ところが9月に入ると鈴木のバットが急に鈍くなる。本塁打はいまだゼロで、16日のブレーブス戦も4打数無安打。月間打率は.157、打点もわずか1にとどまる。四球は選べており、出塁まで完全に止まったわけではない。それでも、8月の頃とは景色が随分変わってしまった。

◆得点圏打率はわずか.071、鈴木からPCAへ移ったファンの視線

 特に走者を置いた場面の数字を見ると、8月との落差は鮮明だ。

 9月は走者ありの場面で打率.143と低調。得点圏に限れば、打率はわずか.071だ。8月はいずれも3割3分を超えていたが、一本が必要な場面で、それがなかなか出ていない。

 ブレーブス戦後は、歴史的な夜を演じたPCAと、好投した今永への称賛が目立った。鈴木に対して批判が噴き出しているわけではない。8月には主軸の一人として注目を集めていたが、少なくともこの夜、ファンの熱気はPCAに集中していた。

◆鈴木誠也の復調が欠かせない理由

 もちろん、話題の中心から外れたからといって、鈴木の重要性まで薄れたわけではない。むしろ逆だろう。

 カブスはポストシーズン進出へ優位な位置につけている。それでも、まだ出場権は確定していない。まずは残り試合を勝ち抜き、その先の10月へ進む必要がある。ここから先は一つの長打、一度の好機が試合の流れだけでなく、シーズンそのものを左右しかねない。

 今季44本塁打まで伸ばしたPCAの後ろを打つ鈴木が、本来の打撃を取り戻せば打線の怖さはもう一段増すだろう。PCAへの警戒が日に日に強まる今だからこそ、その後ろを任される鈴木の復調が持つ意味も大きくなっている。

 カブスが残りのレギュラーシーズンを勝ち抜き、その先の10月を1日でも長く戦うには、PCAだけに頼るわけにはいかない。鈴木が8月までの打棒を取り戻せるか。そして今永が、この日のような投球を続けられるか。日本人2人の出番は、むしろここからかもしれない。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。