【宇野沢 茂樹】北米で爆発的成長、海外利益が87%!高金利・インフレでも高配当&最高益に迫る「生活必需品株」の強さ
金利上昇でも揺るがぬ「生活必需品株」の底力
景気が良かろうと悪かろうと家庭から消えることのない生活必需品。株式市場においても生活必需品関連の銘柄は「究極のディフェンシブ銘柄(景気の波に業績が左右されにくい銘柄)」と位置付けられ、景気変動の波を打ち消す守備的な投資戦略には必要不可欠な存在だ。インフレと高金利の荒波を乗り切る強さを持つことから、投資環境に不透明感が漂う局面では資金の避難先となる投資対象でもある。
足元のグローバル市場を見渡すと、米国の長期金利は19年ぶりの高水準を記録し、日本市場においても30年ぶりの高水準に達するなど、金利環境から経済へ与えるプレッシャーが強まりつつあることを印象づけるニュースが相次ぐ。中東情勢の緊張再燃に起因する原油価格の高騰に加え、米国をはじめとする主要国での過度な財政拡張、人工知能(AI)需要の爆発的な拡大に伴う巨額なデータセンター投資など、資金需要の活発化も金利を押し上げている。
株式市場にとって、金利上昇は投資家のリスク許容度(値動きのある資産に投資する際に受け入れられるリスクの度合い)を低下させることは言うまでもない。足元では好調な企業業績にブレーキ-がかかれば、にわかに強力な逆風として機能するリスクにも備えておきたいところだ。
秋以降も原材料高を背景とする値上げラッシュが続くことが予想されており、実質賃金が再びマイナスに転じるリスクが意識されている。強いブランド力とマーケティング手法によって価格転嫁を進めつつ、消費者から高い支持を集め続ける生活必需品関連の銘柄への関心を高めておく価値はあるだろう。
守備範囲の広さが強み
■花王<4452>
9月18日終値3478円 配当利回り(予)2.24%
消費の二極化を収益機会に変えられる守備範囲の広さを強みとしている。2026年12月期上期(1-6月期)は前年同期比8%増収、営業利益は39%増で着地した。衣料用洗剤、スキンケアやヘアケアなどの生活必需品の主力事業では、値上げと数量増を同時に成立させている。高価格帯を求める層と節約志向の層が分かれるなか、いずれの価格帯にも主力ブランドを持つ強みが如何なく発揮されている。
2026年12月期通期の連結営業利益予想は、前期比16%増の1900億円と最高益水準に迫る。原材料高の減益要因155億円を、値上げによる増益要因290億円が上回ると見込む背景には、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した管理手法も寄与している。従来の大衆広告からSNSや会員サイトを統合したデジタル広告への注力を強めたことで、商品・地域・小売店ごとに最適な価格設定をシミュレーションできるようになり、需要を落とさない緻密な値上げを浸透させている。
株価は近年、原材料費の高騰や中国市場での苦戦を背景に伸び悩んできたが、直近では約5年ぶりの高値圏へ浮上してきた。日用品から半導体用洗浄剤などの端領域への展開が進んだことで、株式市場からの再評価が進もう。2026年12月期は37期連続となる増配が期待できるほか、営業利益は会社計画をさらに上回る可能性を秘めていよう。
哺乳瓶で国内独占、北米で爆発的成長のピジョン
■ピジョン<7956>
9月18日終値2027円 配当利回り(予)3.75%
哺乳瓶およびニップル(口唇部)で国内シェア約8割を占める育児用品のトップメーカー。哺乳瓶市場は出生数減少の影響を受けやすい一方で競合が極めて少ないニッチ市場であり、赤ちゃんの授乳メカニズムを解剖学的に解析して生み出される同社の圧倒的な製品力は、他社の追随を許さない参入障壁を構築している。
注目すべきは出生数の高い北米市場で急成長を遂げたことで、中国依存を脱却しつつある点だ。2026年12月期上期(1-6月)の北米における哺乳瓶売上高(現地通貨ベース)は、2004年に買収した「ランシノ」ブランドの高い知名度と、SNSやEC(電子商取引)の口コミ効果が相乗効果を生み、ランシノが前年同期比70%増、ピジョンブランドが130%増と爆発的にシェアを拡大させた。これまで懸念されていた中国市場への依存度を下げ、収益構造の安定感はさらに強化された。
マーケティング費用や固定費の効率化も同時に進んでいる。中東紛争に伴う原材料高の影響は通期で最大10数億円程度と見込まれるが、価格転嫁と固定費の効率化により管理可能な範囲内に収まる想定だ。世界的な景気後退が意識される局面であっても、育児関連支出の優先度が下がるリスクは極めて低いとみられ、健全な財務体質と合わせて高配当利回りを支える安全網を提供している。
■ユニ・チャーム<8113>
9月18日終値960.2円 配当利回り(予)2.29%
足元の業績環境にはやや注視が必要だ。同社は2026年12月期の通期コア営業利益(売上総利益から販管費を控除した本業の儲け)予想を前期比4%増の1130億円へと230億円下方修正した。原材料コストが想定より250億円以上膨らむことを主因としている。処理用としての側面が強い紙おむつや生理用品は、インフレ下で消費者の低価格志向が強まりやすく、原材料高を即座に価格へ転嫁しにくい難しさがある。
もっとも、注目すべきは各地域の上期コア営業利益率が前年同期比で改善した点にある。基礎的な収益力が落ちたわけではないと考えて良いだろう。国内のみならず、中国、インドネシア、タイ、ベトナム、インドなど成長著しいアジア市場や中東において高い市場シェアと営業網を構築している点が強みとなり、2027年12月期以降のV字回復を見据えた投資タイミングに狙いを定める冷静な視点が求められる。
高成長・高付加価値分野である「ペットケア事業」および「ウェルネスケア事業」への転換も急ぐ。特に北米での猫用おやつ市場開拓が奏功しているほか、2026年5月にはブラジルのペット企業を買収、7月にはインドのペット市場へ参入した。2030年12月期までにペットケア事業の売上構成比を20%まで引き上げる目標を掲げており、第2の成長エンジンが育つ変革期を迎えている。
和食の味を世界に、キッコーマンの驚異の利益率
■キッコーマン<2801>
9月18日終値1655円 配当利回り(予)1.51%
世界無形文化遺産に登録される「和食」を縁の下で支える醤油のトップブランドであり、連結事業利益の87%(2026年3月期末時点、北米が67%)を海外で稼ぎ出すグローバル・ニッチ・トップ企業でもある。2027年3月期第1四半期(4-6月期)の事業利益は前年同期比29%増(252億円)で着地した。インフレ下でも適切な価格転嫁を進めたことで、為替差益を除いても18%増の大幅な伸びを示した。
連結営業キャッシュ・フロー(事業活動で得た現金)は、いよいよ1000億円超えが射程圏に入ってきた。2020年3月期比では実に2倍以上となるキャッシュ創出力だ。秋以降の北米新工場稼働による固定費増やコスト高に備えて会社計画(事業利益823億円)は慎重に据え置かれているが、強い価格決定力を持つ事業基盤からは上振れの確度は高いとみる。
2026年3月末の手元資金は1117億円と総資産の7分の1を占め、自己資本比率(総資産に対する自己資本の割合)は75%に達した。豊富なキャッシュ創出力ゆえに低下傾向にあるROE(自己資本利益率)の改善は急務となっている。会社側は2028年3月期までにROE12%以上、30年以降に15%を目指しており、大型の海外M&A(合併・買収)や自社株買いなど、成長投資や株主還元強化に関する施策が打ち出される期待が高まっている。
■ライオン<4912>
9月18日終値1725.5円 配当利回り(予)1.97%
最大の強みは国内シェア1位を誇るオーラルケア分野における技術力にある。国内では2026年12月期上期(1-6月期)に、税込1000円以上の高価格ハミガキの販売金額が前年同期比31%増となった。歯周病予防や虫歯予防における有効成分の開発力と、プラーク(歯垢)除去率を高める器具構造設計が軸となり、高価格帯・高機能商品の販売比率を急速に高めている。
従来の低価格競争から脱却し、約2000円帯の最高価格帯製品「デントヘルス」や「システマ」のプレミアムラインを投入するなど、高価格帯市場のシェアを伸ばす戦略が実を結んでいる。2027年からは、すべての国民が生涯にわたり歯科健診を受けられることを目指す「国民皆歯科検診」構想が本格始動する。消費者のオーラルケア意識を構造的に高める長期的な追い風となるだろう。
中東情勢緊迫化に伴う原材料費や物流費の上昇に対し、同社は10月1日出荷分から歯磨き粉や歯ブラシなど159品目で値上げを実施する。同社がトップシェアを持たない洗剤などの分野では競合よりも低い値上げ幅を設定しており、需要の減退リスクは最小限に抑える狙いだ。2026年12月期上期の9%増収に対して通期の増収率は2%にとどまっており、保守的な印象が強い。下期以降に高価格帯商品の比率上昇が確認できれば、利益率の改善とともに株価の再評価が進む可能性は高いだろう。
高い技術力と圧倒的なブランド力を持つ生活必需品関連の企業は、高付加価値化や適切な価格転嫁によって利益率を防衛できる強さを備えている。投資環境の不透明感がさらに強まる場面が仮に訪れたとしても、資産を守りつつ、中長期的なリターンをもたらす強力な盾となってくれるだろう。
【もっと読む→あのサイゼリヤも「価格改定」へ…"値上げが受け入れられる時代"に株価好調「外食銘柄4選」の実名】
