【闘病】『子宮体がん』ステージ3でリンパ節転移…“死が近い”と目の前が真っ暗になった
2023年、40代のA.Kさんは、子宮体がん(子宮の内側にある子宮内膜から発生するがん)と診断されました。2022年1月ごろから不正出血がありましたが、「年齢的なもの」「子宮筋腫(子宮の筋肉にできる良性の腫瘍)があるから」と考え、受診を先延ばしにしていたそうです。検査で判明したがんは、リンパ節への転移を伴うステージIIIC2でした。
手術と抗がん剤治療を乗り越え、経過観察を続けながらパートにも復帰したA.Kさんに、発覚から診断、治療、現在に至るまでの経緯を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2026年6月取材。
体験者プロフィール:
A.Kさん(仮称)
1975年生まれ、愛知県在住。2022年1月ごろから不正出血が続き、2023年2月に子宮体がんと診断される。同年4月に手術を受け、5月から6クールの抗がん剤治療を開始。8月に治療を完了し、現在はパートタイムで働きながら4カ月ごとの経過観察を続けている。
「筋腫のせい」、そう思っていた
編集部
体に異変を感じたのはいつごろでしたか?
A.Kさん
2022年1月くらいから不正出血がありました。一瞬だったので、「年齢的なものかな」「子宮筋腫があるからかな」と思っていました。しかし、その後も不正出血が続き、夏くらいから頻繁になって。それ以外にも、おなかの張りや鈍い腰痛が気になるようになり、ご飯を食べてすぐにおなかが痛くなって下すことも多くありました。
編集部
どのような検査を受けて、診断に至ったのですか?
A.Kさん
さすがに不安になって、2022年12月に近くの婦人科を受診しました。そこで超音波検査を受けると、「大きい病院で検査してください」と言われました。
2023年1月に総合病院で内診、超音波検査、子宮内膜の細胞を採取する検査(子宮体がんを調べる細胞診)を受けました。結果の説明では「がん細胞は出なかったけど、絶対にがんだと思う。さらに奥の細胞をたくさん取るからかなり痛いけど頑張ってね」と言われ、もう一度検査をすることになりました。
編集部
がんと告げられたときの心境を教えてください。
A.Kさん
大きなショックは受けませんでした。2度目の検査をする段階で「がんだと思う」と言われていたので、改めて結果を聞いたときも「やっぱりがんなんだ」と妙に冷静だったことを覚えています。ただ、「子宮がなくなっちゃうんだなぁ……」と、何だか寂しくも思いました。
編集部
その後、がんの進行度についてはどう伝えられたのでしょうか?
A.Kさん
告知後、がんの進行具合を見るために造影剤を使ったCTとMRIを受け、翌月に結果を聞きに行くと「ステージIIIC2」と言われました。想像していたよりもがんが進んでいたことにショックを受けました。当時は「ステージが進んでいる=死が近い」と思っていたので、頭が真っ白になるのと目の前が真っ暗になるのがほぼ同時に起こったような感じで、がんを告知されたときよりもしんどく、つらかったです。
編集部
子宮体がんについて、どのような説明を受けましたか?
A.Kさん
私の場合は、子宮体がんの中で最も多い、類内膜がんというタイプで、悪性度はG2(3段階で示す分類の中間)でした。「子宮にできたがんが子宮の外へ広がり、大動脈周囲のリンパ節まで転移している状態がステージIIIC2に当たる」と説明を受けました。
手術と抗がん剤治療の日々
編集部
治療の方針については、どのような説明がありましたか?
A.Kさん
ステージが進んでいたため、検査をした病院では手術ができないということで、がんセンターを紹介され、3月にまた1月と同じ検査を受けました。当時の主治医からは「開腹手術で子宮と卵巣をすべて摘出し、リンパ節郭清(がんが転移している可能性のあるリンパ節をまとめて切除する手術)を行い、その後に6クールのTC療法(パクリタキセルとカルボプラチンの2種類の抗がん剤を組み合わせる治療)をしていく(※)」「およそ半年間の治療になります(※)」と言われました。※治療方針は患者さんの状態によって異なります
編集部
治療方針を聞いたときの心境はいかがでしたか?
A.Kさん
主治医を信頼してすべてを任せ、まな板の鯉になろうと思いました。知識も何もなく、分からないことだらけだったからです。
編集部
実際の治療は、どのように進みましたか?
A.Kさん
手術、そして抗がん剤治療と、主治医の説明どおりに進みました。手術は2023年4月。8時間ほどで無事に終わりました。主治医は「思っていた以上にリンパ節にがんが広がっていて、一つひとつ触って手術したよ」「目に見えるがんはすべて取ったよ」「目に見えないがんをたたくために抗がん剤をするよ」と話してくれました。5月から抗がん剤治療が始まりましたが、回数を重ねるごとに骨髄抑制(抗がん剤の影響で骨髄の働きが弱まり、血液の細胞が減ること)で赤血球の数が治療できるギリギリまで下がってしまい、5回目が終わった2週間後には輸血を受けました。そのおかげで、6クールをスキップすることなく完走できました(※)。※治療期間や副作用の表れ方には個人差があります
点滴を受けているときの1枚
編集部
治療中、印象に残っているエピソードはありますか?
A.Kさん
ステージの告知後、よく眠れないまま翌朝になり、キッチンで泣いてしまったときのことです。「死ぬかも」という恐怖、治療の不安、いろいろな感情があふれ出してしまって……。その声で主人が起きてきて、落ち着くまで背中を優しくさすってくれました。ほかにも主人には、抗がん剤治療の期間中に迎えた私の誕生日に、温泉旅行へ連れていってもらいました。今でも病院に行く日はシフトを合わせて毎回付き添ってくれて、本当に感謝しています。そういえば、入院前の説明では「妻は食べることが好きですが、入院前にいろいろなものを食べさせていいですか?」なんて質問してくれて、緊張がほどけて笑ってしまいました。
編集部
ほかにも、思わず笑ってしまうような出来事はありましたか?
A.Kさん
はい。パートも休職することになったので、「せっかくだから今しかできないことをしよう!」と金髪にし、その後も脱毛するまで何回も髪色を変えて楽しんでいました。看護師に「カルテに『毎回髪色変えます。先週は青でした』と書いてありますよ(笑)」と教えてもらったこともあります。また、初回の抗がん剤治療でアレルギー反応が出てしまい、看護師たちが一斉に駆け付けてくれましたが、私は抗がん剤の影響で眠すぎて、それどころではありませんでした。「アレルギーはいいから、とりあえず寝かせてくれ」と思っていたことも、今となっては笑ってしまいます。
編集部
闘病を支えてくれたのは、どなたでしたか?
A.Kさん
主人や両親、義家族、友達、仕事仲間……たくさんの人たちが心配して応援し、支えてくれました。その支えは今も続いています。本当にありがたく、つらい治療を乗り越える力になりました。また、母も同時期にがんになり、がんサバイバー(がんを経験した人)として互いに励まし合い、“あるある話”もたくさんしました。
闘病を経て伝えたいこと
編集部
病気を経験して、自身や生活はどう変わりましたか?
A.Kさん
死を身近に感じ、けんかをしている暇はないと思うようになり、夫婦仲がよくなりました。私もですが、主人も「死生観が変わった」と言っています。もともと標準より体重があり、さらに脱毛でつるつるになり、むくみもあって、自分が醜いなぁとへこむこともありました。
治療が終わったとき、「このままの姿で人生を終わらせたくない」とダイエットを開始。10kgほど痩せて、着たい服を着ることができました。長生きではなく健康寿命(健康上の問題なく日常生活を送れる期間)を延ばそうと、夫婦で運動したり食に気を付けたりしています。そして、告知日から夫婦で禁煙しています!
編集部
これまでを振り返って、後悔していることはありますか?
A.Kさん
不正出血があったのに、「筋腫だから」と勝手に判断して受診を先延ばしにしたことです。結果を知るのが怖かったんだと思います。主人には「もっと早く受診していれば……」と言わないようにお願いしました。行かなかった過去の自分が責められているように感じて、つらかったんです。
編集部
現在の体調や生活はいかがですか?
A.Kさん
今は4カ月ごとの経過観察です。子宮体がんは5年を過ぎても再発や転移があるため、経過観察は10年間続くと説明を受けています(※)。指先のしびれや曲げにくさのほか、頭痛、ホットフラッシュ(急なほてりや発汗)などの卵巣欠落症状が出ています。体力も完全には戻っていないので疲れやすいですが、無理をしないシフトでパートにも復帰しました。リンパ浮腫(リンパ節を切除した影響でリンパ液の流れが滞り、脚などがむくむ症状)を発症しないように、ストレッチやマッサージをしたり、着圧レギンスをはいたりして対策しています。※基本的には5年までの経過観察が必須で、その後は病院などにより経過観察の期間はさまざまです
編集部
医療従事者に伝えたいことはありますか?
A.Kさん
お礼が言いたいです。よい病院で手術・治療ができたと思っています。入院中や抗がん剤治療中、医師はもちろん看護師たちに助けられました。気さくにいろいろと助言してくれたり、褒めてくれたり、励ましてくれたり、本当に白衣の天使でした。ありがとうございました。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
A.Kさん
早期発見できれば、早期に治療できます。異変を感じたら、怖がらずに受診してください。それでももしがんと診断されたら、「あのとき、ああしていれば」とたらればで後悔するより、これからのことに目を向けて、無理せずに自分のペースで自分の機嫌を取りながら、治療に立ち向かってください。つらいときは休んだり、誰かに頼ったり甘えたりしてください。
私も、まだまだ経過観察の期間は終わりません。このまま再発や転移なく、主人とともに元気に楽しく毎日を過ごしていけたらと思っています。
編集後記
「たらればで後悔するより、これからのことに目を向けて」と、A.Kさんはがんと診断された人へ呼びかけます。診断後は主治医を信頼し、夫や家族、医療従事者の支えを力に治療を完遂しました。がんの経験は夫婦の絆を深め、生活習慣を見直すきっかけにもなったそうです。A.Kさんが伝えるように、ためらわずに受診することが、早期発見・早期治療につながります。
本稿には特定の医薬品、医療機器についての記述がありますが、情報提供のみを目的としたものであり、医療上の助言や販売促進などを目的とするものではありません。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。
記事監修医師:
鈴木 幸雄(岐阜大学医学部附属病院 産婦人科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

