岡安章介さん(C)日刊ゲンダイ

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【その日その瞬間】

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 岡安章介さん(お笑いトリオ「ななめ45°」/47歳)

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 鉄道マニアでおなじみのお笑いトリオ「ななめ45°」の岡安章介さんは41歳でがんに。告知された時は「なぜ俺が」とガク然としたという。今年、寛解するまでを聞いた。

 ──がんが発覚したきっかけは。

 41歳になった2020年の夏、首の左側に3センチほどのコブというか、しこりができたんです。外側に膨らんでいたから喉に関係しているとは思わず、「そのうちに治るかな」と放っておきました。すると、全然小さくならず、ご飯を食べると喉に詰まり始めて、内側に圧迫してきていると思い、病院に行き、細胞をとったりといろんな検査をしました。「下咽頭がんです」と結果を言われた瞬間は文字通り頭が真っ白。頭の中で「がん」という単語がリフレインしてるだけで、何も考えられず、呆然としていました。その日は帰って泣きましたね。「なんで俺ががんなんだよ」と納得できなくて。

 喉のがんの原因はだいたいはたばこかお酒と言われますよね。僕はたばこを吸わないので、先生は「お酒が原因かもしれません」と。確かに僕は酒好きでみんなが集まるとテキーラを飲んだり、朝まで飲んだりしてきました。でも下咽頭がんは50代から上に多いがんといいますし、僕の周りに大酒飲みの友だちは大勢いますが、病気になった人はひとりもいない。だから「なんで俺だけががんなんだ」という気持ちが強くなりましたね。

 そして別の日、正式に「岡安さんはステージ3です」と言われて。その日のうちに放射線の先生のところに行き、今後のスケジュールを話し合い、主治医の先生のところに戻ると、「さっき3と言いましたけど、ステージ4になりました」と。3にしては大きいみたいで……。ショックでしたけど、「スリー寄りのフォーだ」とポジティブに考え直しました。「すごいフォーじゃない」と。

 ──親御さんやメンバーは驚いたのでは。

 実は僕ががんになる4年前に弟が腎臓がんになっていました。当時、30代前半ですよ。完治して今は元気ですが、そんなことがあったので、僕が下咽頭がんだと告げると母親は「そっかあ」とそんなに驚いてなかった。弟で1回驚いているから。2回目も驚いてほしかった(笑)。

 仕事面ではちょうどコロナ禍でよく呼んでいただいた鉄道イベントは軒並み中止になり、仕事はほぼゼロに。メンバーと「3人でYouTubeを始めよう」と決めて、いろんな企画を出し合った時に、僕ががんに。

 メンバーは驚くし、YouTubeの動画アップが滞ってしまってどうなるか不安で。

先生もビックリするほどがんが小さくなって手術は不要に

 ──治療からがんが消えるまでは。

「声帯を残す方向でいきましょう」と先生が言ってくれて、放射線と抗がん剤治療でがんを小さくしてから手術をするプランにしてくれました。その後、治療でがんがどんどん小さくなってくれて。3クールほどで先生が「がんはどのへんでしたっけ」と言うほど小さくなり、手術は不要に。先生もビックリするほどで首のしこりも2クールでなくなりました。それが21年のことです。

 抗がん剤の副作用は気持ち悪くてキツかった。それと2クール目から味覚がまったくなくなって。何を食べても味がしない。だから食欲もわかず、「味って大事だな」としみじみ思いました。先生から「個人差がありますけど、味覚が半分だけや、ほとんど戻らない方もいます」と言われて怖かったですが、3カ月ちょっとの治療を終えたら少しずつ味覚が戻りました。

 がんが消えてからは定期健診に毎月行き、徐々にスパンを空けて最後は半年に一度。再発が怖いから検査結果を聞く時はいつもドキドキで。先生ももったいぶって「うーん、ちょっと怪しいかな」とか言うんですよ。別の検査をやることになって焦るけど、1週間後に行くと「全然大丈夫でした」と言われて。でも、がんはどう再発するかわかりませんからね。

 そして今年の2月にやっと寛解。先生から「もう完全に大丈夫です」と言われるまで、トータル5年でしたね。

■病院ではスマホでお笑いを見てパワーをもらった

 一番つらかったのは、コロナ自粛中に誰にもお見舞いに来てもらえなかったこと。自宅にも来られないじゃないですか。だからひとりで考えこんじゃって。

 そんな時、病院の最上階にあるコインランドリーに行き、見晴らしのいい景色を見てから、スマホでお笑いをたくさん見ました。コントの動画やバラエティー番組で笑うと、気持ちが軽くなれたんです。これは実感したんですけど、お笑いは生きるパワーをくれるんですよ。「自分のやってる仕事ってすごいな」とあらためて思いました。笑わせることで落ち込んでいる人の気持ちを軽くさせられるこの仕事を一生やっていこうとひとりきりのコインランドリーで決意しました。自分の職業に誇りを持てたことは、唯一良かったことです。

 ──人を救えるお笑いでやりたいことは。

 がん治療で休止していた単独ライブを去年から再スタートし、今年は来週に新ネタで開催します。鉄道イベントには、おかげさまでよく呼んでいただけていますが、遠くの地方に行く時も「なるべく陸路でお願いします」と頼み、電車でイベントに向かいます(笑)。

 今月は、豪雨災害の影響で止まっていた熊本のくま川鉄道が全線再開するということで行ってきました。これからも鉄道とコントで頑張ります。

(聞き手=松野大介)

▽岡安章介(おかやす・あきよし) 1979年9月、埼玉県出身。2000年に土谷隼人、下池輝明と「ななめ45°」を結成。トリオでYouTube配信中。鉄道好きで知られ、鉄道イベントで人気。「ななめ45°」第15回単独ライブ「縞々な島~Stripes ISland~」10月2日、午後6時30分開演(日本橋社会教育会館ホール)