関連画像

写真拡大

今年6月に横浜市で開かれたK-POP人気グループ「i-dle(アイドゥル)」のライブで、追加料金を支払う「VIPアップグレード席」をめぐり、参加したファンから落胆や憤りの声が上がっている。

事前の案内では「アリーナ席(ステージ周辺エリア)確約」とされていたが、実際には会場の公式座席案内図に記載されていない後方の列まで「VIP席」として割り当てられていたという。

「ステージ周辺エリア確約」とうたいながら、こうした座席をVIP席として販売することに法的な問題はないのか。

●追加8100円で「VIPアップグレード」

ライブは「i-dle」のワールドツアー日本公演で、6月20、21日にKアリーナ横浜で開催された。

ファンクラブのサイトなどによると、公演では、通常のチケット(全席指定:1万5400円)の購入者を対象に、1枚につき8100円を支払う「VIPアップグレードチケット」の抽選受付がおこなわれた。

事前に案内されたVIPアップグレードの主な特典には、「アリーナ席(ステージ周辺エリア)確約」と記載されていた。

●通常の座席案内図にない「41列目」までVIP席に

ところが、公演当日の座席配置では、Kアリーナ横浜の「LEVEL1 アリーナ席」の広い範囲がVIP席に指定されていた。

Kアリーナ横浜の公式サイトで公表されている通常の座席案内図では、アリーナ席の最後列は「34列」となっている。一方、今回の公演では、その後方に35列目から41列目までの座席が設けられていた。

こうした後方の座席も「アリーナ席(ステージ周辺エリア)確約」としてファンに割り振られたとみられる。

●参加者「ドキドキ、ワクワクな日々が裏切られた」

弁護士ドットコムニュースには、実際に追加料金を支払い、VIPアップグレードチケットを入手したという参加者から情報提供が寄せられた。

この参加者に発券されたのは、Kアリーナ横浜の座席案内図には見当たらない「37列目」の席のチケットだったという。

「愕然」したといい、「確約」や「VIP」という言葉の意味を調べ、何度も座席表を見直したという。そしてライブ当日、実際に席に着くと、「遠い…」「これはVIPではない…」と感じたという。

今回の座席設定を「大問題だ」と感じているとして、次のようにうったえる。

「ただでさえ、アップグレードに当選することは奇跡に近いと感じているわけです。そして、チケット発券までのドキドキ・ワクワクな日々が見事に裏切られました。運営者には今後、ファンを裏切るようなことをしないでほしい」

SNS上でも、後方のVIP席をめぐり、「私が40列、もう会場案内図最大列の34列より後、絶望」「目の前にステージがないどころか、センターステージまでは遠く、しかも見えるのはほとんど横顔か後ろ姿のみ」などの書き込みがあった。

●主催会社「不便をおかけし、心よりお詫び」

今回のVIP席の設定などについて、弁護士ドットコムニュースは、「横浜公演に関するお問い合わせ」先として記載されていた「キョードー横浜」に取材を申し込んだ。

その後、キョードー横浜を通じて、ライブを主催した「CUBE ENTERTAINMENT JAPAN」から次のような回答があった。

──今回のような座席設定に至った経緯・理由を教えてください。

VIPアップグレードチケットは、サウンドチェック観覧への参加、限定オリジナルグッズの贈呈、会場優先入場レーンの利用に加え、VIP専用エリアにてご観覧いただける特典が含まれたチケットです。

なお、当該エリア内での詳細な座席指定につきましては、システムによる無作為抽選にて公平に行われました。

──今回の座席設定・範囲について、購入者への事前の説明は十分だったとお考えでしょうか。

今回の公演は、アーティストのパフォーマンスを最大限に引き出し、ご来場いただいた皆様に最高のステージ体験をお届けするため、企画段階から最終段階に至るまで、数多くの演出に関する検討を重ねてまいりました。

その過程において、大型LEDスクリーンの位置やステージ動線を最適化するためのスケールアップを行った結果、ステージ演出構造物と一部座席(サイドおよび後方席)との位置関係により、一部のお座席では、視界が制限されたり、ステージとの距離を感じられる状況が生じました。

すべてのお客様に完全な視界をご提供できなかった点につきましては、公演準備の過程における不備であったものと真摯に受け止めております。

──返金や補償などの対応を検討されていますか。

お客様よりご要望いただいたアップグレード費用の返金につきましては、本公演の予約ページ内の注意事項にて、「お申込み後・ご購入後の変更・キャンセル・返金等はお受けできませんので、あらかじめご了承ください。」ならびに「当選発表後のVIPアップグレードチケットのキャンセル・払い戻しはいかなる理由があっても一切お受けできません。」旨を事前にご案内しております。

当該案内事項は、すべてのお客様にご購入前にご同意いただいている共通規約に該当し、事前にご案内した規定および社内方針上、一部返金を行うことは難しい状況でございます。

──今回の座席設定について、景品表示法上の「優良誤認表示」に該当する可能性をどのようにお考えですか。

お寄せいただいた貴重なご意見は、本社および制作委員会へ共有のうえ、今後開催される公演においては、ステージデザインと座席配置のバランスをより慎重に検討し、改善を図ってまいります。

アーティストを愛してくださるファンの皆様のご期待にお応えできるよう、よりご満足いただける公演づくりに努めてまいります。

改めまして、この度はご不便をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。

●「ステージ周辺」なのに37列目…法的な問題は?

「ステージ周辺エリア確約」と案内しながら、通常の座席案内図にはない後方の席までVIP席として割り当てた場合、景品表示法の「優良誤認表示」にあたる可能性はないのか。

また、事前の案内から想定したものとは異なる席を割り当てられた参加者は、追加料金の返金などを求めることができるのか。消費者問題にくわしい金田万作弁護士に聞いた。

●消費者の印象と実際の席が「著しく違う」→優良誤認表示の可能性

──「ステージ周辺エリア確約」とうたいながら、参加者が「ステージから遠い」と感じるような後方の席や、通常の座席案内図にはない席まで対象とした場合、法的に問題はありますか。

「ステージ周辺エリア確約」は、座席の位置という購入判断に関わる重要な表示です。

増設席であることだけで違法とはいえませんが、販売時の案内全体から一般消費者が受ける印象と実際の座席位置が著しく食い違う場合、景品表示法5条1号の優良誤認表示に当たる可能性があります。

ただし、今回のケースでも同様に違反となるかは、事前の座席図や注意事項、実際のステージとの位置関係などの確認が必要です。

●弁護士「返金を請求できる余地あり」

──チケット購入時に示された内容と実際の座席が大きく異なる場合、参加者が返金や損害賠償を請求することは可能でしょうか。

消費者庁は2023年2月、東京ドームでのL'Arc~en~Ciel公演について、座席図で示した席種と実際の座席が異なるとして、主催者ら3社に措置命令を出し、後に景品表示法に基づく返金措置の一環として一部返金がされました。

また、表示された席種・エリアは契約の内容になりますので、約束されたエリアの席が提供されなかったと認められれば、債務不履行として損害賠償請求や、消費者契約法4条1項1号の不実告知による取消しによる返金を主張できる余地があります。

ただし、追加料金には座席以外の特典も含まれるため、全額が返金されるとは限りません。

販売時の案内やチケット、当日の座席位置がわかる資料を保存し、契約相手の事業者に説明と返金を求めることが考えられます。

【編集部注】ライブ主催者から回答があったので、追記しました(更新:2026年9月18日22時00分)

【取材協力弁護士】
金田 万作(かなだ・まんさく)弁護士
第二東京弁護士会消費者問題対策委員会(電子情報部会・金融部会)に所属。投資被害やクレジット・リース関連など複数の消費者問題に関する弁護団・研究会に参加。ベネッセの情報漏えい事件では自ら原告となり訴訟提起するとともに弁護団も結成し集団訴訟を行った。
事務所名:笠井・金田法律事務所
事務所URL:http://kasai-law.com