部下への盗撮・ストーカーで52歳男が執行猶予…被害者と生活圏同じも「家のローン」理由に引越し拒否、“妻の監視”で再犯防止か
勤務先の上司だった男(52)が、部下の女性Aさんに対して抱いた一方的な恋愛感情は、ストーカー行為と盗撮という犯罪にまでエスカレートした。ストーカー規制法違反などの罪に問われた男の裁判では犯行の悪質性が指摘される一方、示談の成立や妻の支えなどが考慮され、執行猶予付きの判決が言い渡された。(ライター・渋井哲也)
検察側の論告によれば、男は部下であるAさんに恋愛感情を抱き、2025年6月から2026年4月までストーカー行為と盗撮を繰り返したが、起訴された行為はそれらの一部に過ぎないという。
判決で認定された事実によると、男は2025年6月6日夕方、あらかじめ職場内に動画撮影状態のスマートフォンを設置し、着替え中のAさんの胸部や臀部などを撮影した。
さらにAさんへの好意の感情を満たす目的で、2026年4月5日夜から2週間近くにわたり、Aさんの自宅付近をうろつくなどのストーカー行為を6回繰り返した。この前にAさんの配属先が変わったことで、男の感情はさらに募り、行為をエスカレートさせたという。
またこの期間中に、男は上司という立場を利用してAさんを呼び出し、テーブルの下からAさんのスカート内にスマートフォンを差し入れて、撮影しようとしたが、これは未遂に終わった。
法廷で問われたのは「反省の程度」裁判で、男側は起訴事実を認めたため、争点は反省の程度や再犯の可能性となった。
男は被告人尋問で犯行中の心理を次のように述べた。
「犯罪になると思っていましたが、自分の欲が勝ってしまい、欲を満たしたいと思い、被害者のことを考えませんでした。刑務所に行くことになるかもしれないとは思いましたが、深く考えませんでした」
検察側は反対尋問で、再犯防止策の具体性を厳しく問いただした。
検察官 「被害者に近寄らないようにすると言っているが、被害者宅を知っている。会わないようにすると言っているが、具体的にどのようにするのか」
男 「Aさんに恐怖を与えてしまった。妻が行動の管理をすることになっています。すべて妻と一緒に行動するようにします」
検察官 「被告人とAさんの生活圏は同じ。変えることはできないのか?」
男 「引っ越しも考えましたが、家のローンがいまだに残っています。そうした経済状況を考えて、今のところ、同じ場所に住むことにしています」
検察官 「ばったり会ったりすると、『つきまとわれたのでは?』と(被害者は)思うのではないか」
この質問に男は「わかります…」と答えるだけで、それ以上、言葉を続けることはなかった。
公判では妻も情状証人として証言台に立った。妻は男の犯行が発覚した当初、「信頼は足元から崩れました。とんでもないことをしてくれたな。言葉にできない」と思ったというが、それでも逮捕後から毎日のように留置所や拘置所に通い続けた。
「2か月通いました。はじめは心配で面会をしました。主人の心がつぶれそうだと思っていたからです。なんとか罪と向き合って、被害者にお詫びをしないといけないと。毎回、泣いていました。『自分のしでかしたことで周囲の人を傷つけてしまった』と言っていました」
執行猶予付き判決と情状酌量の理由9月11日、裁判所は、男に、検察の求刑通り1年6月の拘禁刑とした上で、執行猶予3年を言い渡した。
判決の日、黒のスーツに紺のネクタイ姿で出廷した男は、弁護側が被害者との示談書と、示談金を受け取った領収証を提出する間、下を向き、ずっと手を膝に置いていた。
そして、結審にあたり、「私は本当に自分勝手な欲を満たすために、被害者、被害者のご家族に多大な迷惑をかけてしまいました。申し訳ありません」と改めて謝罪の言葉を述べた。
裁判長は量刑の理由について、性的姿態等撮影(盗撮)の部分は、未遂を含めて「計画性があり、卑劣かつ狡猾である」と断じ、ストーカー行為については「執拗な行為」で、「被害者が被った精神的苦痛は大きく、処罰感情が厳しかったのも当然」と厳しく指摘した。
執行猶予がついたのは、以下の情状が考慮されたからだ。
男は、被害者への示談金の支払いを終えており、示談書には「処罰を求めない」との文言があった。加えて、男が事実を認めて反省の態度を示し、医療機関で性依存の治療を受け続けるなど更生に努める点も考慮された。
男は被告人質問で、勾留中にカウンセリングを勧められて性依存を自覚したと明かし、「途中で(通院を)やめることはしません」と、治療の継続を約束している。
また、男は事件によって会社を懲戒解雇されたものの、親族の会社で働くことが決まっており、社会内での更生の道筋が見えていることも判断材料の一つとなっただろう。
男は被告人質問の最後にも、「自分勝手な罪により、Aさんとそのご家族に精神的苦痛を与えてしまいました。逮捕されてから妻にもお詫びしかないです。妻と一緒に、Aさんとそのご家族に会わないように努めます。本当に申し訳ありませんでした」と頭を下げた。
■渋井哲也
栃木県生まれ。長野日報の記者を経て、フリーに。主な取材分野は、子ども・若者の生きづらさ。依存症、少年事件。教育問題など。

