州議会選で強硬右派「ドイツのための選択肢(AfD)」への投票を呼びかける垂れ幕(8月25日、ドイツ東部ザクセン・アンハルト州ハルデンスレーベンで)

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 ドイツ東部ザクセン・アンハルト州議会選挙(6日投開票)では、強硬右派「ドイツのための選択肢(AfD)」が歴史的勝利を収め、初となる州政権樹立が現実味を帯びる。

 州内を歩くと、旧東独市民として抱える既存政党への不満や旧西独への劣等感が聞こえてくる。AfDは「東独の誇り」に訴え、躍進につなげた。(独東部ザクセン・アンハルト州 工藤彩香)

 「1990年の東西ドイツ統一で良い未来を期待したが、裏切られた。旧東独市民の声を聞かない旧西独エリートのメルツ氏は、我々の首相ではない。人々は新たな変化を求めている」

 州東部ハレで10日に出会った女性(56)は、与党・キリスト教民主同盟(CDU)支持者として選挙結果に肩を落とす一方で、AfDに票を投じた市民にも理解を示した。

 AfDの浸透ぶりは、選挙まで2か月を切った7月中旬に同州を訪れた際も強く感じ取れた。

 バウムクーヘン発祥の地として知られる北部ザルツべーデル。塩の貿易地として栄えたかつての商業都市は、店が軒並み閉まり、閑散としていた。飲食店主の女性(68)は統一後の街の衰退を嘆き、こう漏らした。「全て資本主義のせいだ。AfDはナチスではない。会えば分かる。彼らは地域の希望だ」

 独連邦統計局の2024年のデータによると、州の人口は約210万人。統一前と比べ、約4分の1減少した。65歳以上の割合は28%、平均年齢は48・3歳で、国内で最も高齢化が進む。統一後、主要産業だった褐炭採掘や化学工業が廃れて失業率が急増し、多くが職や教育を求めて旧西独に移住したためだ。女性や若者の流出は、今も続く。

 統一から35年がたった現在も経済格差は残る。旧東独の24年の平均月給(税引き前)は3973ユーロ(約71万円)で、旧西独の約8割にとどまっている。

 現状への不満から、東独時代を懐かしむ声も出ている。年金と生活保護に頼る州東部ビッテンベルク在住の女性(75)は、「物価が上がり、パンも自由に買えない。昔は貧しくても皆が平等だった」と嘆き、こう語った。「ベルリンの壁がもっと高ければ良かったのに」

 AfDを勝利に導き、今では州首相候補のウルリヒ・ジークムント氏(35)は地元出身で、こうした心情に寄り添うような選挙戦を展開した。旧東独製の小型バイクにまたがってくまなく回り、「幸せで安全な、古き良き東独の誇りを取り戻す」と訴え、保守層の心をつかんだ。

 「主要政党は誰も来ないが、AfDは小さなイベントにも必ず顔を出し、気にかけてくれる」。旧東独の田舎町ではよく聞く話だ。政治的に取り残されたと感じる有権者にとって、AfDは今や最も身近で頼れる存在になりつつある。

 ベルリン・フンボルト大のシュテフェン・マウ教授は「急速な産業衰退、権威主義的な土壌、弱体化した既存政党。こうした要素がそろう地域では、不満や怒りの受け皿となる政党が伸長しやすい。AfDは旧東独を美化することで有権者の劣等感を誇りに変え、希望の担い手となることに成功した」と分析している。