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東京都文京区湯島のタイ式マッサージ店で、タイ国籍の少女を男性客に引き合わせ、性的なサービスをさせたとして児童福祉法違反などの罪に問われた経営者の男性(52)に対し、東京地裁(池上弘裁判官)は9月15日、拘禁刑5年、罰金100万円(求刑:拘禁刑6年、罰金200万円)の実刑判決を言い渡した。

少女は母親から「20歳」と名乗るように言われ、他人の前では母親を「姉」と呼ぶようにも指示されていた。

男性は「20歳だと思っていた」「タイ国籍の女にだまされた」などとして無罪を主張。裁判所も、少女の母親にだまされた面があったことは認めた。

それでも、男性の刑事責任は重いと判断された。(ライター・渋井哲也)

●母親に連れられ来日、約40日間で約70人の客

判決などによると、男性は2023年9月、東京都文京区湯島でタイ式マッサージ店を開業した。

同年12月にはタイ国籍の女(39)=公判中、無罪主張=が働き始め、2024年2月以降、人材募集や採用、客付けなどを担うマネージャーをつとめていた。

少女が来日したのは2025年6月27日。当時12歳だった。

母親とともに短期滞在ビザで日本を訪れた。母親は以前、この店で働いており、来日前に「少女とともに働きたい」と連絡していたという。

少女は翌28日から店で働き始め、8月中旬までの約40日間に、約70人の客を相手にした。

だが、少女は日本に来るまで、具体的にどんな仕事をするのか知らされていなかった。

母親の借金を返すため、日本で働くよう指示されていた。以前から母親に暴力を振るわれていたため、拒むことができなかったという。

仕事に男性客への性的なサービスが含まれると知った後も、「母親の言うとおりにするしかない」と考えていた。

●「20歳」と聞かされていた経営者

男性は裁判で、少女が12歳だとは知らなかったと主張した。

母親から「20歳」と説明されていたためだ。

少女自身も、母親から20歳と名乗るように言われていた。他人の前では、母親を「母」ではなく「姉」と呼ぶよう指示されていたという。

裁判所も、男性が少女の本当の年齢を把握しておらず、母親にだまされた面があることを認めた。

少女の写真についても、「一見して児童であることが明らかな容貌ということもできない」と判断した。

男性自身も被告人質問で「背中にタトゥーが入っていましたし、酒を飲み歩いていました」と証言していた。

●パスポートで年齢確認をしていなかった

しかし、男性は少女のパスポートなどで年齢を確認していなかった。

裁判所は、十分な年齢確認をしないまま、少女に男性客を引き合わせ、有償で手淫させる約束をした行為について、児童買春の周旋にあたると認定。さらに、少女に淫行をさせたことも認定した。

男性は、ほかの従業員から「少女は14歳」と聞いた後になって、少女を解雇したという。

「少女は『お店にいる』と言い張りました。しかし、私は年齢を理由に『それはできない』と断りました」

ただ、この段階でも、パスポートで少女の年齢を確認していなかった。

●在留資格も確認していなかった

年齢だけではなかった。

少女は「短期滞在」の在留資格で来日しており、資格外活動の許可も得ていなかった。さらに、在留期間が過ぎた後は不法残留の状態になっていた。

それにもかかわらず、男性らは少女の在留資格を確認しないまま従業員として働かせ、報酬を受け取らせていた。

「タイ国籍の女にだまされた」などとして、男性はこれらの起訴内容についても無罪を主張した。

しかし、裁判所は、男性と女性とのやりとりなどから、2人で従業員の採用を決めていたと判断。男性が少女の在留資格を直接確認していなかったことなども踏まえ、2人の「共謀」を認定した。

この店では、少女に限らず、従業員の在留資格などを十分に確認していなかった。

裁判所は、店舗そのものが、在留資格などを確認せずに従業員を働かせる「無法状態」にあったと位置付けた。

●「真面目にマッサージ店をしたかった」

風営法違反についても、男性はタイ国籍の女性に責任があると主張した。

被告人質問では、女性から「性的サービスがないとダメ」と言われたと説明。

「真面目にマッサージ店をしたかったんですが、最終的に女が押し通しました」

しかし、店が入っていた湯島のマンションは、風営法上、店舗型性風俗特殊営業が禁止されている区域にあった。

さらに、マンションの契約書にも風俗営業が禁止行為として明記され、違反すれば契約を解除される内容になっていた。

こうした事情から、裁判所は、男性が風俗営業を禁じられた物件であることを認識していたと判断した。

●「練習」と称して少女に性的行為

判決で重くみられたのが、男性自身が少女に性的行為をさせていたことだった。

少女の陳述書には「男は私を裸にした」と記されている。

男性は被告人質問で、客からクレームがあったため、性的サービスの「テスト」をしたと説明した。

「客からのクレームがあって(口腔性交の)テストをしました。1回だけです」

裁判所は、こうした行為によって少女が受けた精神的苦痛は「想像を絶する」と指摘し、男性の刑事責任は重いと判断した。

一方で、少女の母親については「最も重い非難に値する」とした。

少女を20歳だと説明するなど、男性が母親らにだまされていた面も考慮された。

●店は赤字、両親の遺産を運転資金に

男性が事件によって大きな経済的利益を得ていたわけではないことも、量刑では考慮された。

罰金は、検察側の求刑200万円に対し、100万円とされた。

店の運転資金をどのように工面したのか問われ、男性はこう説明していた。

「(両親の遺産である)土地と家を売ってお金を作りました」

店の経営は赤字で、両親から相続した土地や家を売り、運転資金に充てていたという。

さらにマネージャーだったタイ国籍の女性について、「喧嘩別れの後、女は錦糸町に自分の店も出しました。売り上げをごまかされていたと思います」とも述べていた。

ただ、錦糸町の店の資金がどこから出たのかなど、詳しい経緯は今回の裁判では明らかになっていない。

判決の日、男性は黒いTシャツにグレーのスウェットパンツ姿で法廷に現れた。靴下は履いておらず、うなだれる場面もあった。

これまでの公判では、専業主婦だった母親を亡くした後、建設関連会社で働いていた父親も倒れ、兄も早くに亡くしたことや、うつ病と診断されていることも明らかにしていた。

そうした事情や、少女の母親らにだまされた面があったことを踏まえても、裁判所は実刑を選択した。

●当初は「人身取引」も視野

この事件は当初、性的搾取を目的とした人身取引事案ではないかとみられていた。

しかし、暴力や強制力による脅迫などが確認されなかったことから、人身取引事案としての起訴は見送られた。

男性は児童買春・児童ポルノ処罰法違反、児童福祉法違反、風営法違反、入管法違反の罪で起訴された。

一方、児童福祉法違反と入管法違反で起訴されたタイ国籍の女性は、4月15日の初公判で「事実はその通りではない」と起訴内容を否認。

「少女の年齢は知らない。直接会ったことはない。(私は)人身売買のブローカーではない」と述べ、無罪を主張している。次回公判の日程は決まっていない。

少女の母親はタイで人身取引などの罪に問われ、2026年6月、禁錮7年6カ月の実刑判決を受けた。