@AUTOCAR

写真拡大 (全5枚)

ワインディングを駆け抜けたあとに

この夏、昨年9月4日に発売されたスペシャリティスポーツカー、『ホンダ・プレリュード』と約1ヵ月を共に過ごすことになった。前回はそれに先駆けて参加した、『ホンダ・シビックe:HEV RS』試乗会の話から始めさせて頂いた。プレリュードが比較用に準備されていたからだ。

【画像】ホンダの粋を集めた、金科玉条のようなマシン!『シビック・タイプR』 全119枚

さて、実際にドライブしたシビックe:HEV RSだが、結論から書けば、試乗コースとして設定されたワインディングを駆け抜けたあとに車内で思わず拍手をしたほど、素晴らしい1台であった!


6月4日に追加で発売されたスポーツグレード、『シビックe:HEV RS』。    平井大介

プレリュードも感動的なコーナリングマシンであるが、未来のハイブリッドスポーツを作るという意図で、ディメンションがイチから練りに練られている。その結果S+シフトのよさもありつつ、そもそも素性のよさがあると思っている。これは今回の比較試乗でも改めて感じることができた。

一方のシビックはファミリーユースも意識するため、スポーツ走行に全振りすることはできない。しかしシビックe:HEV RSは、サスペンションの強化により美しい旋回性能を見せ、組み合わせたS+シフトの絶妙な制御により、これまた感動的な挙動を可能としたのだ。

前回記した、アーリーダウン制御とコーナリングホールド制御の効果も絶大。一般的にはコーナー手前でシフトダウンをしても、旋回中にシフトアップしてしまうことが多々ある。しかしシビックe:HEV RSは、ギアを維持したまま美しい姿勢でコーナーを駆け抜けていくのである。

足まわり自体は普通のシビックよりもそれなりに硬く、街中での快適性という点では気になるかもしれないが、それを打ち消すだけの圧倒的な楽しさがそこにはあった。

「これなら乗り換えてもいい」と思えるスポーツカー

そのあたりを試乗後にホンダのエンジニア氏と話していたところ、ガソリンエンジン版RSが1350kgの車両重量であるのに対し、ハイブリッド版は1470kgと120kgも重い。そのため慣性はどうしても大きくなるが、サスペンションセッティングで両車が同じような味付けになるよう仕上げたという。

また、『シビック・タイプR』ほどではないものの、軽快でリニアであることをキーワードにそれに近いスポーツ走行を目指し、同時に乗り心地も担保した。


軽快でリニアであることをキーワードに、タイプRに近いスポーツ走行を目指した。    本田技研工業

開発チームの中には、本音ではガソリンエンジンのほうがいいと思っているメンバーもいるが、そういう人でも「これなら乗り換えてもいい」と思える、新時代のハイブリッドスポーツカーに仕上がったと自信を見せる。

今回の取材は、ベースとなるシビックe:HEV→プレリュード→シビックe:HEV RSの順で乗ることができた。シビックe:HEVは以前1週間テストもしているのでよく理解していて、これでも十分スポーツカーと呼べそうなくらい楽しく、速いクルマだ。

しかし、その普通の見た目では伝わりにくいことに気がついたのか、RSによってスポーティさをセルフプロデュースして魅せた形だ。これをコスメティックだけにせず、中身までちゃんと仕上げてくるのはホンダらしいところだろう。

いずれにせよ、ガソリンエンジンもハイブリッドもRSは素晴らしい仕上がりだと結論付けようと現場で思ったところで、重要なことを思い出した。実は肝心のシビック・タイプRに乗ったことがないのだ。そこで後日、試乗する機会を頂くことになった。

圧倒的に動的質感が高いシビック・タイプR

シビック・タイプRについては説明不要であろう。ホンダの粋を集めた、金科玉条のようなマシンである。現行モデルは2022年9月1日に日本で発売され、価格はプレリュードと同じ617万9800円だ。

当初は2日間の予定だったが、残念ながらスケジュールの関係で数時間程度となってしまった。しかし、その凄さは街中でも十分に感じることができた。


後日、改めて取材した『ホンダ・シビック・タイプR』。    平井大介

ひと言で表すなら、『圧倒的に動的質感が高い』マシンだ。低速で走っていても、まるで獲物を狙うライオンが静かに歩いているかのようで、個人的には6.2L自然吸気V8を搭載するメルセデス・ベンツC63AMG(W204型)に乗った時の感覚を思い出した。

2L直列4気筒ターボエンジンには『VTEC』の文字が登場し、それだけで心躍る気持ちだが、加速させるとそのビート感が実に素晴らしい! まるでエンジンが生きているかのようで、生っぽさがある。

右足に少しでも力を込めれば、実力の一端はすぐに感じることができる。当然ながら速いのだがそこに怖さや危うさはなく、低く、幅広いボディは高速道路でも圧倒的な安定感を見せた。

感動的なレブマッチ機能

6速MTのシフトチェンジで回転数を合わせるレブマッチ機能は、シフトダウンだけでなくシフトアップでも行うことにかなり感動した。アップでも行うクルマに初めて出会ったからだ。

いかにもタイプRらしいアルミ製シフトノブ横にあるボタンを押し、少しだけ+Rモードも試した。するとスポーツモードよりも足まわりがかなり締め上げられ、その遥か先にニュルブルクリンク・オールドコースが見えた……とは大げさだろうか。


シビック・タイプRが、想像以上に質感のあるスポーツカーであることに驚いた。    平井大介

とにかくひとつひとつの精度が高く、想像以上に質感のある大人っぽいスポーツカーであることに驚いた。大変失礼ながら、もっとヤンチャな雰囲気だと思っていたからだ。こうして短時間ではあるが、この技術がフィードバックされているプレリュードのよさも納得できる試乗となったのである。

というわけでタイプRを返却し、入れ替えでようやくプレリュードとの日々がスタートすることになった。

*9月27日公開予定『ホンダ・プレリュードと過ごした夏(3)』へと続きます。

追伸:当コラムが何と100回目を迎えました。約2年、何となく毎週日曜日の昼に公開しておりますが、今後もしばらくそのペースで続ける予定です。日頃のご愛読、感謝申し上げます。