客の大半はインバウンドで、プロの料理人ではなく一般家庭向けの包丁を求める観光客が目立つという。なかでも人気は、両刃・ステンレス製の三徳包丁や菜切り包丁、牛刀などだ。

出店の波は、道具街の外にも及んでいる。浅草・新仲見世商店街のような観光アーケードにも、新しい包丁店が次々と店を構える。抹茶アイスやいちご大福が並ぶ商店街に包丁専門店があるのは、日本人からすればどこか違和感も漂う光景だ。

皮肉なことに、急激な人気は便乗組をも呼び寄せつつある。品質も価格の根拠も判然としない店舗が目立ち始めているのだ。量産品に近い商品を「日本の職人の手仕事」と称して高値で売る店も存在する。

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【つづきを読む】10万円の包丁が爆売れ!合羽橋・京都で「インバウンド向け包丁店」が急増…「同じ商品が2倍の値段で」老舗も嘆くバブルの闇

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