サムネイルに写る2人の美男美女。しかしこれはどちらも同じ人物の「男装」と「女装」である。2つの姿を持ち、さらに姿だけではなく歌でも男性パートと女性パートを1人で歌い分ける「男女分裂」のパフォーマンスで人気なのがRioさん(33)だ。

【驚きのビフォーアフター】男性姿のRioさんと、女性姿のRioさん。顔も体型も性別も全く違って見えるが同一人物……。「ガタイ」というあだ名だった幼少期も

 小さい頃から「かわいくなりたい」という思いがあり、6歳頃にはスカートをこっそり着たこともある。しかし女の子のような外見に憧れる一方で恋愛対象はずっと女性で、「自分は何なんだろう」という思いを抱え続けていたという。

 話題になった「ゲイでもない。性同一性障害でもない。恋愛対象は女性。それでも、豊胸しました」という投稿の真意や、体型を女性的にする並々ならぬ苦労、そしてRioさんの姿が変わっていく中での彼女との関係性の変化について話を聞いた(全2回の1回目)。


美男美女のペアに見えるが、どちらもRioさん

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6歳ではじめてこっそり着たスカートと女子への羨望

--「かわいくなりたい」という気持ちはいつ頃から芽生えたんですか?

Rio 小学校に入った頃には「かわいくなりたい」という気持ちがはっきりありましたね。少女漫画の王道的な長いストレートヘアで白いワンピースが似合うような女の子に憧れて、妹やクラスの子が制服でスカートを着てるのを見て「羨ましい」と思ってました。当時は親の仕事の都合でポルトガルにいたんですけど、6歳頃に身近にあったスカートをこっそり着たのが最初の記憶です。

--こっそり、ですか?

Rio 家族にもバレないようにしてました。誰かからはっきりダメと言われた記憶はないんですけど、なぜか自分の中には「男の子がスカートを着るのは変」「男の子は青色」みたいな感覚が染み付いていて、「たぶん男なのにスカートを着たいのは変なことなんだろう」と思って隠してました。

--日本に戻ってきてからもその気持ちは変わらなかった?

Rio 10歳のときに帰国したんですけど、「男なのにかわいくなりたいのは変なことなんだろう」という感覚は変わらなかったですね。それで、かわいくなりたい気持ちは自分の中に閉じ込めてました。ただ、日本の文化にはあまり馴染めてなかったみたいで、今振り返るとそれ以外の部分で「あいつは変だ」って思われるようなことが結構出てきてたので、もはやそれどころじゃなかったかもしれないです(笑)。

--その時は自身の性別についてはどんな風に思ってたんですか?

Rio 自分は女の子になりたいのかなって思ってました。僕の一番の願いは「かわいくなりたい」っていうことで、当時は「かわいくなりたい=女の子」という時代だったから「かわいくなりたい自分は女の子なのかな」って感覚です。でも男の子の格好が嫌だったというより、そもそもあまり興味がなかったんですよね。小学生の頃から女の子のことが好きだったから、自分ってなんなんだろうって戸惑ってましたね。

--本格的に女装するようになったのは何歳くらいの時ですか?

Rio 14歳くらいですね。6歳頃に妹のスカートをこっそり着たりはしてましたけど、自分でウィッグを用意して写真を撮るようになったのはその頃です。当時って女装文化がまだ本当にアンダーグラウンドで、今みたいに「男の子でもかわいくていい」っていう空気は全然なくて、とても気軽に人に言えるような感じじゃなかったんですよ。それで見つけたのが2ちゃんねるの女装写真を投稿するスレッドで、そこに写真を投稿したくて、手探りでウィッグを被ったり、自分なりにかわいく見える方法を試すようになりました。

サラリーマンにナンパされ、女性服で写真を撮られたことも…

--メイクとか?

Rio まだメイクはできないからすっぴんで、自分の部屋でこっそりウィッグを被って、鏡の前で角度を調整しながら自撮りしてました。投稿してしばらくすると「かわいい」「女神降臨」ってコメントが並ぶんです。めちゃくちゃちやほやされて、かわいさを認められた感じがしてあの時は本当に嬉しかったですね。

--恐怖心よりも、「かわいい」と言われる嬉しさが勝っていた。

Rio というより、恐怖心は一度もなかったですね(笑)。「かわいい」って言われることがとにかく嬉しくて。その頃から女性っぽい声を出すこともできたので、ネットで女性の通話相手を募集してた知らないおじさんと電話したこともあります。携帯もないから家の電話で、親がいないタイミングを見計らって電話して、女の子のフリをして、まあ……相手が満足するまで付き合ってあげる、みたいな(笑)。

 高校生になってからは女装して出かけるようになって、サラリーマンにナンパされることもありました。完全に女の子だと勘違いしてて、連絡先を交換して後で「実は僕、男なんです」って打ち明けたら、それでも「また会いたい」と言われて。それで渋谷で服を買ってもらうかわりに、その女性服を着て写真を撮られる、みたいなこともありました。

--おじさんに性的な目線を向けられることって怖くなかったんですか?

Rio 今思うと危ないのでとても人に勧められないんですけど、当時は他に承認欲求を満たす方法がなかったんですよね。相手が気持ち悪い人でも「かわいい」って言ってもらえる方が大事だったんだと思います。

--「かわいい」に飢えていた。

Rio 僕、元々体格ががっちりしてるんです。本名の「大河」を入れ替えて「ガタイ」ってイジられることもあって、自分ではその体が気持ち悪くて仕方なかった。それもあって、男の子として生きてる日常では絶対に満たされない部分を「かわいい」って言われることで満たしてたのかなって。

初めて“キス以上”のことをしたのは男の子だった

--中高生の頃に恋愛はありましたか?

Rio 中1のとき本当に少しだけ女の子と付き合って、次にちゃんと恋愛っぽい関係になったのは男子だったんですよ。中性的なタイプで、最初にキスしたのは女の子だったんですけど、それ以上のことをしたのはその男の子が初めてでした。今振り返るとお互い好奇心だったのかなって思うんですけどね。そのあとはずっと女の子と付き合ってて、高校生のときの彼女は女装してることも知ったうえで付き合ってました。基本的には小さい頃と変わらず「かわいくなりたいけど、女の子が好き」な状態でしたね。

--外見的にもこの時期は普通の男子中高生ですよね。

Rio そうですね。外見は普通に男の子でした。ただ、性格とか恋愛のことで「女々しい」って言われることは結構ありました。

--どういうところがそう言われていたんですか?

Rio 僕、恋愛だとメンヘラっぽくて、相手のことを追いかけちゃうし、既読がつかないと不安になるし、尽くしちゃうタイプなんです。涙もろくて結構泣いちゃうし。それ以外にも昔から色々と人とズレてるところがあったので、いいなと思った女の子と最初はいい感じになれても、中身を知られていくとだんだん離れていっちゃうことが多かったんですよね。友達に恋愛相談をしても「女々しい」って言われたり。恋愛論で「男はこういうもの、女はこういうもの」みたいな話もよくあるじゃないですか。ああいうのもだいたい共感するのは女性側ですね。

--それをご自身ではどう受け止めていたんですか。

Rio 僕の生き方が「男」というフォーマットに合ってなさすぎて「女の子だったらよかったのに」って思ってましたね。男がやると変と言われることでも、女がやると普通に受け入れられることってあるじゃないですか。かわいくなりたい欲求も、恋愛の悩み方も、僕が女の子だったらそこまで違和感を持たれないんじゃないかなって。

--女性だったら特におかしくないのに。

Rio 「男ならこうすべき」って何かを強制されるたびに、「女性はズルいな」って嫉妬してました。

--大学生からは女装することも頻繁に?

Rio 明治学院大学の法学部に進学して都内で一人暮らしを始めたので、女装もしやすくなりました。ただ大学には男の格好で行って、2年生からバイトしはじめた男の娘メイドカフェには女装して出勤してましたね。好きな格好してお金がもらえるのは最高でした。

--歌はいつから?

Rio 中学生ぐらいの時からニコニコ動画の投稿は続けてたんですけど、男性パートと女性パートを両方歌う「男女分裂」を始めたのは20歳の頃です。

--男女分裂はどうやって生まれたんですか?

Rio ニコニコ動画には男声と女声を1人で歌う「両声類」というジャンルがあって、僕はもともとそれにずっと憧れてたんですよ。自分もやってみたいなって。僕もずっと歌は地声で、セリフだけ女性っぽい声で動画をアップしてたので、できそうな気がしたんです。でも一番大きかったのは、パフォーマンスということにすれば堂々とかわいい格好ができたんですよ。普段かわいい格好をしてたら「変な男」って見られるけど「パフォーマンスの一環です」って言えば周りも納得してくれるじゃないですか。

--でも23歳でバンドでデビューした時は完全に男性モードでしたよね?

Rio 19歳の頃にニコニコ動画を見た音楽事務所の方から声をかけていただいて、そこから関係は続いてたんです。その後、23歳のときにたまたまニコニコ動画の広告で見つけたオーディションに自分で応募したら、そこにもその音楽事務所が関わっていて。オーディションに合格して、ビジュアル系バンドの活動を始めました。

 ビジュアル系には女形の文化もあるんですけど、僕の場合は「Rioはそうじゃないよね」っていう感じで、女装は封印するように言われてました。それで男っぽい格好をしてました。ファンは「かっこいい」と言ってくれたりするんですけど、自分がなりたい姿とズレてる状態をかっこいいと言われても、あまり嬉しく思えなくて。

--25歳くらいの時にはバンドも活動が下火になっています。

Rio そのまま自然消滅みたいになって、次は歌い手グループでの活動もしたんですけど、その時もホスト・バンドマン・メンズアイドルみたいな格好でした。でも30歳が近づくにつれて「このまま華の20代を終えていいのかな」という思いが高まってきて、やっぱりかわいくなりたい自分の気持ちに正直になろうって思ったんです。

164cmで49kgまで痩せても「ダイエットじゃダメなんだ」

--男性の格好をするのはやめよう、と。

Rio いや、男性の格好をやめようというより、自分が好きな格好をもっと前面に出していこうっていう感覚でした。服装だけじゃなくて、体型も、まずは男性っぽく見えるところを削っていきたいと思うようになって。

 僕はとにかく筋肉がつきやすい体質で、普通に生活してるだけでも筋肉がつきやすいし、痩せようと思って運動すると、逆に筋肉が発達してがっちりしちゃうんです。最終的にはもう食べないしかないと思って、1週間だけ水だけで生活して7kgも落としたり、無理めのダイエットをやってました。身長が164cmなんですけど、最終的には49kgまで痩せられたんです。

--164cm49kgはかなり細いですよね。

Rio 確かに頬がこけて痩せはしたんですけど、それでも体に筋肉が残っちゃって、理想には程遠い状態でした。体質的にダイエットじゃダメなんだと思って、29歳の時に筋肉を落とすためにボトックス注射を始めて、腕、肩、太もも、ふくらはぎに打ちました。

--それは大丈夫なんでしょうか……?

Rio 他に選択肢がなかったんでしょうがないですよね。ほかにも顔のヒアルロン酸注入やエクステでロングヘアにもして、やっと理想だったかわいい自分に近づけた感覚がありました。それでも恋愛対象はずっと女性だったから「自分は何なんだろう」って感覚はまだ残ってましたね。その頃は、自分は男でも女でもある「両性」ってやつなのかな、って考えるようになってました。

--「男女分裂」でも男性的な外見をしていることもありますが、それは嫌というわけではないんですか?

Rio 「Rioちゃん」も「Rioくん」も、どちらも自分がなりたい理想の自分なんです。昔はシンプルに女の子になりたいんだと思ってましたけど、だんだん「自分は男でも女でもある『両性』ってやつなのかな」と考えるようになって。当時はそれが自分なりの答えだと思って、それでカミングアウトすることにしたんです。

〈“女の子にしか見えない外見”を目指して整形&豊胸、しかし恋愛対象は女性で「結婚して子どももほしい」…33歳男性が出した「自分が男なのか女なのか」という問題への“意外な答え”〉へ続く

(雪代 すみれ)