「会社とアーティストは別」は社会に通じるか ILLIT受賞スピーチが投じた波紋とファンの心理

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「会社とアーティストは別」

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K-POPのファンダムにおいては、所属事務所に関するトラブルが発生した際に、度々耳にする言葉だ。

会社や経営陣側に問題が存在したとしても、所属するアーティストとは明確に分離して捉えるべきだと考えるファンは決して少なくない。

しかしながら、その境界線がファンダムの外部から眺めた際にも同様に認識されているのかどうかは疑問が残る。

そうした疑問を投げかけるかのような、ガールズグループILLIT(アイリット)にまつわる1つの投稿が韓国で大きな注目を集めている。

先日Xへ投稿された内容は、「歌手ではなく会社を批判すべきだと言うファンもいるが、当の歌手はパン・シヒョク氏やホ・セリョン氏に感謝しているではないか」という趣旨のものであった。

これはあくまで1人の個人による意見に過ぎないが、投稿の表示回数は公開数日で390万回以上を記録した。

添えられた動画には、授賞式である「2026 THE FACT MUSIC AWARDS」においてILLITのウォンヒが受賞コメントを述べる姿が映っている。ウォンヒはファンに向けた感謝に続き、パン・シヒョク氏やホ・セリョン氏をはじめ、所属事務所BELIFT LABやHYBEの関係者にも感謝を伝えていた。

このような一見何気ない受賞時の発言を取り上げた投稿が、なぜこれほどの関心を集めたのだろうか。その背景には、ファンが想定する「会社とアーティストの距離」と、ファンダムの外部から捉えられる両者の距離感におけるズレが存在するとみられる。

ILLIT(写真提供=OSEN)
所属会社をめぐる捜査や訴訟の経緯

前提として整理すると、HYBEのパン・シヒョク議長は9月3日、同社の株式上場プロセスにおける資本市場法上の詐欺的不正取引容疑で、警察から検察へ書類送致された。

警察は、HYBEの上場準備が進められていたにもかかわらず、パン氏側が既存株主に「上場計画はない」と伝えて株式売却を促し、その後の取引を通じて莫大な利益を得た疑いがあるとみている。

これに対しパン氏側は、これまでも客観的な資料や根拠に基づいて説明を行ってきたとして、今後の手続きを通じて疑惑が解消されることを期待するとしている。

現時点では事件が検察へ送られた段階であり、起訴されたわけではない。

また、ILLITのクリエイティブディレクターを務めるホ・セリョン氏は、「ILLITはNewJeansのコピー」とする趣旨の発言をめぐり、ミン・ヒジン氏らを相手に1億ウォン(約1150万円)の損害賠償を求めた訴訟で敗訴した。

ただし、この点においても慎重な整理が必要だ。

裁判所が「ILLITはNewJeansをコピーした」と認定したわけではない。裁判所は、ミン氏の発言の中でホ氏個人が名誉を傷つけられた人物として具体的に特定されていたとは言いがたいと判断し、請求を棄却した。その後、ホ氏が控訴を断念したことで判決が確定したという経緯だ。

スピーチが浮き彫りにした内と外のズレ

もちろん、パン氏が検察に送致されたことやホ氏が訴訟で敗れたこと自体は、ILLITメンバー自身に直接的な関係はない。

そのため、ファン側からすれば「会社や関係者をめぐる問題と、アーティスト本人は分けて考えるべきだ」ということになる。受賞スピーチで日頃支えてくれる会社関係者に感謝を述べることと、その人物をめぐる個別の疑惑や訴訟を支持することも、また別の話だ。

一方で、今回の投稿が突いているのは、まさにその境界線そのものである。

ファンは、問題が起きたときには「会社とアーティストを分けて考えてほしい」と求める。だが、授賞式ではアーティスト自身が会社関係者の名前を挙げ、感謝を伝える。外部の人間から見れば、両者は必ずしも切り離された存在には見えない。

もちろん、ウォンヒがパン氏やホ氏に感謝したからといって、2人をめぐる捜査や訴訟について何らかの立場を示したことにはならない。

授賞式で、普段から制作や活動を支えてくれるスタッフや会社関係者に感謝を伝えること自体は珍しくなく、多くのアーティストに見られる光景でもある。

それでも、名前を挙げられた人物が社会的な議論の渦中にいると、いつもの「ありがとうございます」が、それまでとは違った意味で受け取られてしまうことがある。

ここにこそ、今回の投稿が皮肉ったギャップが存在する。

「会社や経営陣とアーティストを切り離してかばおうとするファン」がいる一方で、アーティスト本人は授賞式で会社関係者の名前を挙げ、公に感謝を伝えている。ファンダムの外から見れば、両者がそれほど切り離された存在には映らないというわけだ。

ファンと外部の視線における温度差

グループを長く追うファンほど、会社の経営陣、制作スタッフ、そしてメンバー本人を細かく分けて見ることがある。だからこそ、「これは会社の問題」「これはメンバーには関係ない」と線を引く。

一方、ファンダムの外では、そこまで細分化されないことも多い。「HYBE所属のILLIT」「BELIFT LABとILLIT」といった大きなまとまりで見られる。

その違いがある以上、ファンにとって当然の「会社とアーティストは別」という論理が、外部にもそのまま共有されるとは限らない。

所属会社の経営者が捜査を受けたからといって、所属アイドルがその責任まで負う必要はない。クリエイティブ担当者が訴訟で敗れたからといって、その結果をメンバーに背負わせる理由もない。

ただ一方で、アーティスト自身が会社関係者への感謝を公に示す関係である以上、問題が起きた場面で「会社とアーティストは別」と線を引こうとしても、その感覚がすべての人に同じように共有されるとは限らない。

ファンが見ているのは「誰に責任があるのか」であり、その外側から見られているのは「誰と誰が結びついているのか」といえるだろう。

今回の投稿がこれほど大きく拡散した背景には、その2つの視線のズレがあるのかもしれない。

(記事提供=スポーツソウル日本版)